帷垂宵は図書委員 (4)夜の学校に潜入です
遥と宵のちょっと奇妙なお話。
司書先生の持つ洋古書「グリモワール」を盗み見るため夜の学校に潜入する遥と宵だったが?
(4)夜の学校に宵ちゃんと潜入です
夜八時過ぎ学校の裏門は真っ暗だ。
辺鄙な所にある学校だから余計に真っ暗。
夕暮れ即闇なのです。
「怖いよ宵ちゃん、っていうかどうやって入るの? 校門閉まってるみたいだけど?」
学校側の街灯も消えているし、残った生徒は全員下校して教室も真っ暗だ。
月の光だけが頼りのなか宵ちゃんはスタスタと歩く。
「もう、待ってよ宵ちゃああん」
宵ちゃんの制服を摘まんで半泣きになる。
「はるか、運動神経良いんだから飛び越えて」
「はへ?」
「だから、校門飛び越えて?」
「宵ちゃんはどうすんの?」
「はるかが中から開けてくれるの待つ」
余所行きの服で汚い校門をよじ登るのはさすがにちょっとと思っていたら宵ちゃんが前に手を組んでカモンしている。
「ここに足をかけて一気に行こうか、はるか」
「なんかスパイみたい」
少し助走をつけて足をかけると宵ちゃんがグイっと持ち上げてくれる。
息を合わせて飛んでみると、意外なほど簡単に校門を飛び越える事が出来た。
「息ぴったり! 宵ちゃんありがと!」
「ホントにできるとは思わなかったわ」
「何それひどい!」
「でもやってみたかったでしょ?」
「実は。えへへ、あ、じゃあ開けるね」
と言ってみたものの校門の格子の所に南京錠がかかってる。
「宵ちゃん、鍵かかってるよ?」
「そのまま下に引っ張ってみて?」
「あ、開いた」
あっけにとられて南京錠を眺める。
「ちょっと細工しておいたの、で元に戻しておいて?」
「うん、えっと仕掛け?」
「企業秘密」
「企業じゃないじゃん! JKじゃん? ねえどうやったの?」
「はるか、今度ね」
「あーんズルい!」
そう言って宵ちゃんは校舎に向かった。
下駄箱のある玄関は全て施錠されている筈だ。
どこから入るんだろう?
そう思ってついていくと、通用口が開いている。
「あれ? 簡単だね」
「用務員さん、ここから外に出てグラウンドや体育倉庫見回るのよ」
宵ちゃんの指差す方向を見ると、後者のガラス越しに用務員さんが見える。
「わあ、バレちゃうよ!」
「大丈夫、こっちの方が暗いから見えない」
「そうゆーもの?」
「そういうものよ」
「でも何で知ってるの?」
「図書委員だからね」
「それいつもゆうけど、意味わからない」
「まあ、はるかは図書委員になりたてだからわからないか」
「わかるようになるの?」
「人に依る」
「ええーーっ? じゃあ私はわかんないと思う、わからない方に50カノッサ」
「カノッサは解るけど、はるかにとってなんの単位なの?」
「図書委員ならわかる?」
「はるかが良く食べてるオレオ50枚とか?」
「なんでわかったの?」
「図書委員だから」
宵ちゃんは悪戯っぽく私に微笑んだ。
いつも宵ちゃんはズルい。
宵のたまに言う「図書委員だから」が謎なはるか。
次回も遥と宵のイチャコラかっごう探検にお付き合いください。
文体も内容の濃さも違いますがこの作品が面白かったら作者のライフワーク「嵐を呼ぶお姫」の方も覗いていってくださいな。