────花びらは散る────
ここは寒くて暗い洞窟の中。
私は狼のお母さんに育てられたの。だから言葉を知らないんだ────
私の住んでいる場所は、緑の木々に囲まれていたの。だから狩人さん来たりするんだ。
パンパンって音がする度、怖くて頭を丸めちゃう。
天気が気持ちよくて、お母さんと一緒に食べ物を探しに行った日があったの。そしたら美味しいものたくさん見つけて満足、満足。帰り道もニコニコしてた。
でもこの日、一つ違ったことがあったの。ぱーんて音がして、お母さんが目の前で飛んで地面に落ちたんだよ。そしたら、お母さんから赤い物が流れて……。
狩人さんが来たんだね。なのに、初めて頭を丸めなかったよ。そんな事できなかった。当たり前じゃんか、お母さんがコロサレタんだから。私は撃った人に襲い掛かった。
伸びた爪で引っかいて、腕にもしがみついた。でも、おなかを殴られて真っ暗になっちゃった……。
気づいたら、回りが何かしゃべってた。だけど怖いし、おなかも痛いし、立つことも出来なくて黙って聞いてた。
私、お母さん以外と言葉交わしたことなかったから、なにか話しかけられても答えること出来なかったよ。それできょとんとしてたら、紫陽花のお花の臭いがした女の子がやってきたの。なんかその子、私の目の前で転んだの、目の前にはなんにも無かったのに。でも、それがオカシクテげたげた笑ったよ。そしたら一緒になって笑顔になった。
その子、私に話しかけるけど言葉わかんなかった。だけど手を使ってくれて目が見えないんだってことが判った。
それからその子が私のところ毎日来て、お話してくれた。少しだけ私も言葉話すこと出来るようになったよ。それで今までのこととか、私のこと、その子のこと、いっぱいいっぱいお話した。
笑顔でニコニコ楽しかったよ。
それから、その子が一緒に外行きたいって言ってきて、私が目するって言って外に出たの。
やっぱり怖かったけど外も久しぶりでウキウキしてた。で、お話しながら森の方まで行ったの。そしたら看板あって、何か書いてあったんだけど、私読めないからそのまま進んでった。
あとから聞いたら、危険近づくなって書いてあったみたい。
楽しくて私ははしゃいじゃったよ。そしたらその子転んじゃって、膝を怪我したの。その場所、地面にばい菌混ざってて、傷から入っちゃって大変なことになっちゃった。
急いでおんぶして帰ったんだけど、私は顔をぶたれた。で、こんなこと言われた。
「貴女さえ存在しなければ、この娘はこんなことにはならなかったのよ。この疫病神!」
難しい単語ばっかりでわかんないけど、私が悪いって言われたのは判ったよ。
ぶたれた場所痛かった。でも痛くなかった。だってその子のほうが痛いと思うから。
それから暫くは独りで納屋に放り込まれたの。
お母さんみたいに撃たれちゃうのかなって思ったけど、少し違って、ご飯をもらえなかった。
おなかが空いて死んじゃう~もぅだめだって、そう思ったら納屋の扉が開いて紫陽花の臭いの子がいたの。それですごくいい匂いがして、我慢できなくて……。
────食べちゃった。
手に持っていたパンを。
その子はつたない笑顔で私を触ってきて、ごめんねって言ってくれた。何であやまったのかさっぱりだった。でもなんだかうれしかったよ。
それから、毎日私にご飯を持ってきてくれたの。きっと自分のご飯なんだって思った。きっとおなかが空いてるのに、私に持ってきてくれるんだもん。やっぱりうれしかった。
ちょっと日がたって、いつもみたいに夜眠ってたの。すーぴーって。そしたらね、外からお肉の焦げるいい匂いがしたの。でも夜なのに外が明るくて変な感じがして────
そう思ったら、いつもは開かない扉が開いたんだ。
えっ、て思ったよ。それは開いたんじゃなくて崩れてきて、火が扉から漏れてきたの。
それで私はどうしてか全然わかんなかったけど、あの子のところへ行かなくちゃいけない気がして納屋から飛び出したの。
外は熱かったよ。変な声もたくさん聞こえたよ。なんて言うか、動物がたすけて~って言ってるような、悲鳴みたいなの。私は周りなんてどうでもよくて、早くあの子のところへ行かないとだめなんだ。助けないと……。
ニコニコ一緒にした笑顔、なくしたくないから。
急いだんだけどどこにいるのか判んなかった。でもね、いつもするふわっとした紫陽花の花みたいな臭いが、私がどう行けばいいか教えてくれた。
走る、走る。
熱いけど我慢、我慢。
息苦しいけど我慢、我慢。
気づいたらそこに咳き込んだあの子がいた。臭いも減っていて判り辛かったけど、間違いなく一緒に笑った紫陽花の女の子。
助けなきゃって思ったの。だからおんぶして、そこにあった窓を壊したら、どかーんって言って私たち窓の外に放り出された。
とってもとっても痛かったけど、ちゃんとおんぶしたまんまだった。私えらいって誉めた。
それから、空気のきれいな近くの森にそのまま行ったの。それで後ろの紫陽花の子を見たら……………………。
花が無くなってた…………。
茎はあるのに花だけが、なくなっていたんだ────
な~んにも言葉でなかったよ。でもお母さんから教えてもらったことをしようと思って、地面をせっせと掘ったの。それで、紫陽花の子を埋めてあげた。
なんだかわからないけど、目から水が流れて止まらなかったよ。
それでいっぱい、いいっぱい、うれしい気持ち込めて言ったよ。
「あっがと………」
これが、私の最初に覚えた言葉だったの。




