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お祝いパーティー 前編

ご覧下さりありがとうございます。


2話投稿いたします。


宜しくお願いいたします。

 パーティー当日、アイヴィーは、今日も今日とて、美しく着飾らされていた。

 例の如く、ヴィルベルトの手配によって、新しくアラベスク模様が美しいエンパイアラインのドレスを新調されていた。


 また、そのドレスが出来た経緯が、

 『折角だから、デートの時に買って頂いたものと合わせましょう!』と、アイヴィーにとって、余計な思いつきをした男爵夫人の発言のお陰で、今回の装いは、上から下まで、見えるものは全て、ヴィルベルトから贈られたものになっていた。


 もちろん、例のネックレスも着用済である。


 そんなアイヴィーを見たヴィルベルトが黙っているはずもなく。


 アイヴィーを一目みたヴィルベルトは、嬉しそうにほほを緩めて笑みを作ると、

 「今日の貴女は一段と美しいですね。そうですね、今すぐ結婚式をあげましょうか?」と言って、そのままアイヴィーを横抱きしたのは、つい先程の事である。


 そして、そんな事が有れば、パーティーが始まる前から、ひと悶着あるわけで。


 ひと悶着が落ち着いた後、美しい装いとは真逆の不細工な顔をしているアイヴィー。

 これでは、どんなに化粧を施しても無駄だ、とでも言いたくなるほどである。


 というのも、落ち着いて座ってみれば、時間が過ぎるにつれて、3日前に執事のモーリスより

 『最終確定いたしましたので、ご確認下さい』と渡された出席者名簿の錚々たる顔ぶれを思い出して、どんどんと緊張が高まっていたからである。


 (何が、どうなってこうなったのでしょうか……。)


 緊張が高まるばかりのアイヴィーは、ヴィルベルトの頑張りを一切知ら無かった。

 そして、その頑張りを頑張りとして、認識出来ていなかった。


 (ただの、祝賀会が、何故こんなに立派な方々ばかり集まるのでしょうか!?

 何も企んでいないって言ってたのに! 言ってたのに!!!


 これ、絶対に何か企んでいます! そうに違いない!!


 そして、私をどうにかする気なのですよね! そうですよね!!

 私、魔王様が普段から悪知恵を働かせているのは、知っていますからね!


 でなければ、私をあんなに苦しめたりしないですものね! そうですよね!)


 そして、公爵家で、すっかり定番となったサンルームにて、紅茶を淑女らしくなく、一気に飲み込むと、目の前のヴィルベルトに向かって言葉を発した。


 「ヴィルベルト様?」

 「はい、何でしょうか?」

 「今日はお祝いパーティー、という事で宜しいのですよね?」

 「ええ、そうですね。貴女に喜んでいただけるように頑張らせて頂きました。どうですか?」


 笑顔でヴィルベルトがそう答えると、口元を引きつらせたアイヴィーが答えた。


 「どうですか? ではありません!! どうなったら、こんなに錚々たる顔ぶれが集まる事になるのか、教えて下さい!」

 「何か問題でも? 確かに、少々余計な人が集まってしまいましたが、基本的には、貴女の未来への準備の為に、必要な人材ばかり集めたつもりですよ。」


 ニコリと、上機嫌にヴィルベルトが答えると、アイヴィーは、ヴィルベルトのその純粋な応援の気持ちに、自分のこの怒りをどこにぶつければ良いのか分からなくなり、顔を赤らめて、拳をぷるぷると震わせた。


 (くぅっ……!!!


 あの時、素直に魔王様にお願いしなければ、良かった!!


 お願いしなければ、もう少し、気楽なパーティーで終わっていたのに!


 魔王様が発する全てのものには、常に闇魔法がかかっている事を何故忘れていたのでしょう??

 闇魔法じゃなければ、状態異常ですね。はい。


 だから、今日はこの前より距離があるのに、ハァハァして、息苦しいのですね。そうですね。分かっておりましたとも。


 パーティーは女性だけでなく、男性もめかしこみますものね。


 なんですか、そのお洒落に結んだタイは。

 なんですか、その洒落たベストは。

 なんですか、その決まっている燕尾服は。

 なんですか、その長い膝下は!!!


 イケメンが礼服着ているとか!!


 歩くいてしゃべる高性能マネキンか!!


 しかも、地味に服装が、色合わせされてて、驚きですよ! ええ!!

 まるで、ラブラブカップルに見えるじゃないですか!


 何が悲しくて、ラブラブに成らなくてはいけないのでしょうか? カップルは妥協出来たとしても、ラブラブは許せない!!


 一体いつ、私と魔王様が、ラブラブしていたというのてしょう? どなたか、教えて下さりませんか??)


