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正式に婚約いたしましょう?

タイトルにやっと沿いました。

 姉上様の暴走はとどまるところを知りませんでした。


 こんにちは、アイヴィー・オルウェンです。


 あの後結局、私が次期公爵様に恋しているという勘違いは、その日のうちに屋敷中の人間に周知されました。

 ティーパーティにいく準備を手伝ってくれたメイドには、『お嬢様、私たち勘違いしておりました。申し訳ございません。』と、謎の謝罪をされてしまいました。

 うん、だから、何を勘違いしたのか。

 そもそも、その勘違いが、勘違いっていう事実を誰も知らないという恐ろしさ!!!

 流石、姉上様、見事に幻影の魔法がかかっていますよー!


 そして、お母様は、夕食のときに、『ウェンディちゃんが、きっとアイヴィーちゃんの恋の手助けをしてくれますからね!!』と、これまた、はた迷惑きわまりない事になりそうな発言をしてくださいました。

 フラグどころか、爆弾投下されそうなのですが。その恋の手助けとやらは。

 手助けどころか、畑を作るのに、雑草を抜くの面倒だから、燃やしちゃおうか?といって、火炎放射を放つようなお方に、手助けとかできませんよ?

 お母様、そこ、正確に理解して下さいまし???



◇◆◇◆◇



 そして、今、再び、私はティーパーティと同じような化粧をして別人になり、今回の服装は、全体的にレースで編まれているシンプルなグレーのドレスワンピースを着用して(持ちアイテムで一番姉上様から遠い服装がこれしかなかったのです)姉上様と一緒に次期公爵様と対面しております。


「先だっては、大切な妹君をパーティに参加させてくれてありがとう。それで、早速で申し訳ないのだけど、件の話を正式に申し込みたいと思っているのだが、了承願えるかな?」

「件の話――というのは一体何のことでしょうか?」

「お、お姉様!!ほ、ほら、私言ったじゃないですか!あれの事ですよ!!アレ!!」


 多分、魔王様は、婚約を受け入れて欲しいって話だと思うけど、その事をあえて、姉上様に伝えないで置いたのです。

 ここで、誤魔化さねば、私が魔王様に恋してるという勘違いをしている姉上様に何をされるか、わかりません!

 ただでさえ、強力な幻影が屋敷全体にかけられてるっていうのに!


「・・・それでしたら、こちらは、ご迷惑おかけするだけになってしまうかもしれませんから、お断りしようかと、両親とも話しておりましたの。」

「こちらが、お願いしているのに、迷惑になるなんて事はありませんよ。それとも何か他にも懸念していることでもあるのですか?」

「そう仰っていただくことは大変ありがたいのですが、そうてすね。やはり、過去の事もございますし、いくら、次期公爵様が協力してくださると言っても、妹の事ですから――。」

 そういって、ニッコリと微笑む姉上様。


 多分、姉上様は、特許出願についての話だと思っているはず!だって、姉上様は、それしか、知らないはずだから!ここで、あの時みたいに、情報捜査局もビックリな情報を駆使しないで下さいね!!お願いしますよ!


「―――あぁ。失礼、妹君の特許出願に関するお話のほうですか。」

「えぇ、そのお話をしにいらっしゃたのではなくって?」


 キョトン。と、驚いた顔をした姉上様。うん、我が姉と知ってるけど、その顔可愛いですよ。

 これが、肉食系女子の手練手管ですか。そうですか。とても、私には使いこなせそうにありません。

 ニセモノは、ホンモノには、敵わないって事ですか。そうですか。・・・そうですね。


「ははは、相変わらず、貴女はつれないな。」

「まぁ、そんな事ありませんわよ?」


 姉上様は、手に持っていた扇をひろげ、口元を隠し扇いで、チラリと、私の方に視線を投げてくる。


 な、何ですか、その、責めるような視線は。私は、使命を全うしようとしていただけなのです!

 姉上様の評判に傷をつけないよう、最大限努力させて貰っていましたよ?魔法だって、メテオを落としたのが、一番攻撃力高い技で、後は、割と防戦一方で・・・

 うう、思い出して、悲しくなってきた。私、本当にダメダメじゃん。

 姉上様の責める視線が、ダメダメな私に対する、至って全うな対応な気がしてきましたよ。

 とはいえ、まずは、話題回避をしなくては!

 と、とりあえず、婚約話から一度距離を置きましょう?ダメダメな私でも、話題をのらりくらりと回避させる事くらいは、出来るはず!

