お手紙届きました
こんにちは。アイヴィー・オルウェンてす。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
短期春期休暇も終えて、学園生活に戻り、2週間程経ちました。
その間、例の魔王様は、ひたすらプレゼント攻撃で、花だの、お菓子だの、送りつけて来たのは言わず物がな。
そして、つ、つ、ついに、今朝、次期公爵様からお手紙頂いてしまいました・・・。いや、いつも、メッセージカード程度のお手紙は頂いていたのです。今回のお手紙は、おそらく、正式な召喚状・・・。ご丁寧に家紋の封蝋までしてある物です。
朝からその手紙を見ない為の言い訳を沢山して、仕方無しに、手紙をカバンに入れ、学園に到着し、授業を受けて、そして、お昼休み。まだお手紙の内容確認出来ずにいます。流石に半日持ち歩いてるのも怖くなってきたので、意を決して開封しようかと。しかし、怖くて、手に持つだけで、気分が・・・胸焼けが!!!
と、苦しんでいたらば、同じクラスのビクトリア・アディントン侯爵令嬢が、声をかけてきました。
「御機嫌よう。アイヴィー。貴女先程からどうなさったの?そんな怖い顔なさって。」
「御機嫌よう。・・そんなに怖い顔してた?」
彼女、実は、王太子の婚約者様。御年16歳。やや吊り気味の目元と黒い瞳に赤毛の髪がお似合いの才色兼備なご令嬢。
今年の卒業後と同時に、王太子とご結婚予定。
彼女のお父様は現在外務大臣で、その手腕は素晴らしく、時々、新聞でお名前拝見するほど。
そんな雲の上のご令嬢で本来なら先輩である彼女と、二年ほど、飛び級した為に、クラスが同じになった事がきっかけで、仲良くして頂いているのです。
もともと、彼女の性格上、面倒見が良いのもあって、何度も助けられた事があります。
同じクラスになってから、「いついかなる時も私の友人であるなら、淑女として、最低限の素養くらお持ちなさい。」といって、何度も淑女教育を施されてきました。
それも、最近は、殆どご指導入らないので、最低限の素養くらいは、身につけたものとおもわれます。そんな熱心な指導のお陰で、初期の頃にあった意地悪も嫌がらせも殆ど受けなくなり、過ごしやすい学園生活を手に入れる事ができました!有り難い!感謝してもしきれない、とても大切な友人なのです。
それに、見た目のキツさに相反して、とーっても優しい淑女で、ギャップ萌がたまらないのです!
「ええ。なさってましたよ。」
「うん、まぁ、ちょっと考え事かな。」
手に持っていた、手紙をテーブルに置いて、視線を彼女の方に向けると、相変わらず、神々しい笑顔がこっちを見ていた。
「まぁ、学園一の才女を悩ませる問題なんて、相当ね。」
「ビクトリアに言われると、嫌味にしか聞こえないよ。未来の王妃様。」
「まぁ。謙遜なさって。それで、どこの殿方からのお手紙なの?」
「・・・なんで、男性って決めつけるの?女の子かもしれないじゃない。」
丁寧な言葉使いとは裏腹に、ビクトリアは、核心をいきなりついてくる。
どうして、私の周りには、こうも鋭い人にが多いのか。
その鋭さを是非、我が家の姉上様に分けて上げてほしい。爪の垢煎じて飲ませて上げてほしい。本当、人間って、平等じゃないって思う。
前世記憶持ちの私に言われたく無いだろうけどさ。
そういえば、昔、ビクトリアに、「そんなの不平等だ!」といったら、「当たり前でしょう?人間は、生まれながらにして、不平等なの。でも、世の中は、可能な限り公平であるべきと思うわ。」って、返されて、あんぐりした記憶がある。
16歳の女の子なのに、ナニソレ可愛くない。いや、この国がこれからも安泰である事は、その瞬間、確かなのだと納得したけど。
「アイヴィーを悩ませる女性なんて、私以外に誰かおりますの?」
そういうと、ビクトリアの素敵な笑顔がキラキラ光線を放ってやってきた。
うっ!目がぁ!目がぁあああ!!こ、これが、王家に嫁ぐ人の持つ神々しさなの?
正に、不平等、そのものだわ!
きっと、王家の花嫁の選定条件に、このキラキラスマイルを入れているに違いない。
さすが、不平等な世の中ね!!!
