閑話 脳内にいる人々の仕事
短いです。
ヴィルベルトにキスされた直後のアイヴィーの脳内です。
『ね?簡単でしょう?』
スクリーンに移された、ヴィルベルトの笑顔と共にエンドレスで再生される例の映像を指示棒で示し、サングラスをかけた中性的な印象の人物が、
『ここで、この事象について、検証したいと思います』と、言い、円テーブルに座っている人々の顔をぐるりと見回してから、言葉を続けた。
『では、この事象について意見のあるもの!』
『ハイ!これは、セクハラを超えた暴漢であります!』
生真面目そうに七三分けしたスーツ姿の男性がそう答えると、その横にいた、可愛いらしいファンシーな格好をした女性が、七三分けの男性を睨めつけながら、言った。
『デンジャー、何いってるの!これは、アイヴィーの恋愛スイッチが入る絶好の機会だったわ!』
『な!ラブは相変わらず、その方向にしか物事を見ていない!物事はもっと多角的に見て、危険性の少ないものを選ぶべきだ!』
『何よぅ!久しぶりにアイヴィーに春が訪れようとしているのよ?アイヴィーったら、枯れて腐りかけていた大木みたいに、そういった事態が起きてなくて、私とっても暇だったのに、今更何を多角的っていうのよ?これこそ、恋の始まりなの!』
ラブと言われたファンシーな姿をした女性とデンジャーと呼ばれた七三分けの男性が、言い合っている中、黒縁眼鏡をかけ、髪の毛もボサボサの身体の小さな男の子が手をあげておずおずと発言した。
『あのぉー、いいですかー?』
『なんだ?言ってみなさい、レジィ。』
初めにサングラスをかけた中性的な印象の人物が、レジィと言われた少年に続きを促すと、レジィと呼ばれた少年は、こくりと頷き、声を発した。
『僕、そろそろ、昼寝の時間なので、退席しても良いですか?』
あまりの悪気の無さが、場を凍りつかせた。
『・・・コンクルージ。レイズの事は、ほおっておけ、少し、ワシの話を聞いてくれんか?これは、アイヴィーにとって、自身の過去と向き合う為の試練なのではないかと思うのだよ。』
凍りつかせた場に初老の男性が、コンクルージに向かい、提案した。
『レス、試練とは一体どういう事だ?』
サングラスのコンクルージが、片眉をあげ、疑問を顕にすると、レスと言われた初老の男性は、コンクルージの質問に答えた。
『これは、アイヴィーの前世と現世をかけて、自身と向き合う為に必要な試練だと思わんか?だから、我々は、それを応援するべきなのではないかの?』
レスは、そういって、顔の前で、指を組んで、肘をついて、言った。
それを聞いていた、デンジャーが、頭の後ろに手をくんで、背もたれに寄りかかると、言った。
『レス、そうは言うけどなぁ、この、ヴィルベルトとか言うやつは、何かにつけて、危険な香りがします。私は反対です。』
『何言ってるのよ、デンジャー!これはアイヴィーの一世一代の大恋愛の予感というものなのよぉ?』
デンジャーの言葉にラブがテーブルを叩いて抗議したところで、レスが再び、声を出し、コンクルージに向かって問いかけた。
『皆もこういっておる、コンクルージ、どうなさる?』
『・・・―――では、今回は、レスの言うとおり、アイヴィーに試練という責任を果たさせよう!』
『きゃあ!流石コンクルージ!』
『まぁ、コンクルージがそういうなら・・・』
『ふぉっふぉっふぉっ。楽しみじゃのう。』
『zzzz・・・』
コンクルージがそう言うと、ラブが自身の両手を顔の前で叩いて喜び、デンジャーは渋々納得した様な顔おして、レスは楽しそうに笑った。
一人、予定通りに睡眠に入っているレイズを除いて。
『そうと決まれば、早速、ピットに行って、フェニルを出して来る様に言ってきます。』
『あ!待って、デンジャー!私も行くわっ!!ついでにフロントに寄って、アイヴィーにチョコレートとチーズ食べさせましょっ!』
と、言って、デンジャーとラブの二人は、ラブがむりやりデンジャーの腕に巻き付く形で、仲良く円テーブルから席を離れ、ピットなる場所に向かった。
そして、残された三人は再びスクリーンに目をやり、アイヴィーの観察に戻った。
アイヴィーの脳内で、そんな話が成されていたとは露ほども知らないアイヴィーは、
「今日は、チョコレートとかチーズの濃厚な食べ物でやけ食いしてやる!」と、キスの現場から逃亡するように帰路についた馬車の中で、固く誓っていた。
人物名については、色々名称を省略したり、変換しています。
また、簡単に調べただけの脳構造を適当に引用して、名前を弄っています。
間違い等ご発見頂いても、構造について、修正の予定はいまのところ無いので、心の中に留めて頂けるとたすかります。
フェニルは、フェニルエチルアミンという代表的な恋愛ホルモンだそうです。
次話はから、ちょっと色々進めたい!!頑張りますので、今後とも、お付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。
ごま豆腐




