お披露目パーティーのその前に
文字数多くないですが、投稿します。
本日、お披露目パーティーでございます。
お披露目パーティーという事で、午後の早い時間から夜にかけての長丁場でございます。
だいたい・・・8時間ほどですね。ぶっ通しでございます。
頑張れ私!)
そして、アイヴィーは、湯浴みをした後、公爵夫人より強制的にいただいたジャスミンの香りのボディオイルを全身に塗り、ボディパウダーで、お肌のツヤをコントロールした後、ストラップのない触り心地の良い真麻布のキャミソールを着て、同じく真麻布のショーツをはいた。
そこまでして、ようやく手にベルを持って鳴らすと、メイド達が現れた。現れたメイド達に向かい、「後は宜しくお願いします。」とアイヴィーは言い、ニコリと微笑んだ。
部屋に入ってきたメイド達は、早速、手に持ったコルセットをアイヴィーに巻き付け、細い腰と綺麗なお椀の形をした胸をつくった。
そして、チュール生地出できた、ボリュームがある丈の長いパニエをはかせ、仕上げに昨日届いたばかりのドレスを着させた。
ドレスは、肌の色に近い薄く落ち着いた色合いをした、とき色のAラインのドレスである。
また、そのドレスの装飾で最も目を引くのが、くび、肩、胸元にかけて、細かな草花が編まれているレースである。
レースと一言でいっても、様々で、アイヴィーが今身につけているのは、チュールレースである。
透け感の強いチュールを幾重か重ね、その上に針で編まれた蔓性植物であるホワイトジャスミンの花と葉をベースにした美的造形を考慮された図形が、光沢のあるアイボリーの糸で、綺麗に編まれたレースだった。
その透け感のある繊細な生地で、アイヴィーの細く長く赤みのある明るい肌を完全に隠す事無く覆っている。
その繊細なレースが、美しいハイネックのAラインドレスは、チュール生地をふんだんに使ったスカートで、動くびに、たんぽぽの綿毛が舞う様にふわりとスカートが揺れる。
その美しいドレスを纏ったアイヴィーは、アイヴィーの怜悧な目ともと相まって、浄げで優雅な雰囲気を作り出していた。
ドレスを着終わると、次は、化粧とヘアアレンジである。
アイヴィーの濃淡が多彩な綺麗なアッシュブロンドをパーマをあてて、クネらせ、ハーフアップスタイルをつくる。
そして、化粧。すっかり定番になった、ウェンディと真逆の印象になる化粧を今日も施され、極めつけに、足元と腰に爽やかで甘い香りの香水を吹きかけられた。
仕上げに耳元にダイアモンドの石がついているだけのシンプルで品のあるピアスをつけると、まるで14歳とは思えないその見てくれの美女が出来上がっていた。
こ、こ、これは!!!なんという事でしょう!?劇的なビフォーアフターの匠もビックリな、ビフォーアフターですよ!!
図らずしも、魔王様のロリコン説の浮上は防げそうな程には、大人っぽくなってます!!すごーい!ドレスカワイー!
こんな繊細なドレス、正直、公爵家と婚約しなかったら、着れなかったと思うと、ラッキーですねー!)
マジマジと、自分の姿を鏡を通して、観察し、納得したところで、アイヴィーは、ドレスの色と合わせた、手の肘まで覆う長さの柔らかく光沢のあるロンググローブと白いレース地の扇を手に持って、馬車に乗り込み、公爵家へ向かった。
到着すると、通いなれたサンルームに通され、一人、紅茶を飲みながら、ヴィルベルトが現れるのを待った。
今日のお菓子は何かなー?あ、なんだか、一人で魔王様の登場を待っているとか、姉上様に成り代わって、お見合いをした時以来ですねー。懐かしい。あれから、2ヶ月経っていないなんて、驚きですよね!
今日は暑いですねー!あっという間に初夏の香りです!レース生地のおかげでおもっていたほど暑くないから良かったです。
脇汗とか恥ずかしいですからね!一生懸命涼んでおきますよー!
ん!今日のお菓子は、レモンケーキでしたか!
うぅーん!!美味しい!バターの香りに乗ったレモンの爽やかで苦味のある香りと味!しつこくないように、レモンの果汁と少し削った皮で出来たアイシングがなんともたまりません!
初夏にピッタリなお菓子!食べやすい!あっという間に2個目にも手が伸びてしまう!
これは、今日出されるお菓子に期待が持てそうな一品てすねー!早く、始まらないかなぁ!楽しみだなぁ!!
と、能天気にお菓子への想いを募らせるアイヴィーの元に、少し遅れて、ヴィルベルトがやってきた。
ヴィルベルトは、茶色がかったアッシュブロンドの柔らかな髪を丁寧に撫で付け、木蘭色の燕尾服に少し色の濃い同系色のベストを纏い、臙脂色のアスコットタイをネクタイのように細く結んで、ピンで止め、細見のスラックスと茶色のロングノーズの靴を履いた楽礼装姿であった。
思わず、普段見慣れない礼装姿のヴィルベルトを上から下までじっと眺めるアイヴィー。
「お待たせして申し訳ない。今日の貴女は、一段と輝いて美しいですね。こんなに美しい貴女を待たせるなんて、私はなんと愚かな人間なのでしょうか。どうか、その女神のような美しさを持つ貴女の慈愛で、この愚かな行いをした私を許してはくれないだろうか?」
な、なに?どうした?魔王様?そのいきなり演技ががった発言は!どーした、魔王様?いつもの嫌味な発言の方がまだマシっていうほど気持ち悪いですよ?
