お披露目パーティー 婚約者との夜
お待たせいたしました!夜の部の続きです。
ヴィルベルトは、アイヴィーの肩を力強くギュと抱きしめて呟いた。
「アイヴィー、今日の貴女は一段と素敵だ。」
ヴィルベルトにそう言われたアイヴィーは、ヴィルベルトの肩に顔を預けた状態で、驚きのあまり、拒否する事も何も出来ず、目を見開いて、ただ、答えただけだった。
「あ、あの、ヴィルベルト様??もう、公爵夫・・・お義母様は、近くにいらっしゃっりませんよ・・・?」
アイヴィーの言葉を聞いて、ヴィルベルトは、強く抱きしめた力をゆるめ、肩にてを添えたままで、驚いた顔をして答えるアイヴィーの返答を聞くと、少し恥ずかしそうだった顔が、みるみる真顔に戻るり、いつもの悪どい・・・もとい、楽しそうに顔を歪めて微笑んで、答えた。
「うん?そうだね。」
「ですから、その様な事を仰る必要は無いですからね?」
アイヴィーは、そう、小さな声で答えると、ヴィルベルトから離れようと体に、力をいれた。
それと同時に、ヴィルベルトの腕の力が抜けて、アイヴィーとヴィルベルトの間に隙間かできる。
しかし、それ以上、二人の距離が離れる事はなく、ヴィルベルトの腕は肩から腰に移動し、アイヴィーを抱きしめたままで、アイヴィーの顔を見、視線を反らすこともなく、感情を隠すような微笑みをしていった。
「今朝、貴女に言った言葉に偽りは無いよ。もし、母上が、一緒に居たことで勘違いしたなら、この場で、もう一度言おう。貴女はいつも美しく、素敵な女神のような人だ。」
「あ、ありがとうございます?」
アイヴィーは、改めて言われたヴィルベルトの賛辞の言葉に嬉しさと恥ずかしさが、かっーと込み上げて、頬と耳に熱を感じ、それを覚まそうと冷えている自身の手を頬に当て、熱を逃がそうと努力した。
そんなアイヴィーの様子を見ていた、ヴィルベルトは、自嘲気味に優しく微笑むと、言葉を続ける。
「だから、もう少し、自覚してください。」
「何がでしょう?」
キョトンと、首を少しかしげて、目線を上にあげるアイヴィー。
その顔を見たヴィルベルトは、感情を消した笑みをして、アイヴィーにいった。
「貴女が人目を引きすぎる事に。」
「え?」
「貴女は、自覚が無さすぎる。そんなに体のラインを出したり、肌を露出していては、幾ら、私の婚約者だといっても、良からぬ事を考える馬鹿を山のように寄せ付けると言う事を、少しは理解してください。」
「は、はぁ・・・。」
アイヴィーの何と間抜けな返答だろうか。
「だから、今後、その様な意匠のドレスは、プライベートな時だけにしてください。」
どさくさに紛れ、己の独占欲を顕にした言葉を入れ込んだヴィルベルトは、笑みを崩さずに、そう続けた。
「は?」
「いいですか?」
「あ、はい・・・。」
「分かってくださって良かったです。」
そういうと、ヴィルベルトは、教師が、何も知らない子供に、物を教えた後で、子供が理解を示した後のように、嬉しそうに、そして、少し偉そうに答えたのだった。
(何だったのだろう・・・・この、怒涛の流れは。
私は、リアルタイムに弱いと、同時並行で瞬時に対応するのは苦手だと、言っているではないですか!!
な、なんか、私の思考のおよびもつかないところで、凄い事になっていた気が、します。
うん、反省と今後の対策は後にして、とりあえず、魔王様は何が仰っしゃりたかったのか?というところ・・・・。
ずっと機嫌が悪かったのは、本当で、怒っていたのも本当。
それは、私のせい。
理由は、馬とか鹿と名前のつく何も考えていない男を寄せ付けない為。うん。これは、わかった。
つまり、婚約者という仮りの役割以外にも余計な仕事させられたせいで怒っていた、という事で有っていますか?魔王様ー!)
