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墓守は眠らない  作者: 鳴神とむ
第一章 三日月の章
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「こんばんは、霧島くん」



 爽やかに挨拶をしてきたのは、同じクラスの杜若かきつばた 鈴音すずねだった。彼女は長い黒髪をひとつに結んで、巫女装束を身に纏っていた。



「墓荒らしのこと、私も気になっていたの。先日、友達の家のお墓も荒らされたらしいの。だから犯人を捕まえたいと思って」



 虎太郎はなぜ連れてきたんだと言わんばかりに、檜山を睨みつける。



「別に檜山くんに頼んだわけじゃないわ。この地を平気で穢す者が許せないだけよ」


「わかった。でも何かあっても、面倒は見ないからな」


「ふふ、私を誰だと思ってるの?」


「……」



 自信満々に言い放つ鈴音を見て、かわいくねーなと虎太郎は思った。

 


 鈴音は神社の娘だ。毎日修行をしているらしく、週末に行われる夏祭りでは舞を踊るそうだ。その舞の姿がまさに神がかっていて綺麗だと有名で、そのおかげで鈴音は学校ではマドンナ的存在だった。

 


 一方自分は寺の息子だが修行はやったりやらなかったりで、将来跡を継ぐ気なんて全くないし、むしろ普通の人生を歩みたいと思っている。だから尚更この女には近づきたくなかったのに、まさかこんなところに食いついてくるとは……。



「杜若さん、頼もしい~! 何かあったら杜若さんに守ってもらお~!」


「テメーはケツの穴でも掘られろ」



 虎太郎は檜山を無視して、敷地内の墓地へと足を踏み入れた。



「おい、懐中電灯……」


「私はあっちから見て行くね」



 鈴音は薄暗い墓地の中を臆することなく歩み進んでいく。その姿を見て、虎太郎は渡そうと思っていた懐中電灯をポケットにしまった。



 夜空を見上げると、丸くて大きな月がハッキリとその存在を示していた。



「月明かりだけで十分か」



 そう呟いて目線を下げると、すぐ目の前に着物を羽織ったおかっぱ頭の女の子が立っていた。



「!」


「おぬし、わらわの万華鏡は知らぬか?」


「万華鏡?」



 聞き返してから、しまったと思った。

 なんの気配もなく現れた少女は、もしかしたらこの世の者ではないかもしれない。



「万華鏡じゃ。こう、筒のようなもので、覗くとキラキラしてるのじゃ」



 それはわかる。

 うっかり聞き返してしまったがために、少女を無視することができなくなってしまった。



「知っておるのか? 知らぬのか?」



 おかっぱ頭の少女は虎太郎をジッと見つめている。



「霧島くん、その子誰?」



 鈴音の気配に気づいて振り返ると、少女は万華鏡のことを鈴音にも尋ねた。



「わらわの万華鏡を一緒に探して欲しい」


「万華鏡? いいわよ。お姉ちゃんと一緒に探そうね」



 鈴音はあっさりと承諾する。

 そして少女と手を繋ぎ歩き始めた。



「おい、マジかよ……」



 場所が場所なだけに、幽霊に遭遇することはよくある。たまに話しかけられたりするが、そこで反応してはいけないのだ。幼い頃の自分はそれで何度か危ない目に合っているのだから。





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