 アイヴィーに客観性という言葉を辞書で引いてほしい、と思ったところで、モーリスが、パーティーの準備が整った旨を知らせる声がかかり、二人は、サンルームを出て、エントランスに移動した。


 そして、時間になると、次々と人々がやってきて、お祝いの言葉をかけてくれる。


 二人は、一人一人に丁寧に挨拶をして、軽く話し、次々現れる人々を向かい入れた。


 パーティーが始まり、参加予定者全員が、会場に入ったのを確認すると、ヴィルベルトが、広間中央にて、簡単な開催の挨拶をすると、参加者から拍手を頂いき、そのタイミングで楽団の音楽が流れてきた。


 そうして暫く、二人で、参加者の間を回っていると、遅ればせながら、レオンハルトがパーティーに現れたとの知らせをモーリスから受け取ると、二人して殿下のところに向かった。


 「殿下、本日は、この様なパーティーにご参加頂き誠にありがとうございます。」


 そう言うと、ヴィルベルトが最敬礼をとり、それに習ってアイヴィーがヴィルベルトの少し後ろで、膝を折って最敬礼をとった。


 「ああ、頭を上げてくれ。折角、そなたが呼んでくれたパーティーだ。いくらでも時間を作ろうというものだ」


 レオンハルトにそう言われたヴィルベルトとアイヴィーは、頭を上げて、立ち上がった。


 「有難き幸せ。私には勿体無いお言葉です。」

 「今日は、何か催し物があると聞いたが、これから始まるのか?」

 「はい、殿下がいらっしゃるまで、お待ちしておりました」

 「分かった。では、早速、始めてくれ」


 公ではないとはいえ、大衆の目があるせいか、レオンハルトとヴィルベルトの会話が普段以上に主従を意識した会話となっていた。


 それを知る物は殆ど存在しないが、アイヴィーは、ヴィルベルトがレオンハルトに対して仰々しく敬った態度を取っていた事にとても驚いていた。


 だって、あの魔王様だよ?とでも言いたげに、目を瞬かせ、二人のやり取りに耳を傾けていた。


 レオンハルトの了解を得て、ヴィルベルトは、注目を集めるように、楽団の音楽を止めさせ、声を張って


 「今日お集まりの皆様、本日のメインイベントを始めたいと思います。」と一言言って、モーリスに声をかけると、大広間の中央の端に無駄にスペースを取り、白地の布で覆われて隠れていたソレが姿を現した。


 「これが、今回特許を取得致しました、機械でございます。」


 ヴィルベルトがそういうと、円を描くように紡績機の周りに、会場内の人々が集まってきた。

 そして、ヴィルベルトは、まだ言葉を続ける。


 「そして、これが、この機械で紡いだ糸で作った綿でございます。直ぐにお気づきになられると思いますが、イロア国の綿より、丈夫でしなやかな綿になっている事がお分かり頂けると思います。どうぞ、そのお手に触れて、心ゆくまで、確認して下さい。」


 と言って、用意していた綿のハンカチが、使用人とヴィルベルトとアイヴィーによって、出席者全員に渡された。


 渡された綿のハンカチを手に取った人々が思い思いに感想を口にする姿を見て、ヴィルベルトはもとより、アイヴィーですら、このパーティーの成功を確信した。


 そして、再び、歓談の時間へと移行すると、早速とばかりに、ヴィルベルトは男性陣に囲まれてしまう。


 仕方なしに、アイヴィーは、ヴィルベルトから離れ、ドリンクを取りに行くと、後ろから声をかけられた。


 「こんばんは。アイヴィー嬢。今宵のパーティーは大成功ですね。」


 アイヴィーが、目の前のドリンクを急いで手に取り、声のする方を振り返ると、そこには、お披露目パーティーの時に出会ったジョシュアがいた。


 「まぁ、ジョシュア様。ありがとうございます。今日のパーティーの催しは、喜んで頂けましたか?」


 アイヴィーが、ニコリと微笑んでそう言うと、ジョシュアが、その目尻にシワを作って、優しそうに微笑み返してくれた。


 「ええ。とても素晴らしい品ですね、あの綿は。今までイロア国から輸入していたものより格段に肌触りが良い。シルクとまでは行かないが、綿であれ程までに柔らかな風合いが出せるとは、驚いたよ。」

 「そう言っていただけて、良かったですわ。」

 「あの機械は、ヴィルベルトが開発したという話だけど、アイヴィー嬢も何か関係しているのだろう?」


 人の良さそうな笑みを浮かべてジョシュアはそう言うと、アイヴィーは、いつぞやにヴィルベルトに注意された言葉を思い出して、言葉を濁した。


 「あ……ええ。お話くらいは聞かせていただいた事がありますわ。」

 「そうだったのかい。それで、――ヴィルベルトは、他に何か言っていたかな?」


 ジョシュアが、顎を指ではさみなから、そう尋ねてくると、アイヴィーも一緒に顎を指ではさんで、首を傾げながら、答えた。


 「他……ですか??」

 「あ、いや。心当たりが無いのなら、構わないよ。私の気のせいだったかもしれないからね。今のは、聞かない事にしておいてくれ。」


 アイヴィーのその様に、ジョシュアは一瞬、動きを停止させると、アイヴィーの後ろから人がやってきたのを確認し、すぐさま挟んでいたその手を解いて、アイヴィーの肩を掴みテーブルから離れるようにそっと移動した。


 テーブルから少し離れた所に移動すると、アイヴィーは、ジョシュアにお礼を言った後、更に言葉を続けた。


 「その、気のせいというお話とは、一体どのような事なのでしょうか??」

 「いやいや、こちらが勘違いしていただけの事、気にしないでくれ。」

 「そこまで言われては、気にするな、という方が難しいですわ。どうぞ、教えてくださいませ。この事は、ヴィルベルト様には、内緒にいたしますから。」

 「そうかい? そこまでいうなら――「あら? アイヴィー、こんな所にいらしたの?」」


 ジョシュアの言葉に被さるように、声を発したのは、ビクトリアだった。

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