「あのー・・・」
「まだ、何か?」
「つまり、ヴィルベルト様は、私のせいで、しなくても良い苦労をなさったと言う事でしょうか?」
相変わらず、抱き合った態勢のまま、おずおずと伺うように上目遣いでアイヴィーがヴィルベルトに尋ねた。
「・・・違います。これは、婚約者としての責任の範囲ですから、余計な苦労ではないので、気付かいは必要ありません。」
ニッコリと再び、感情を消した笑みを浮かべて、ヴィルベルトは更に言葉を続ける。
「前からもしやと思っていましたが、アヴィー、貴女は、その手の思考に不自由無さっているのですか?」
「その手とは、どの手の事でしょう?」
(んー?!!
これまた、魔王様は、相変わらず、面妖な発言をしてくれますね。
何なんでしょうか??どの手?
言っておきますけどね、私は、千手観音みたいに手が沢山有って、慈愛とか救済とかに満ちて常に人を救おうとするそんな立派な人間等ではありませんからね!
ええ、どちらかというと、俗物的だし、淑女感があまりにも遠のいて、涙目になる日々ですよ!
だから、そんな女の思考が不自由してない訳がない!自分の事なのて言い切りましたけど!
ええ、分かっておりますよ、私は、『the残念女子』という事を!
薄々感づいてはいましたけど。
もしかしたら、女子という言葉すら憚れるかもしれないとか、考えたく無いですけど!!!
何だろう。この、思いもしてなかったところからグサグサと氷の矢が刺さるのは。
なんだか、とっても悲しくなってきました。
・・・魔王様のばかぁ!!
何がこの手だ!そんなの知るかぁあ!!
私だって、私だって、これでも一生懸命生きてっ・・・生きてっ・・・一人でそれなり楽しく生きているのですからねぇっ!!
ぐす・・・だ、だから、その手がわからなくても、悲しくなんて無いですよっ!!!)
どの手などと言う明後日な方向に迷走しているアイヴィーは、明後日なところで、一人勝手に悲しくなり、目元が潤みながら、ヴィルベルトを睨みつけた。
「・・・今の状態に何も感じませんか?」
「・・・どの状態にですか?」
(ええ、私の今の状態、それはブロークンハート。いや、ハートブレイクです。いえ、血だらけの傷ついた心??なんか、こう・・いい感じの言葉がっ!!!出てこない!!!こう、『氷の弓に射抜かれし・・・』みたいなそーゆー感じ!!!)
何処までもアイヴィークオリティである。
そして、ヴィルベルトは、アイヴィーの発言に笑顔のまま、固まった。
完全にフリーズした。ヴィルベルトの空気だけ、完全に止まっていた。
そして、止まった息を吐き出して、止まった時間を再び動き出させるように、深い溜め息をはくと、言葉を続けた。
「そこまで無知だと流石に、誘っていると思っても良いのですよね?」
「・・・何処へですか?」
「貴女は、馬鹿なのですか?」
「どうしてですか?」
「貴女は、女性では無いのですか?」
「な!!失礼ですね、女性ですよ!見てくださいまし!私の胸に付いている、この双丘を!」
そう言って、アイヴィーは、精いっぱい胸を突き出した。
上げて寄せてすったもんだすれば、ウェンディの山のような胸を作り出せるアイヴィーのそこそこ脂肪のついた胸は、アイヴィーが突き出す事で、更に胸がヴィルベルトに押しつけられる。
それを笑顔のまま、言葉もなく、色々な事に耐えてるヴィルベルト。
「どうです?私にもちゃんとそれなりに胸くらい有るのです!!」
「・・・貴女が阿呆か、私に魅力が無いのか、どちらなのか、教えてください。」
「うーん?」
(なに?どーゆー事?私の女子力が低いって話じゃ無かったかな?
