表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/31

緊急会議

 翌朝、学校につくとすぐに鳩田を連れて人気のないところへ移動する。


「で、琴梨ちゃんについてなにか分かったのか、鳩田」

「分かったもなにも、キモ堂、お前琴梨ちゃんと付き合ってるんじゃねーかよ!」

「藤堂だ」

「ぐぎゃあっ!」


 脛を蹴りあげると鳩田は地面を転げ回る。

 それほど強くしてないのに大袈裟な奴だ。


「ほら、さっさと報告しろ。授業が始まるだろ。喋らないともっとひどいところを蹴っ飛ばすよ?」

「は、はい。入学してから二ヶ月。既に琴梨ちゃんに告白したらしいんだけどみんなフラれてるらしい。藤堂はいったいどうやってあの難攻不落の琴梨ちゃんを落としたんだ?」

「余計なことは言わなくていい」

「ひっ、ごめんなさい! 蹴らないで!」

「報告の続きをしろ」

「好きな食べ物はパスタと甘いもの全般。嫌いな食べ物はあまりないらしい。苦手なものはホラー映画とか怪談とか怖いもの。かなり苦手らしい。こんなところだ」

「なるほどな。引き続き調べてくれ」

「まだ調べるのかよ? わ、わかった、分かったから蹴ろうとするな!」


 鳩田を立たせて制服についた埃を払ってやる。

 親切でしているのに鳩田はまた痛めつけられるのではとビクビクしていた。


「おい、鳩田」

「は、はいっ……」

「そんなビビった感じで教室に戻るな。不審に思われるだろ? もっと堂々と胸を張って帰るんだ。むしろ俺を締めたみたいな顔をしてな」

「わ、わかったよ」


 鳩田は胸を張りながら教室に戻り、その後ろを俺がこそこそと歩く。

 クラスメイトはまた鳩田が癇癪を起こして朝から俺に暴力を振るっていたと勘違いしてくれている様子だった。




 琴梨ちゃんに見つかる前に帰宅しようと靴を履き替えているとパタパタと走ってくる音が聞こえた。


「あー、ここにいたんですか。先輩、一緒に帰りましょう!」

「お、おう……そうだね。帰ろうか」


 一緒に歩いていると部活でランニングをしている集団とすれ違う。

 その中にはいつも琴梨ちゃんの隣にいる女の子の姿もあった。


「あ、マキちゃーんとばいばーい!」


 琴梨ちゃんが手を振ると一瞬だけ笑顔になったが、隣に俺がいることに気づくと殺気だった目で睨んできた。

 俺、なんかあの子苦手……


「そうだ、琴梨ちゃん。今度またデートしようよ。水族館とかどう?」

「んー。水族館デートもいいですけど、先輩のおうちに行ってみたいです」

「僕んち? ダメだって。一人暮らしだから掃除してないし」

「先輩って一人暮らしなんですか!? 高校生なのに!?」

「あ、いや……」


 しまった。

 うっかり個人情報を漏らしてしまった。


「散らかってるならなおさら行ってお掃除とかしたいです!」

「いいって、そんなの」

「よくないです。それにどうせコンビニのお弁当とか外食ばっかなんじゃないですか?」

「うっ……」


 図星を衝かれ、言葉に詰まってしまった。


「早速今日お邪魔します」

「きょ、今日!? さすがに今日は勘弁して。一応準備くらいはさせてくれよ」

「分かりました。じゃあ明日です。ちょうど明日からは個人面談で学校は午前中で終わりますし」


 有無を言わさず決められてしまった。


「そうだ! 先輩食べたいものありますか? 私作りますんで」

「そうだなぁ……唐揚げかな」

「了解です! あー、楽しみだなぁ」


 琴梨ちゃんは嬉しそうに弾みながら歩いている。

 今さら断るのは難しそうだった。




 その日の夜、俺は緊急生配信を行った。


「聞いてくれ、みんな。明日小鳥ちゃんがこの家に来ることになった」


『マジかwwwwww』

『このヲタ部屋見られたらおしまいだな』

『彼氏のおうちにやってくるということは、分かるよな、TAC』

『生配信しろ!』

『付き合ってまだ二週間も経ってないんだからな!軽はずみなことはするなよ!』


 興奮でコメントが押し寄せてくる。


「掃除するとか言ってるんだけど見せたくないものはどこに隠せばいい?」


『ちょ、おま。TACの部屋のものはほとんど見せられないものだらけじゃねーかよ!』

『隠せるレベルじゃねぇw』

『今日中にどこかアパート契約して明日そこに連れていった方が早いだろ!』


「オタク趣味の理解はあるからその辺は見られても構わない。問題はこの豚のお面とかだよ」

『それお面だったの?素顔かと思ってた』


「んなわけあるか!」

『あとは男の子ならではのコレクションの隠し場所だな』


「まー、それもあるな」

『仕方ない。TACのコレクションを俺に送れ。人助けでもらってやるから』

『俺は小鳥ちゃんが欲しい』


 みんな興奮でわいわい騒いでいる。


『ヤバイものはロッカーにでも預けてきたら?』


 冷静な意見をくれたのは久々に現れたブサエルだ。


「あー、なるほど。その発想はなかった」

『あといくら掃除してくれるとはいえちゃんと自分でも掃除しておけよ?特に生ゴミ系はドン引きされるからな?』

「分かった。まあ言っても普段から掃除してるからそんなに汚れてはいないけど」


 生配信しているとはいえ床とかは映ってないから、やっぱり汚部屋だと思われてるんだな。

 イメージ的に成功だが、もっと大切ななにかで負けてる気がする。


 いくらアニメ好きのポリシーを曲げないところが好きと言っていた琴梨ちゃんでも、さすがにこの部屋を見たら引くだろうか?

 ちょっと切ない気もするが、俺みたいな最低な男とは別れた方がいい。

 このままの状態で琴梨ちゃんを家に呼ぼう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