第4444回世界飛び込み選手権(実況:白發中 解説:字一色)
『Yeahーーーーーー!!!!!!!!I'm going to die nowーーーー!!!!!!』
そう言ってジョン=マネーデッドは三回転半ひねりからの新月面ムーンサルトを見事につなげて線路に着地を決めた。
その瞬間、快速電車にひかれ、べちゃぐちゃぐちゃぁ、と盛大に赤い花が咲いた。
拍手が鳴り響いた。
『10点!』
『10点!』
『10点!』
『10点!』
『…9点』
「あーーーーっと、ジョン=マネーデッド氏、人生をかけた新月面も、わずかに及ばず49点だーーーーー!!!!解説の字一色さん、今の飛び込みいかがだったでしょうか!?!?」
「掛け声の1秒間が惜しかったですねー(笑)それがなければ着地からの静止も見事にきまって、50点も夢ではなかったでしょうに(ホジホジ)」
「なるほど!!!!!」
「借金が10000億兆円あるという話だったんで、何か伝えたかったのかもですね、私英語全くわかりませんが(笑)」
「なるほど!!!!人生をかけた大一番で、実力を出し切れなかったわけですね!!!」
「選手たちはこの一瞬にすべてをささげてきただけに、残念ですねー(ホジホジ)」
『今度の4番線の電車は、各駅停車、東京行となります。この電車は、10両です』
「実況はわたくし白發中!!!!解説はおなじみの字一色さんで送っております!!!!字一色さん、この後の見どころを教えてください!!!!」
「次の電車は各駅停車なので電車のスピード落ちてますから(笑)勢いが肝心ですかねー」
「なるほど!!!!」
ホームには巨漢の男が入ってきた。
拍手が会場を包み込む。
「おーっと、次の選手の入場だーーー!!!東大落田(35歳)選手!!入試に落ち続けること17年のベテラン選手!!ここはベテランの意地が炸裂するかーー!?!?」
「彼女いない歴=年齢の選手ですって(笑)人生の半分を受験に費やすどんな気分なんですかね(笑)」
「なるほど!!!!」
『まもなく、4番線に下り電車が参ります。黄色い線の外側にたって、お待ちください』
『せ、拙者はコミュ障の引きこもりでござったが、と、東大に受かれば人生が変わると思って頑張ってきたでござる。で、でも、拙者の模試の成績では3%の合格率しかないから、か、確率から言ってあと16年近くも試験を受け続けなきゃいけないでござる!!!も、もう耐えきれない!!!ぶひーーーーー!!!!』
ぱーーんと銀色に光る電車がホームに入ってくる。そこに向かって東大落田、飛びこもうとするが、足が震えて動けないようだ。目の前を無慈悲にも電車が通過してしまう。
激しいブーイングの声がホームを包み込む。
『0点』
『0点』
『0点』
『0点』
『0点』
「あーーーーっと!!!!東大選手飛びこまない!!!足がふるえて動けなかったかーー!!!場内からは激しいブーイング!!!!」
「何しにきたんでしょうね(笑)豚っぽいだけに、ぶーぶーぶーぶーブーイングされたかったんですかね(笑)」
ドアが開いた瞬間、複数の青白い手がホームに伸びてきて、
真っ暗な車内へ東大落田を引きずり込む。
『ぶ、ぶ、ぶ、ぶひーーーーーーーーーーー!!!!』
悲鳴を上げながら東大落田は車内へと消えていった。
中からは咀嚼音が「ぼりぼりぼり」と聞こえ、血の匂いが一段と濃くなる。
そのまま電車は何事もなかったように発車した。
「いやーーーー解説の字一色さん、東大選手(故)は何がいけなかったんですかね!!!!」
「もう生き方からしてダメでしたね(笑)独立事象が理解できてない時点でもう一度人生やり直したほうが早かったんじゃないですかね(ホジホジ)」
「なるほど!!!!!」
「さて、気を取り直してまいりましょう!!!!本日最後の選手です!!!!伊藤メンヘラ子(25歳)選手!!!話したこともない会社の同僚を恋人だと思い込み、ナイフでめった刺ししたヤンデレ系の技が光る選手!!!その妄想力をここ一番で爆発できるかーーー!?!?!?」
「メンヘラ怖いですね(小並感)」
「なるほど!!!!!」
拍手が会場を包み込む。
両腕を包帯で包みこみ、ぼさぼさな髪の毛は膝に届くぐらい長く、白い薄汚れたワンピースを着た女性が入ってくる。終始俯いており、鼻から上が全く見えない。
「メンヘラ子選手!!!今日は両手のリスカ痕を隠す包帯をピンクでデコってきているーーー!!!!」
「こぜ貞子(笑)」
『まもなく、4番線に下り電車が参ります。黄色い線の外側にたって、お待ちください』
『マサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のものマサヨシ君は私のもの』
ぱーんとホームに電車が入ってくる。
あの目をぎょろっとするやつで周囲を威嚇した後、クモのような四足歩行でカサカサと線路に飛び降りようとするが、間に合わず中途半端に顔だけ突っ込んだ結果、首がぶっとんで5回転半ひねりを加えてホームの中央に戻ってくる。
コロコロと転がって、止まった時には断面が下を向いてさらし首のようになる。
その表情はこの世のものとは思えないほど凄惨なものだった。
会場は今日一番の拍手。歓声が鳴りやまない。
『10点』
『10点』
『10点』
『10点』
『10点』
「で、で、でたーーーーーーーーーーーー!!!!!ついに出ましたーーーーーーー!!!!!メンヘラ子選手(故)満点獲得!!!!!この時点で金メダル確定です!!!!!!!!いやーやりましたね解説の字一色さん!!!!!」
「なんかもうピタゴラスイッチみたいでしたね(適当)」
「なるほど!!!!!」
「優勝は貞子ですねーーこれなんてホラー(笑)」
「ホラー小説ですから!!!!!」
会場は手早く片付けられ、表彰台が用意される。
その上にメンヘラ子のさらし首がそっと置かれる。
「あーーーーっともう会場はスタンディングオベーション!!!!興奮が全く覚めない中での表彰式になります!!!!いま!!!!世界飛び込み協会の会長から栄光の金メダルが首にかけられるーー!!!!」
「金メダルのダイレクトエントリー(笑)」
「そして花束が授与されるーーー!!!!!」
「お墓のお供え物ワロタw」
「そしてほかにもメンヘラ子選手(故)の遺族には賞金の1000兆円、そして副賞として殺人罪の取り消しと、マサヨシ君と一緒のお墓に入る権利が送られます」
「貞子あの世でにっこりですねー(にっこり)」
「なるほど!!!!!」
そして国家斉唱が終わった。
観客は興奮冷めやらぬ様子で会場を後にしていく。
中には記念撮影を選手としている人もいる。
「それでは第4444回世界飛び込み選手権、そろそろお別れの時間となります!!!!解説の字一色さん、最後に何かコメントをお願いします!!!!!」
「出場選手はみな人生をかけた勝負で我々を魅了してくれました。大変すばらしい駅からの眺めでしたね。次回もこれぐらいhigh-levelな試合、みたいものです(キリッ)」
「なるほど!!!!それでは次回またお会いしましょう!!!!実況はわたくし白發中、解説はおなじみの字一色さんでお送りしました!!!!字一色さんありがとうございました!!!!」
「あじゃっした」