 それで、特許出願の話だけして、今日は帰って貰えたら、最高です!

 そう、今、私の今日の目標が決まりました!さぁ、姉上様、気付いてください!今こそ、情報捜査局もビックリな推理力を発揮するところですよ!

 ごくりと生唾を飲み込み、ウェンディに視線で訴えつつ、声を発したアイヴィー。


「お、お姉様、折角、次期公爵様がこう仰ってくださるのですから、特許出願の件、了承してもらえませんか?お姉様が納得してくだされば、お父様もお母様も協力してくださると思いますし!!」

「そうね――でしたら、次期公爵様、(わたくし)お願いがございますの。聞いていただけます?」

 ウェンディは、アイヴィーから視線を反らし、ヴィルベルトの方を向いて言った。


 あ、姉上様!私が言いたい事が伝わったのですね?!流石です!

 しっかし、魔王様相手になんてお強請りなんて!!なんて勇ましさ!!さすが、肉食系女子は手練手管の使いどころというものを分かっていらっしゃるのですね!私、姉上様が頼りになっている今に、心のそこから感動しています!!

 そうそう、今日は、特許出願の話をメインに添えましょう!その為に幾ら魔王様にお強請りしちゃっても、無理難題ふっかけても、特許出願の話の内ならば、私は、大丈夫です!!

 さあ、ここで、積年の敗北の敵討ちをしちゃって下さい、姉上様ー!


「えぇ、貴女の願いで、私にできることなら、なんでも。」

「まぁ、嬉しいことをおっしゃってくださるのね。私の妹――、アイヴィーをどう思いますか?」

「どう、とは?」

「お、お姉様!????」


 な、なんだろう、この不穏な話の流れは・・・。一度、話を止め・・・られない!!!どうしよう!姉上様の目が猛禽類のその目に見えますよ!落ちついて姉上様ー!!!

 さっき、敗北の敵討ちって言いましたけど、私も魔王様と一緒に、巻き添えにしなくて良いのですからね???だ、大丈夫ですよね?姉上様??


「特許出願を研究者でもない貴族の、しかも男爵家の娘がすることのリスクについて、次期公爵様は、ご存知ですわよね?」

「まぁ、想像の範囲では。」

「ですから、特許出願をなさるというのなら、これから先、妹の事、次期公爵様の大切な人として、守ってくださいませんこと?」

「それは――貴女の代わりに妹君と婚約しろと仰りたいのかな?」

「お、お姉様!!!何を!!!」

 姉上様の発言を聞いた魔王様は、頭を抱えて頭をたれ、私はすごいいきおいで、姉上様のほうに上半身をひねって、目を思いっきり広げて、言った。しかし、視界に写る姉上様は、ニコニコと、機嫌のよさそうな顔をして、優雅に紅茶をたのしんでいらっしゃる。


 な、な、何という爆弾発言!特許出願にかこつけて、一番回避したい話題投下してくるとか、姉上様、貴女、何考えてるのですか!巻き添えどころか、私と魔王様が、心中する勢いじゃないですか!!何様なんですか!一体、どんな権限があって、そういう事為さるのですか!


 うん、知ってました。姉上様でしたね。天然肉食系女子でしたね。恋愛至上主義の暴走特急でしたね。


 ・・・何ということか!!!幻影の魔法どころか、草原を焼き野原にする天災がここに降臨致しました!!


 皆様、私はこの先一体、どうしたら良いのでしょうか・・・。


「アイヴィーは少し、黙っていなさい。不敬なことを申してるのは、自覚しております。しかし、先に妹に特許出願のお話をなさったのは、次期公爵様のご提案だったとか。いかがでございますか?年は少し離れていますが、貴族ですもの、少し年の離れた令嬢と婚約することに眉を潜める方なんて狭量な方いらっしゃらないと思いますわ。」


 笑顔の姉上様を目の前に、深くため息をついた魔王は、肩を落として、言った。

「はぁ・・・どうしてそうなるんだ。それは、ウェンディ嬢が、私の気持ちにこたえる気は無い、ということかな?」

 ヴィルベルトは、こめかみに指をあてて、頭痛をおさえる動作をしながら言った。


「さぁ、どうかしら?次期公爵様は、妹を助けてくださるのではなかったのでしょうか?」

 魔王様にそう答えた姉上様は、チラリと、こちらを見てくる。なんですか、その口パク!

 ま?ま・・任せろ?なにそれ!

 危ない!姉上様に任せたら、私、魔王と婚約させられてしまうではないですか!!

