すれ違う二人
アイヴィーは、キャリッジで公爵邸に向かった。
公爵邸で、アイヴィーを迎えた、執事のモーリスは、ヴィルベルトは、仕事で王宮の管理棟にいると聞くと、アイヴィーは、モーリスにお礼を言って、王宮に向かった。
管理棟に到着すると、当然のように、門番によって、身分を確認された後、アポイントの名簿に乗っていないので、参内させるさせる事が出来ないと言って断られてしまう。
そこを何とかして貰えないかと食い下がってみても、そうは問屋が卸してくれるはずも無く。
虚しく、乗ってきたキャリッジに向かおうとした時、後ろから声をかけられた。
「アイヴィー嬢じゃないか? こんなところで、どうしたんだい?」
アイヴィーが、後ろを振り返ると、そこには、ジョシュアが立っていた。
「ジョシュア……様、ごきげんよう。」
「ごきげんよう。もしかして――ヴィルベルトに会いに来たのかい?」
「ええ、でも、アポイントも、何もとって無かったので、門前払いでした……。」
答えながら、アイヴィーは、その顔を俯かせた。
「……そんなに急いで、ヴィルベルトに一体何の用なんだい?私で力に成れる事であれば、承ろうか?」
そう優しくジョシュアが言うとアイヴィーは、俯いた顔を上げて、すがるような瞳でジョシュアを見つめて言った。
「ありがとうございます。では、一つお願いしても良いでしょうか?」
「ああ、構わないよ。何だろう?」
「直接会って、お話したい事があります。私、ここでお待ちしておりますので、ご迷惑でなければ、お会いしてください。と、伝言をお頼みしてもよろしいでしょうか?」
そう言って、アイヴィーは、目の前のカフェバールを指差した。
「ああ、分かった。承ろう。」
そう言うと、笑顔を向けたジョシュアは、再び管理棟に戻って行った。
ジョシュアを見送り、少しだけ安堵したアイヴィーは、息をついてから、キャリッジの御者に家に帰って良い旨を伝えると、ジョシュアに言ったカフェバールに入店した。
◇◆◇◆◇
アイヴィーは待った。
ヴィルベルトが現れるのを。
アイヴィーが入店してから、2時間は過ぎて、夜の闇が一層深くなろうとしていた。
カフェも晩御飯時を過ぎ、人が疎らになってきていた。
こんな夜遅くに少女が一人、カフェに居るのは、常識的に考えて不信であった。
そして、客はチラチラとアイヴィーを目線で、何があったのだろうと伺うように見てくる。
その度にアイヴィーは、心が悲しくなっていた。
アイヴィーが見てほしいのは、ヴィルベルトだけだというのに、ヴィルベルトは現れもしない。
(人を待たせるのは、魔王様の常套手段ですからね! 私、こんな事で、諦めたりなんかしません。
お姉様に言われたのです。
未来を変えるのは、動いた人だけだって。
私、未来を変えてみせます!神様に抗ってみせます!
手紙だけで謝罪の言葉を済ませようとしている、あの薄情な魔王様に何としても、例えどんなに嫌がられても、言わなくてはいけないのです!
好きだと。側に居たいと。)
そうアイヴィーは考えていた。
時計の針が過ぎる度に、不安に押しつぶされて、諦めて逃げたくなっても、その度に諦めて良いのか自問自答して、その場に留まった。
そして、そして何度目かの時計の音がなると、閉店を告げる店主の声と共に店から出るアイヴィー。
店から出て、直ぐにアイヴィーは声をかけらた。
「おいおい、こんなところに、かわいいお嬢様が一人でいらっしゃるぞ。」
「本当だなぁ! お嬢様、俺たちこれから飲みに行くんだ、寂しい俺たちと寂しいお嬢様で、楽しく遊ぼうぜ!」
「そんな言い方ないだろう? ここはビシっと、『女ぁ! 俺の酌をしろ!!』が、正解だろ!!」
「「おおー! なるほど!」」
怪しい三人組は、そう言うと、三人組の一人が、アイヴィーの手を取り、何処かへ連れて行こうとする。
「は、離してください!!」
アイヴィーが無理矢理手を引き抜くと、アイヴィーの手を引いていた男が、驚いた顔をして言った。
「女ぁ! 誰に口をきいているっていうんだ? ええ!?」
「よっ! 悪人っぽいセリフが格好良いですよ!」
「そこは、『お嬢さん。痛い目に合いたくなければ、ここは素直に従っておくのが身の為だぜ?』 っていうのが、正しいだろっ!!」
