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こっぴどくフラれてみた

「ぼ、ぼぼ、ぼくと付き合ってください! 一生大切にしますっ!」


 キョドりながら告白すると一木いちきは嫌悪感溢れる表情になった。


「……はあ。あのね、藤堂とうどう。あんた鏡とか見たことあんの?」

「か、鏡なら一昨日見たけど?」

「一昨日って……毎日見ろよ。そんなんだからキモいんじゃない?」

「すいません……」

「じゃ、あたし帰るから」

「あ、あのっ! まだ告白の返事もらってないんだけど?」

「はあ!?」


 一木は鬼のような形相で振り返る。


「嫌に決まってんじゃん! てかあたしにコクったこと絶対誰にも言わないでよね! こんなキモい奴にコクられたなんて学校のみんなに知られたら自殺もんだし!」

「す、すいません……」

「ったく。身の程わきまえろよな。キモ堂!」


 一木は唾を吐きかける勢いで言い放って去っていく。


 足音が完全に聞こえなくなってから机に隠していたスマホを取り出してカメラに向かってピースをする。


「はい、フラれましたー! これで四十八人連続でーす! ではまた次回ご期待ください!」


 締めの言葉を言ってから録画を停止する。

 なかなかきつい罵声を浴びたし、今回は神回になるかも?

 馬鹿で品の悪いギャル、一木に感謝だ。



 俺はフラれYouTuberのTACこと、藤堂拓巳(たくみ)

『こっぴどくフラれてみた』という悪趣味な動画チャンネルを開設しており、フォロワーは五万人を越えている。

 毎回キモい告白をして戸惑う相手のリアクションを楽しんでいるクズだ。

 もちろん豪快に振ってもらうために普段からキモい言動をし、見た目も髪ボサボサでダサいメガネをかけ、不潔そうな服装を心掛けている。


 家に帰ると早速動画の編集だ。

 もちろん俺だけじゃなく相手の顔も映らないようにモザイク処理をして音声も変えている。

 それ以外にも場所を特定されそうなものには処理をするから編集には時間がかかる。


「今日もコメント来てるなー」


 毎日色んなコメントが届く。


『ウケる!TACマジキモい』

『彼女作る気あんのかww』

『こんな品性のない動画配信するなんて常識がない』

『ファンです!これからも応援してます』

『女の子に好かれるためには相手の気持ちを思うことが大切だと思う』


 賛否両論で非難やアドバイス、共感など様々だ。

 昔はネガティブな発言に腹を立てたりもしたが、今はなんとも思わなくなった。

 アンチの存在は人気の証だ。


 メガネを外し、目を隠していた前髪を上げ、パソコン脇に置いてある鏡を見ると、そこには忌々しいイケメン顔の俺がいた。


「くそ……」


 見たくもない素顔だが、こうして毎日鏡を見ることで自分を戒めることにしていた。



 コンビニで買ってきた弁当を食べたあと、お気に入りのリアルな豚のマスクを被って実況生配信を開始する。


「ふひひ。皆さんこんばんはー、TACでーす!」

『おー、来た!』

『おつです』

『豚マスクが日本一似合う男w』

『いつも動画観てまーす!』


 待ち兼ねていたファンが多く、既に300人ほどが視聴していた。

 ちなみに生配信しているこの部屋は壁にえっちなアニメのポスター貼ったり、フィギュアを飾ったりして『僕の考えたさいきょうおたくべや』にしている。


 わざわざ生配信を観に来てコメントまでする人たちはほとんどがファンでアンチはいない。


「今日はかねてからここでも紹介していたギャル子ちゃんに告白してきました!」

『マジかw』

『凸乙』

『なんて無謀なことをw』

『うPはよ』


「果たしてTACに彼女はできたのでしょうか? 結果は後日アップする動画で発表です」

『聞くまでもないし』

『勇者だなぁw』

『いや案外ギャル子ちゃんがTACの魅力にやられて堕ちたかもw』

『もう少し脈ありそうなとこいけよw』


 ここに集まってワイワイやってるのは恐らくTACと同じようにモテない男たちばかりだ。

 フラれてもめげずにコクるTACは彼らの中では英雄だ。

 彼らはTACが大好きで、俺もこいつらが大好きだった。

 彼らのためにもTACは常にフラれ続ける伝説の男でなければいけない。



 一時間ほどの配信を終え、動画編集作業に移る。

 編集しながら既に頭は次のターゲットを誰にするかで頭が一杯だった。

 あと二人で記念すべき五十人だ。

 これまで同じ高校の生徒はもちろん、駅で見かける女の子やコンビニの店員、仕事前の水商売のお姉さんなど数々の女性にコクってきた。


 特に人気のあった回は彼氏なしのぽっちゃり系アラサーカラオケ店員さん編だ。

 この人ならもしかしたら付き合えるんじゃないかと期待が集まったが、結果はこっぴどくフラれた。


 それまでコメント欄には笑うものばかりだったが、このときは憤るもの、悲しむものも多く現れた。

 TACの人気が急上昇した神回として今でも語り継がれている。


(記念すべき五十人に向け、これまでと違う熱い展開にしなくちゃな)


 フラれてみたYouTuberの血が滾っていた。


読んでいただき、ありがとうございます!

フラれたい主人公と先輩スキスキーな後輩ちゃんのちぐはぐでイチャイチャな物語です!


新作をアップするときはいつも緊張してしまいます。

皆様に喜んでもらえるよう頑張りますので、よろしければブックマーク、★評価を頂けると嬉しいです!


今後ともよろしくお願いいたします!


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