この世界について と 先触れ
前半説明です。
こんにちは。アイヴィー・オルウェンです。
先日のお見合い騒動が無事解決し、再び、日常が戻ってきました。
といっても、私、まだ14歳です。
上流階級の子供は、10歳から学園に通うのが一般的で、現在、春の短期休暇を過ごしております。
実は、この前の次期公爵様とのお見合いの三日前から、タイミングよく、春の短期休暇が始まったのでした。
短期休暇だけあって、休暇自体は二週間ほどです。
残念ながら、その休暇も半分が過ぎてしまいました。何故こうも有意義な時間は過ぎていくのが早いのでしょう。
え?宿題は無いのかって?もちろん、ありますよ!!!
前世記憶もちの私の経験上、長期休暇の宿題の問題は基本的に難易度なのではなく、その量に問題があると感じております。
ですので、休暇初期のモチベーションがもっとも高いと思われるときに宿題を片付けてしまうに限るのです。
というわけで、宿題は、終わっている、という事でございます。
さて、学園の話がでてきたので、ここで、少し学園とこの世界について簡単に説明しようかとおもいます。
この学園、いわゆる義務教育みたいなもので、上流階級の子息令息は、皆、10歳から入学し、(その前に幼稚園みたいな感覚の5歳から入学できる私立の学校もあります。)勉学に励みます。
そのご、卒業と同時に、半分ほどの人間は、社交界デビューをはたします。
残りの半分はもう3~6年ほどかけて、大学のような専門分野を中心とした、研究と学習を中心とした、学校兼研究機関に入ります。
ついでに、我が家の姉上様もこの研究機関に所属しております。
学生としてですが。
曾祖母の頃までは、今程、女性の権利についての理解が進んでいなかったのもあり、学園を卒業しただけで、(当時は義務化ではなく、私立と同じ扱いでした。)どこに出しても恥ずかしくない立派なお嬢様ということが証明できていたそうですが、現在はそんなに甘くないのです。
・・・うらやましぃ。
ここで、私の特徴である、前世記憶もちという非常に稀有な能力であります。
学園生活で、唯一、本当に唯一、この前世記憶が遺憾なく発揮されているのであります。
まぁ、前世記憶というよりは、この大量の情報を記憶している莫大なメモリーのほうが大いに役立つのです。
所謂、サヴァン症候群の超記憶症候群に似ていると思いますが、どちらかというと、瞬間記憶といわれているもののほうに近いと思います。
ちょっと天才っぽい感じの能力なのです。
私が、姉上様にそっくりに成り代われる以外のチート能力といっても過言ではない気がします。
ありがたいことに、瞬間記憶なので、意識して情報を選択できるという点など、かなり重宝しております。
この世界に株取引だとか会社だとかの虚構が存在していれば、もう少しこの能力を使って、無双できたのかもしれませんが。
そして、この世界には、商会というものがありますが、その商会のお仕事は、物流と既存の商品の販売がメインであります。
そして、製品の発掘は主に、上記研究機関と共同して、もしくは、研究機関が行い、新製品の販売は、まず研究機関の第一商会が先立って販売します。
いずれにしても、商品は、どれにも税金がかけられているので(特許使用料みたいなものです。)研究機関にマージンの一部を払わなきゃいけない様に法律で定められています。
そして、その研究機関のほとんどが貴族の子息令息でしめているのを考えると、はい、もうお分かりですよね。
こちらの世界でも面白いほど、権力の元にお金が集まるように出来ているのです。というか、これ考えた第五代国王陛下すごいですよね。
もちろん、研究機関だけあって、無駄なものと思われるものへの投資も半端ないので上手いことお金が回っている不思議。
ここで拝金主義の人が研究機関にのさばらないからすごいですよね。
ついでに、商人としてのうまみ自体は少ないように思いますが、たまーに50年に一人とかそういう逸材が、一発発明で当てたりするので、アメリカンドリームならぬ、ヴィシュアルの奇跡なんてものが存在し、夢のあるお仕事として人気があります。
ここで、この世に数少なく残っているチート存在ナンバーワンの魔法使いは何に帰属するかというと、国王陛下直属の騎士団に所属している形になります。
そして、チート存在ナンバーツーの錬金術師は、医局(これも研究機関のひとつ)内の薬師部門の更に錬金術師に特化した部門に所属しているそうですが、詳しくは、わかりません。
一番謎が多いのが魔法使いより、錬金術師であります。
あ、話が長くなりましたが、簡単にまとめると、以下の通りです。
・学園卒業後は、研究機関もしくは社交界へ。
・あらゆる商品のほとんどは、税金がかけられ、そのお金は、研究機関に還元される。
・商会は、商品の物流、既存品の販売が主流である。
・チート存在である、魔法使いと錬金術師は国の機関に所属している。
というわけで、この世界の話は、これくらいにしたいと思います。
というのも、先ほどからいやな騒音が・・・と思っていると、自室の扉が勢いよく開いて、お母様が登場した。
「アイヴィー!!今すぐ着替えなさい!」
「お母様、そんなに急いで、どうなさったのですか?」
「今、レベニスク公爵家から、先触れが届きました!先日の非礼を詫たいとの事で、わざわざ、我が家にいらっしゃるそうなのです!」
え?だれが?と、思っても声には出さ無かった私を褒めてほしい。
誰がと聞かずとも、母のこの様子と着替えを要求するあたり、もう答えは見えている。
わざわざ謝ってもらわなくても良いから、お詫びの品だけ送ってくれたなら、何の遠慮も無く受け取るのに、何で、わざわざ我が家にくるかなぁー!!!!どんな嫌がらせか!!
はっ!!!そうか、わざわざ訪問に来るって事は、先日、お見合いの結果を伝えに来てくれるのか??
・・・・どうせ、断るのに???なんで????
それに、もう、お父様とお母様には、計画の成功を報告したのに、次期公爵様自らそんな徒労をしなくても良いのに!
というより、何故わざわざ、徒労しにいらっしゃる?
あぁ、もう、本当にイケメンの考える事とかわけ分からないー!
嫌がらせ?嫌がらせなの?嫌がらせして、なんの得があるって言うの?ねぇ、なんなの?
意味わからないー!!!!!!誰か私の平和な休日を返せー!!
誰だ、私よりも可哀想とか思ったお馬鹿は!
ええ、分かっていますよ。高飛車にも心の中で、次期公爵様を哀れんだ事も、そんなお馬鹿な事したのは私ですよー!
もしかして、次期公爵様は、心の中で哀れんだことすらもお見通しで嫌がらせをけしかけようとしてるの??この前の闇魔法といい、今度は、一体、無力な女に何させようとしてくれるんだー!
ねぇ、だれか助けてくださいー!!!
はぁ、はぁ、はぁ。
今日は、いつもより、興奮気味につき、支離滅裂でお送りさせて貰います。
そんな、心の葛藤を知らない、メイドたちに素早く姉上様のドレスに着替えさせられ、胸を上げてよせて、さらに詰め物をして、姉上様そっくりの谷間を作成して、ドレスにピッタリと収まった偽乳を装備した私は、あいも変わらず、姉上様そっくりに成り代わっていた。
『この見てくれてが憎い!』と今日ほど思った事はない。