「「おおー! なるほど!!」」
いまいち、締まらない悪役三人組である。
そして、再び、アイヴィーの手を取ろうと、三人組の一人がアイヴィーに手を伸ばしてきたところで、声がした。
「止めたまえ。彼女が嫌がっているだろう?」
そう言って、颯爽と現れたのは、ヴィルベルト――――ではなく、ジョシュアだった。
「ジョシュア……様? どうしてこちらに??」
驚いたアイヴィーが、そう答えると、ジョシュアが、答えた。
「まさか……と思って来てみれば、まだ貴女お一人だったとは……。あいつは一体何を考えているのか……。女性を一人、こんな時間まで放っておくなんて……」
「ジョシュア様、私が勝手に待っていただけです。ですから、ヴィルベルト様には……」
そうアイヴィーが言いながら、首を左右に振ってジョシュアに言うと、アイヴィーに話かていた三人組の一人が声を発した。
「はいはいー! そこ、いちゃつかない! お兄さん、折角現れて悪いのだけど、お嬢さんは、僕たちと一緒に飲みに行く事になってますので、帰ってください。」
「違うだろ! そこは、『邪魔してくれるなぁ!』が正解だっ!」
「正義のヒーローの登場か! それなら、お相手してもらおうかぁ!!」
そう言って、アイヴィーの手を取った男が、ジョシュアに向かって拳を振ってきた。
それを左手で軌道を反らしてよけるジョシュア。
拳を振った男が、勢い余って、そのまま、地面にぶつかりそうそさになると、怪しい三人組の一人が言った。
「お、親分! ここは分が悪いですぜ!」
「誰が親分だ! 俺はお前の親分になった覚えは無いぞ!」
「違うだろ、ここは『仕方ねぇ! ずらかるぞ! 野郎ども!』が正解だ!」
そう言うと、最後まで締まらない怪しい三人組は、アイヴィー達の前から居なくなった。
怪しい三人組がいなくなると、ジョシュアが、アイヴィーの方を向いて尋ねてきた。
「大丈夫ですか? お怪我は?」
「大丈夫です。あの、助けて頂いてありがとうございます」
そう、アイヴィーが丁寧に頭を下げると、ジョシュアが、手のひらをアイヴィーに向けて、答えた。
「いえ、何も無いのでしたら、それが一番です」
「今夜はもう遅いし……そろそろご自宅に戻られた方がよろしいと思いますよ」
「そう……ですね」
アイヴィーが複雑に顔を歪めると、ジョシュアの肩越しに髪を乱したヴィルベルトの姿が見えた。
「ヴィルベルト様!!」
アイヴィーに声をかけられたヴィルベルトがゆっくりと二人に近づいてくるのを見て、アイヴィーは、ヴィルベルトをしっかりとその瞳に捕らえて、更に声を発しようとした。
それをヴィルベルトが手で制すと、苦痛に顔を歪めたヴィルベルトがアイヴィーに言ったのだった。
「アヴィー、貴女は……いえ…………その前に、私達、もう、今日でお会いするのは、止めましょう」
「え?? そんな、私まだ何も……」
「ですから、もう、こんな時間まで私を待つような事は止めてください。それから、貴女は、早く自宅に帰りなさい。ジョシュア、悪いが彼女を自宅まで送って行ってくれないか?」
「あ、ああ、構わないが……」
「では、私はこれで失礼させてもらう。後は任せたよ、ジョシュア」
そう言って、ヴィルベルトは踵を返してアイヴィーの目の前から、あっという間に居なくなった。
「どうして……」
残されたアイヴィーの言葉が小さく漏れると、次々に、湧き上がる悲しみに、涙をポロポロとこぼしたのである。
その様子を見たジョシュアが、そっとアイヴィーに、近寄り、アイヴィーの泣き顔を隠すように抱きしめると、ポンポンと、アイヴィーの後頭部を撫で、アイヴィーが泣き止むまで、そうして、ジョシュアは何も言わずに胸を貸していた。
ジョシュア大活躍……?
最近、いちゃつきも何も無ければ、行き違いでつらたんなので、少しだけギャグ?を入れました。緊張感台無しですね。すみません。
ヴィルベルトの突然のお別れの告白!でした。
ヴィルベルトも色々有ります。そんな、色々を次話は投稿します。
今後とも、何かと勉強不足でご迷惑おかけするかも知れませんが、最後までお付き合い頂けると嬉しく思います。
ごま豆腐




