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帷垂宵(とばりたれ よい)は図書委員  作者: Gillbert@千早パパ
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(2)グリモワール

絵を戴いた嬉しさに、ついカッとなって書きました。

ベイクドチキン食べたい先生が読んで感想をくれた上にタージマハルじゃなかった但馬遥ちゃんも書いてくれるとのこと。嬉しすぎの第二話です。

(2)グリモワールの鍵


 宵ちゃんは夢で見た本と同じというこの本。

 何語で書かれているのか見当もつかない。

「宵ちゃん、グリモワールってなに? なんかアニメとかラノベに出て来そうなヤツ? ねえ宵ちゃん?」

 宵ちゃんの袖を引っ張ると我に返ったかのような表情でこっちを見る。

「宵ちゃん?」

「ああ、遥ごめんなさい、ちょっとあっちの世界にいってた」

 宵ちゃんは時々、頭の中が回転している。

 図書委員の上級生を論破した時も一瞬フリーズしたあと、なにか整った! みたいになって論破の仕方がえぐかった。

 先に先輩方の事を褒め、正論を吐き、同意を求めたあと、退路を断ってから一気に論破した。

 もうなんかブーメランの乱れ打ちだった。

 先輩が当然でしょうと先に言わされた言葉が先輩たちに突き刺さる。

 会話の主導権を取り上げ薙ぎ払い、助け舟を出して最後は涙目でお礼を言われていた。

 小学校の時、私を助けてくれた時も…。


「宵ちゃん…」

「あの、遥? なんで後ろから抱きついてるの?」

「あっと、あはは何となく思い出しちゃって? えへへ」

「パーソナルスペース!」

「はいはい」

「もう、親友と言えど近すぎるんだから遥は」

「えへへ、ごめんね?」

「そういえばこの本、鍵がかかってるわね」

 覗き込むと、他の人が本を開けない様に留め金に小さな鍵穴がある。

「なにか見られると超ヤバイないようだったりするのかな? 開けてみる?」

「さらっと犯罪チックなのよね遥は」

 振り向いた顔は宵ちゃんの方が悪い顔をしている。

「でもそういう遥の行動力は嫌いじゃないわ?」

「だってグリモワールなんて初めて見たし、内容気にならない?」

「なるわね」

「魔導書とかだったら願い叶える悪魔とか出てきそう」

「それは危なそうね」

「でさ、でさ、悪魔が大真面目に大それたこと要求してくるのかな? って「その代わり、対価に見合う魂を要求する」とか身構えてるところに『宵ちゃんのおでこ撫でたい』とか要求して、お口ポカーンさせたいでしょ?」

「遥は時々面白いわね」

「でしょでしょでしょーっ!? じゃあ開けようか」

「でも鍵がないわ?」

「ヘアピンで開けるのが常套でしょ! 私、やってみたかったのヘアピンで開ける奴!」

「ノープランだったのね、遥」

 と言いながら宵は机の引き出しをあけた。

「キチンとしているのに自分の周りは雑な女司書…ここかな?」

 と名刺が入ったケースの一番上の名刺を摘まみ上げると、名刺は上の一枚だけで、中に小さな鍵が入っていた。

「何それ、怖い! エスパーなの?」

「単純に司書先生のプロファイリングから雑に隠してあるんじゃないかって予想よ」

 そう言うとちょっと嬉しそうに、そして犯罪者チックに笑った。

「じゃあ、宵ちゃん開けてみよう!」

「遥のヘアピンピッキングも見ていたかったけど、そうね今日はやめましょう?」

 と、宵ちゃんは鍵を元の場所に戻した。

 名刺ケースを元の位置に置いてグリモワールも元の位置に戻す。

「なんでやめちゃうの? 宵ちゃん、寸止めは無理! もうほんと無理! 気になって眠れないーっ! ねえチョットだけ、開くだけでいいからね?」

 宵ちゃんはふうとため息をつきながら私に言った。

「もうすぐ職員会議が終わる時間だからすぐにここを出ましょう、そして司書の先生が戻ってきたら何食わぬ顔で台帳ってどこにあるんですか? と聞きなさい、いいわね?」

「えっと、私、台帳の場所知ってるよ?」

「いつも一緒にいたからわかるわ、あなたは過去一度も先生に台帳の場所を聞いていない、そして台帳を使った後、先輩たちが貴方の手柄を取って作業の報告にいっていた」

「よく見てるわね」

「よって、先生は遥が台帳の場所を知らなくても違和感は覚えない、そして準備室に私たちは入らなかったと結論付ける」

「えっと?」

「わきが甘いままでいてくれればグリモワールも鍵も元の所のまま、少なくとも鍵はそのままの筈」

「宵ちゃん、なっかすごく悪い顔してるよ、優等生がしちゃいけない顔だよ!」

「ふふふ、駄目?」

 と顔を近づける。

「ダメ…じゃない、けどダメになりそう」

 体温上がる。 近い近い近い!

「じゃあ決まりね、今夜待ち合わせしましょう、学校の裏門による8時集合ね」


 そう言って私の背中を押して準備室から出る。

 気になる私は少し抵抗しつつも押し出されてしまった。 

「え、忍び込むの? なんで8時?」

「質問はひとつづつ」

「忍び込むのはいいとして、なんで8時?」

 宵ちゃんは人差し指を唇に当てると周りを見回してから声を潜めて言った。


「用務員のタムラさんが部活が終わって残っている生徒を見回るのが七時三十分からなのよ、で、あの人ルーチンで仕事してるから図書室を見回るのが位置的に中盤位よね? 一度見たところはもう回らないでしょ? そしてら図書室に忍び込んでゆっくり徹夜で見られるじゃない?」 

「用務員さんの行動まで把握してるの? 怖い、宵ちゃんが怖すぎる」

「ふふ、図書委員ですもの」

 と宵ちゃんは眼鏡を中指で持ち上げるとまた悪い顔になる。

「私、宵ちゃんのその顔、結構嫌いじゃない」

「同意と取っていいのかしら、じゃあ決まりね」

 私は小学校の頃の男子失禁肝試し事件を思い出した。

さて次回の「帷垂宵は図書委員」は夜の校舎へ忍び込みます。

お楽しみに!

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