どこぞの舞台から飛び降りてきた王子様か、何かが、魔王と中身が入れ替わったのでしょうか?
見た目とは、バッチリはまってますけど、中身とは完全にミスマッチですよ。
魔王らしさの無い魔王様なんて、魔王ではない)
ヴィルベルトの普段と違う態度に驚いて、目を見張っていると、ヴィルベルトの後ろから、濃い落ち着いた色合いの水色のドレスを身にまとった女性がやってきた。
「ごきげんよう。アイヴィーさん。お久しぶりね。この子ったら、いつも時間にルーズで、気が効かなくてごめんなさいね?」
「ご、ごきげんよう。公爵夫人。そんな、気が効かないなんて!ヴィルベルト様はいつも私に良くして下さいます。」
「あら、可愛い事を言うのね。流石、ヴィルベルトを籠絡した女性ね。見た目以外にもきちんと男性のお心を捉えておいでなのね?」
そう言った公爵夫人は、手元にもった扇を少し開いた状態で口元を隠して、少し眉を寄せて、冷めた視線をアイヴィーに向けた。
こ、こ、公爵夫人とご一緒だったのですか!!
だから、魔王様が、魔王らしくなかったのですね!!
しかし、公爵夫人、今日は一段と怖いです!笑顔が、圧が!
なんで、私のフォローのつもりの発言が、『このメギツネめ!』みたいな扱いになるのですか!
そして、いつも嫁扱いをして、姑的なテンプレートないびりをなさってくるのは何故なのでしょうか。
私達はあくまで偽装婚約者なのですよ?だから、それっぽく見えればオッケー!っていう、そういう軽い感じで捉えて貰えませんか?お願いしますよ!!
ついでに、見た目と中身を公爵家に恥じないようにしろと仰ったのは、公爵夫人なので、この場合の正確は何だったのか、是非とも教えて下さい!!
「母上、そうやって、アヴィーをからかわないでください。」
「あら、ごめんあそばせ?そんなつもりは無いのよ?ただ、あんまりにも綺麗なお嬢さんでしょう?ヴィルベルトの話が事実だとしても、そこに幾ばくかの計謀を巡らせる事なんて簡単な事でしょう?」
そうヴィルベルトが止の言葉を言い、目を細めて疑わしげな視線を自身の母におくると、公爵夫人は、楽しそうに口元を歪めて答えたのだった。
その言葉を受けたヴィルベルトが、溜め息がちに肩を落として、言葉を続けた。
「・・・母上、止めて下さい。」
「あら、どうしてかしら?」
「あまりにも言葉が過ぎます。」
「そうかしら?そんな事を言うなんて、まさか本当に何か隠している事があるのかしら、ねぇ―――?」
「何も、ありませんよ。ねぇ、アヴィーの方からも言ってください。」
「あ、はい。そうです。公爵夫「お義母様、でしょ?アイヴィーさん。」」
「お義母様・・・私は何も計略など巡らせておりません。お義母様の勘違いですわ。」
「アヴィーもこう言っているのです。いい加減に――・・・母上のそれは、一体、何処の入れ知恵ですか?」
途中で言葉を切り、片眉を上げたヴィルベルトは、言葉を続けて、公爵夫人に問いかけた。
「あら。もう、分かってしまったの?入れ知恵というほどではないけれど、家の愚息にお嫁さんが嫁いできてくれる、とお話したら、お嫁さんを迎えるに当たって読んだほうが良いというオススメの本に書いてあったのよ。義理の母が、お嫁さんにキツイく当たる事で二人の中が進展するって。私、お嫁さんなんて出来るのが初めてでしょう?しかも、こんなに可愛らしくて素敵な。だから、勉強して、義理の母として恥ずかしくないように、きちんと役割をこなしているのよ?」
「母上、貴女何を勘違いしたら、そうなるのですか。」
「まぁ!勘違いなんてしていませんよ。母はきちんと分かっております。この婚約が、偽装を口実にヴィルベルト、貴方の理想の女性との婚約だという事を。だからこうして、母「と、いうわけだから。アヴィー、さっき、母上が言った事は、忘れてくれて良いからね。」」
公爵夫人の言葉をさえぎり、ついでと言わんばかりに、公爵夫人の前に立ち、アイヴィーからその姿も遮ったヴィルベルトは、アイヴィーに笑顔を向けてそういった。
今、吹き出しマークがあったら、完全に上に乗っていたと思う。
他人の親子の会話ってなんでこんなに面白いのだろう??
ツッコミどころ多すぎて、笑いこらえるのに必死でした。
でも、私、必死に堪えましたよ!口がピクピクしてるけど鼻から笑いが漏れそうだったけど!堪えましたよ!!
見ていましたか!モーリスさん!
この、笑ってはいけない選手権でなんとか笑わずにいれましたよ!
親子の会話が、コントだと思い込んでいるアイヴィーは、ヴィルベルトが言葉を被せてまで、無理矢理終わらせた会話の意味を理解していなかった。