「もう。またそういう事言う!ビクトリアがそう言う事平気で言うから、こっちは、王太子殿下に何言われるか分からないんだから!!ビクトリアは、貴女の王子様だけ見てて頂戴!」
本当にお願いします、ビクトリア様。
この前、私が殿下に、なんて言われて脅されたか教えてやりたい。あの殿下でさえビクトリアの事となると周りが見えてないのだから、恋とはどんな人でも、盲目になるのかもしれない。
とはいえ、我が家の姉上様は、かなり飛び抜けてると思うけど。
殿下も殿下でどうして、女の私に嫉妬するかなぁ!二人でいる時、あれ程周りを無視して、イチャついているのに、何が不安なのか。
あれだけ見せつけておいて、一体、誰が、ビクトリアに恋慕しようなんて考えるのだろうか。そんな不届き者がいたら、ぜひとも教えてほしい。
それだけ仲睦まじい姿を拝謁したら、通常の私なら、即刻、『リア充爆発しろ!』って呪いをかけているからね?うん。ビクトリアとは友達だから、そんな事は言わないけれど。
そもそも殿下にそんな事言ったら不敬罪でリアルに爆発するのは、私だ、という話なのだけどね。
だいたい、絵画から飛び出してきたみたいに、絵になるお二人なのに、何が不満で不安なんだか。
男子家をいずれば、七人の敵あり。って事なのかな?
「まぁ!そんな事言うなんて。いつの間に大人になったの?この前まで、殿方なんて!って、言ってたのに。」
「だーかーらー、コレはそーゆーのじゃなくてぇ!」
ビクトリアは、口元を手のひらで隠しながら、驚いた顔をして、言ってきた。
うん、だから、この手紙は、ビクトリアが思う様な甘ーい内容の手紙ではない、と思う。
中身見てないから、分からないけど。公爵家の封蝋がしてある時点で、ちょっと、普通に悪魔のお言葉が連なっているに違いない。
殿下がどのような内容の手紙をビクトリアに送っているか知らないけれど、少なくとも、そのお手紙の一万分の一すら甘さはないに違いない。ないったらない。そう、思いたいだけなどでは決してない。
「ふふふ。まぁ、アイヴィーがそういうのなら、これ以上追求はしなくってよ。そうそうーー貴女のお姉様、今度、次期公爵様とお見合いなさるのでしょう?」
「え!な、なんで、それを知ってるの?」
「知ってるも何も、最近じゃどのお茶会に参加してもそのお話が出て来るほど、専らの噂よ?」
そういうと、ビクトリアは、人さし指を頬に当てて、首をかしげた。
「え、な、なんで?」
「何でって。アイヴィー、貴女、ご実家の事なのに、何もご存知ないの?」
「いやー、知らないというか、知らされていないというか・・・。と、とにく、詳しく教えてくれない?」
これは、神のお告げか。一番知りたくても知り得なかった事が、今簡単に落ちてきました これが所謂棚ぼたか。私は、ぼた餅より、豆大福派なんだけど。って、そうじゃない!これで私を最大限悩ませている原因が判明するってものよ!
有難う!ビクトリア様!
有難う、ぼた餅!
「ええ、まぁ、良いけど、私も伝聞だから、確かな事は知らなくってよ。それでも宜しいのかしら?」
「いいよ!全然!ビクトリアの話は、経験上、八割本当の事だから。」
「まぁ。八割というのが気になるけど、いいわ。私が聞いた話ではーーーー」
ビクトリア曰く、前公爵様のお見合いはその方面では有名な話だったそうで。
その日の夜会会場で、お見合い話を直接取り付ける為に、直談判にいらっしゃったご令嬢が数多くいらっしゃったそうな。
なんてはた迷惑な。
そして、その場で、女同士の争いに発展しそうなところを、たまたま、我が家の姉上様が、上手いこと場をとりなしたそう。
恐ろしや、我が家の野ばら、天然女子。
そこで、前公爵は、その場で、騒ぎを収める為に、我が家の野ばらを次のお見合い相手にする、と公言なさったそうな。
んな、アホな!!
そこまでされてて、何故、姉上様は、覚えてないの?!そんな出来事を!!!
ねえ、姉上様、賢い事がウリの天然女子じゃないの?なんで、そんな重要な事、思い出せないのよ!うぅ。泣きたい。
「そ、そうなの。知らなかったから、知れて良かった。有難うビクトリア。貴女が友達で良かったわ。お礼に何か御馳走させて?」
「いいえ。そんなお礼なんて必要ないわ。でも、そうね、御馳走のかわりに、その手紙の相手を教えてくだされば、それで十分よ。ーー私達、お友達でしょう?」
ビクトリアは、笑顔を強めてアイヴィーに言った。
うっ!キラキラスマイルに威圧をプラスしてくるとか、その笑顔、どんだけ鍛えていらっしゃるのか。
私なんて、この前簡単に魔王戦で、撃沈したばっかりなのに。
ビクトリアなら、魔王も勝てそうな気がしてきた。
どうせなら、今後の為に、ビクトリアにもう少し、淑女教育をお願いした方が良いのかもしれない。暫く魔王との対峙が決定した時点で、戦闘力強化は必須だし。
とはいえ、お友達でも言えない事はある。
「・・・なんでそうなるの?!」
「あら?私、学園一の才女にこんな事言うのは、恥ずかしいのだけれど?アイヴィー、お友達は助け合うのが道理でなくて?」
「そうかもしれないけど、この手紙の相手を教える事で、ビクトリアの何を助けるっていうのよ!」
「アイヴィー、人生は、どんな時にどんな情報が役立つか分からないものよ。私が、レオンハルト様の婚約者だとしても、王妃になれるかは、別問題だわ。私に『知らない』という事は許されないの。・・・アイヴィーなら、分かって下さるわね?」
「もう。それを言うなんて、卑怯よ。分かった。教えるけど、絶対ここだけの話にしてね?」
「ええ、心得てるわ。当然でしょう?」
「手紙の相手は、件のーーー次期公爵様よ。」
「まぁ!では、婚約発表も秒読みね?」
ビクトリアの発言にギョッとし、慌てて否定をしようとするアイヴィー。
「な、なんでそうなるの!まだすこし話しただけーーーー」
「そうでしたの。では、もう、お二人は、お会いになっているのね?」
だ、だから、どうして、そう鋭いのさ!
