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鳩田のキモ告白

 翌朝登校すると鳩田が殺気立った目で俺を睨んでいた。

 しかし手を出してくることはない。

 一応ここは進学校で、暴力などは厳しく対処される。

 やるなら影で人目のつかないところだろう。

 そんなヘタレな根性の奴にビビるわけもない。


 俺はこれまで学校の女子にはかなり告白してきたが、意外とその事実は広まっていない。

 なぜなら告白された女子は人生の汚点として人に話したがらないからだ。


 相変わらず誰とも日常会話をせず、孤高のぼっちとして一日が過ぎる。

 俺の頭の中は次のターゲットのことで一杯だった。

 記念すべき五十人目。

 お手軽なところでサクッと終わらせてはつまらない。

 少し時間がかかっても厳選したいところだ。


 告白する場所もいつも教室ではつまらないので新たなスポットを探さなくてはいけない。

 そんなことを考えながら放課後の校内をぶらぶらと歩いていた。


(体育館裏か。ここなんか良さそう。問題はカメラをどこに隠すかだよな……)


 下見をしようと歩いていくと、人の声が聞こえてきた。

 なんとなく隠れて様子を伺うと男子が告白をしている真っ最中だった。


(お? あれは鳩田じゃん。相手は確か一年で一番可愛いと評判の桃山ももやま琴梨ことりちゃんだな)


 俺もそのうち凸ろうと思っていた逸材だ。

 くりんとしたあどけない瞳とつるんとした卵形の輪郭が小動物的で可愛い。

 まあ、どれだけ見た目が可愛くても中身はろくなもんじゃないんだろうけど。


「なあ、俺の彼女にならない?」

「え……あの、どういうことですか?」

「いいだろ? 付き合っちゃおうぜ。俺、結構モテるんだぜ?」


 雰囲気イケメンの鳩田は調子に乗った上から目線告白をしている。

 桃山琴梨ちゃんは困惑した表情で怯えていた。


「お、おモテになるのでしたら、その方とお付き合いしてみては……」

「ウケる。俺は琴梨ちゃんと付き合いたいの」

「そう言われましても……私は先輩のことよく知りませんし」

「これから知っていけばいいじゃん?」


 ていのいい断り断り文句も鈍感装って無視して強引に自分の話を続ける。


 モテない男のキモ告白の参考になるなぁ。

 今度パクらせてもらおう。


「俺と付き合えるって結構ラッキーなことだよ?」

「いや、あの……」

「あと俺、結構ヤバイ奴との繋がりもあるから」


 断ったら穏便では済まないという脅しだ。笑顔で言っているのがなおさらキモい。

 さすがに調子にのりすぎだ。

 ちょっとお仕置きしてあげよう。


「なにしてるの、鳩田くん」

「なっ……キモ堂! なんの用だ! あっちいけ!」

「その子、困ってるみたいだよ?」

「てめぇには関係ねぇだろ!」


 琴梨ちゃんは縋るようにすすっと俺の背中に隠れた。


「生意気なこと言って悪いけど、嫌がってる女の子に無理矢理付き合えって迫るのはどうかと思うよ」

「キモ堂! てめぇに言われたくねーよ!」


 鳩田は形相を変えて襲い掛かってきた。


「わっ、ごめん!」


 俺は許しを乞うように腕を伸ばし、しれっと鳩田のみぞおちを強打する。


「うっ……」

「ご、ごめん、痛かった」

「てんめぇ……殺す! ぜってぇー殺す!」

「許して! 悪気はなかったんだよ!」


 勢いよく頭を下げて顔面を頭突きする。

 次の瞬間、鳩田は鼻血を噴き出した。


「ぐへぇ!」

「きゃあ!」

「ごめんごめん。大丈夫?」


 さらに謝りながらガンガンと頭突きを食らわせると、鳩田は頭を押さえながらのたうち回った。

 その隙に琴梨ちゃんに耳打ちする。


「今のうちに逃げて」

「でも……」

「早く。今のうちだよ。あと、このことはみんなには内緒でね」

「はいっ。ありがとうございます! 藤堂先輩!」


 桃山さんはトットットと足早に立ち去っていく。

 ん? いま俺の名前を言ってなかったか?


「藤堂、てめぇ……」

「あ、ごめん、手を踏んじゃった」


 そう言ってから鳩田の手をぐしゃっと踏みつける。


「ぎゃああ!」

「大きな声出すと人が来ちゃうよ?」


 笑いながら鳩田の髪をぐしゃっと鷲掴みにして顔を上げさせる。


「キモオタの藤堂にボコられたなんてみんなに知られたくないよね?」


 既に鳩田の目には怯えが滲んでいて、反撃する気力はない。

 雰囲気イケメン気取ってても鼻血まみれだと台無しだ。


「お互い今日のことは内緒にしておこう。それでいいね?」


 鳩田はわなわなの口許を震わせる。


「返事は? 分かったら返事くらいしろ!」

「は、はい! 誰にも言いません!」

「そう。それでいい。明日からも僕のことをキモ堂って呼んで馬鹿にするんだよ。分かったね?」

「な、なんでだよ?」

「誰が質問していいっていった? 俺の命令には『はい』か『イエス』で答えろ」

「はい……分かりました」


 鳩田くんがものわかりのいい人でよかった。

 こんなことで俺の素性がばれてキモオタ計画が潰れてしまったら最悪だ。


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