あれ?いつの間に私が、アホ認定されようとしてるの?
魔王様、魔王様との戦闘で確かに私の脳は脳殺されて、腐りかけてますけど、流石に阿呆は無いのではないでしょうか?
私が阿呆なら、魔王様は、腹黒眼鏡だっ!そう、腹黒・・・眼鏡・・・何故だろう、全く悪口に聞こえないのは。
そうですか、私の脳が腐りかけてるせいですか。そうですか。
腹黒眼鏡は、ドS設定で、グイグイな魔王様にピッタリなのに、何故だろう。エロさが漂うほめ言葉に聞こえるのは・・・。
こ、これが、顔面偏差値が高い魔王のお力ですかぁ!!!)
相変わらず、アイヴィーのその手の方向は音痴である。
眉を寄せ、本気で考え始めるアイヴィー。
抱き合っている二人の甘い空気は、何処へいったのか。
甘い空気、さよなら。こんにちは、健全で阿呆な空気。とでも、言いたい空気感が二人の間に流れ込むと、ヴィルベルトは、諦めたかのように、言葉を発した。
「わかりました。貴女が阿呆で、私に魅力が足りないという事が。」
「・・・・」
「聞いてますか?アヴィー??」
「・・・・」
ヴィルベルトの声掛けも虚しく、アイヴィーは、自身の曲げた人差し指を顎に当てて、考え込んで、全く微動だにしない。
その様を見た、ヴィルベルトは、仕方のない人だ、と呟いて、ため息をついた後、再び、アイヴィーに声を掛けた。
「アヴィー??聞こえていたら、手を上げてください。でないと、ここで意地悪しますよ?」
「・・・・」
ヴィルベルトの言葉に一切反応を見せない、アイヴィー。ヴィルベルトはため息をつくと、アイヴィーの頬に優しく触れ、顔を近づけて、頬を優しくつねった。
「なんてひょうか。」
「貴女に意地悪をしました。」
つねられた頬のめま、アイヴィーは、ヴィルベルトと目線が合って、答えると、笑顔のヴィルベルトが、楽しげに答えた。
「魔お・・・・ヴィルベルト様は、さっきから、どうなさりたいのですか?!」
眉を寄せて、怒った顔を作ったアイヴィーは、そう言い、ヴィルベルトは、それを受けて、まるで子供でもあしらうかのように、笑みを作って答えた。
「私が、どうしたいかという事は、その阿呆な頭で少し考えて下さい。」
「何で今教えて下さらないのですか?」
「貴女があまりにも困った人なので、宿題にする事にしました。」
「なっ!「その、類稀なる素晴らしい頭で導き出される、素晴らしい回答を是非とも期待していますね。」」
そう言って、ヴィルベルトは、アイヴィーの言葉を遮ると、やっとアイヴィーと抱き合うのをやめた。
そして、アイヴィーの手を掴み、再びホールに戻り、アイヴィーと二回目のダンスを踊ったのだった。
ヴィルベルトから宿題を出されたアイヴィーに、ホールに戻ってから、宿題を考える余裕が無いのは、当然で。
ホールに戻ってから、アイヴィーは、ずっと不満顔で、ヴィルベルトとダンスを踊ったり、話しかけられたりと、パーティー主催者の一人として、対応していた。
ついでに、アイヴィーが戻ったばかりの時のその不満顔があまりにも、無骨漂っていたので、ヴィルベルトが、当初懸念していた、馬や鹿の名前がついた男が、後から群がる事は無かった。
それが期せずして、ヴィルベルト自身を嬉しくさせたのは、ヴィルベルト本人しか知らない出来事だった。
魔王様、アイヴィーに対して恋心自覚してきました。
アイヴィーが、ここまでされて、何も恋愛感情を抱かないのには、理由があります。
ストーリー上ネタバレなので、これ以上、説明出来ませんが、一応、阿呆なのではありません。と、補足しておきます。