そして、私の軽い口よ。どうして、そう簡単に操られてしまうのか。自分で自分がにくい。
「・・・はぁ。それを知って、ビクトリアはどうするのよ?」
「どうもしないわ。ーー次期公爵様といえば、未来の宰相様と言われているお方だわ。今居る、宰相補佐の中で群を抜いて優秀だとか。その奥様候補が何方になるか気にかけるのは当然ではなくて?」
ビクトリアは、可愛く首をかしげて訊ねてくる。
「あー、はいはい、そうですね。未来のお后様は、為政者の妻ですものね。情報収集は必須の事デスよね。」
もう、どうして、こんなに簡単に私は、負けてしまうのか。
魔王といい、ビクトリアといい、為政者って、面の皮がアイアンスチールで出来上がっていてると確信した。
それで、ただの男がアイアンマンになり、ただの乙女が鋼鉄の乙女とかにジョブチェンジしているに違いない。そうでなければ、やっていけない世界なのかもしれないけれど。
それこそ、姉上様より、まず、私がビクトリアの爪の垢を煎じて飲ませて貰った方が良いのかもしれない。
いや、決して、次期公爵様の婚約者になるから、というふざけた理由ではない。
あの、魔王ーーもとい、次期公爵様との連戦に備える為である。
「あら、アイヴィーったら、スネてるの?」
「いえいえ、とんでもない事でございます。」
「ふふふ。私、これでも、アイヴィーとはこれからもお友達でいたいと思っているの。だから、もし、貴女が何か困っているなら、私にできる事はするつもりよ。」
そう言って、ビクトリアは、アイヴィーの頭を撫でてくれた。
「・・・有難う。」
「いいのよ。私もいつも貴女に助けられてるから、お互い様だわ。」
閑話休題
お昼休みは、ビクトリアと話をしていたら、結局、手紙を開ける暇が無く、気付けば、放課後。
普段なら、図書館に行き、本を読み漁るのだが、まずは、この手紙を開封する事に従事しようと、決意し、人もまばらな教室で、手紙に手をかけ、やっとの思いで、開封した。
開封した手紙は以下のとおりである。
『今度、我が家で開催する、梅雨の花を愛でるティーパーティーにおいで。(要約)』
ほほー!やっぱりねー!
この際、文章の隅々に恋しいだの、早く会いたいだのといった、ふしだら極まりないお言葉はサラッと無視させてもらう。
うん、私も文章なら、簡単に回避できるのよ!
それで、やっぱりかー。と、なってります。やっぱり、お誘いだったー!しかも!ティーパーティー!お茶会とかてなく、ティーパーティー!いきなり、舞台整えてきやがった!
普通、お茶会とかで、適度に交流はかってから、そーゆー公の場に婚約者もどきを召喚するものじゃないの?
なんで、いきなり、こうなるの!本当に、魔王の考えてる事はわからない!断りたい!どうしてら、断れる?
うーん・・・考えても経験の無い私には、分からない!分からない事をしなければならない苦痛・・・疲れたよう。
「はぁ・・・・」
アイヴィーは、ため息をこぼし、帰宅の準備を始める。
そもそも、どうして、姉上様の事で私がここまで煩わされなれば、ならないのか!!
普通なら、卑屈になって、グレるところですからね?
ストレス過多て思春期の女の子の健全な精神をそがいしまくってますからね?
そのこと、ちょっと理解してくださいね!
とりあえず、ここに居ても仕方ないから、まずは、お父様に相談してみよう。頼りになるのは、今やお父様だけだもの。
そして、この仕事の代償、しっかり払って貰いますからね!うん、そうしよう!これは、無償で出来る範囲を超えている!!
そうとなれば、せめて家に着くまでは、この憂鬱な出来事を忘れて、何お強請りしようか考えよう!
そして、意気込み新たに、帰路についたアイヴィーであった。