 どうしよう!今、姉上様をとめなければ、私に最後通告がやってきてしまいます!

 今、目の前で魔王様に瀕死の重傷を与えた姉上様が、ここで、更に、眼前を焼き野原にする火炎放射器を構えた姿が見えてしまいました!!

 今こそ、再び立ち上がって、止めなければ、一体誰がこの天災を止められるというのでしょう?!ここは、妹である、私が止めるしかありませんよね。

 ・・・うん。どうしよう!こんなときに限って、全く何も思いつかない!

 ああ!どうか、とうか、焼き野原だけは、止めて下さい、お姉様ー!


「お姉様!それ以上はおやめください!!いくらなんでも非常識ですよ!!」

「アイヴィー?どうしたの?貴女、特許出願したいのではないの?」

「そ、そうですけど、それと婚約は関係無いでは有りませんか!」


 そ、そうだよ!姉上様!貴女ちょっと暴走しすぎですよ!ドキドキワクワクの恋愛パニックとか、要りませんからね?!私が求めるのは、いつだって、平穏、平和!!戦争反対!!ドキドキ反対!!最後通告反対!!焼き野原反対!


「あら?貴女、今の話聞いてなかったの?」

「聞いていましたけど・・・それに、次期公爵様のお気持ちに対してあまりにも失礼ですよ!」

「あら?そうかしら?次期公爵様は、恋愛がしたいのではなくて、婚約が為さりたいのでしょう?」

 そういうと、姉上様は、魔王様の方に顔を向けた。


「いや、まぁ、婚約はしたいが、相手が誰でもというわけでは・・・」

「あら、妹では不十分ですか?私よりも賢く、将来有望ですよ?何より身持ちの硬さは折り紙つきで保証いたしますわ。それに、まだ、学生の身ですから、どんな熟れる果実になろうとも確実に手にいれられますわよ?私の妹というのもありますが、今のアイヴィーを見て、将来へ期待が持てませんか?青い果実を育てる事も殿方には一興だと、お想いにはならなくて?それに、ご自分の好みの女性を探すより、女性を好みに育てる方が早くて楽ですわよ?他に次期公爵様は、女性に対して、何をお求めになっていらっしゃるの?」

「・・・・・。」


 あまりの言い分と口を挟む隙もない姉上様の発言に、私も魔王様も空いた口が塞がらない。


 この人、今、妹に対して色々言ってはいけない事いいましたよね?しかも、魔王様に、光源氏になれと。そう言いましたよね。魔王様色に染めろと。しかも、自分好みの女性を探すより楽だと。そう、仰られましたよね?

 な、な、なんつーことを!何という事を!!!!

 破廉恥という言葉を知らないのですか、姉上様!!!

 破廉恥!そう、破廉恥ですよ!貴女!!男の人になんてことを言うのですか!!しかも、未婚の女の人がそんな事言ってはいけませんよぉぉぉぉ!!!


「まあ、後、私に有って、今の妹に無いものといえば―――」

 そういって、姉上様は、私の胸元を視線で指して、再び、魔王様の顔に視線を戻した。


 なんですか、その物言わぬ視線は!破廉恥通り越して今度は、悪評でも流そうってことですか!!

 ええ!確かに姉上様みたいな、立派なお山はありませんよ!知ってますよ!なんですか、それ!どんな嫌がらせですか!!!

 それに、私は、まだ、発展途上なのです!これからなのです!今、将来に備えて準備中なのです!

 大体、魔王様だって、そんな、胸一つで人間を判断してるわけないじゃないですか!男の人がすべて居乳好きと決まってるわけではありませんからね?

 ・・・そうですよね?魔王様!?


 涙目になりながら、アイヴィーは、ヴィルベルトの方に目をやると、赤くなったヴィルベルトが、狼狽えながらいった。


「な、ち、違う!私は、決して、その様な事は考えてない!」

「では、問題ありませんわね?」

 ニコリと微笑むウェンディ。


「あ、ああ、問題ない!」

 動揺のあまり、コクコクと、頭を上下させ、大仰に頷いてみせる、ヴィルベルト。


「言質とりましたわよ?」

 ウェンディの発言に、ヴィルベルトは、我を取り戻し、待ったをかけようと、顔をウェンディに向けた。


「あ、いや、今のは!!!」

「男に二言は御座いませんでしょう?」

 楽しそうに歪めた笑顔で、ウェンディは、トドメを指した。ガックシと肩を落としたヴィルベルトは、諦めたかのように再び頷くのみだった。


「・・・・分かった、アイヴィー嬢と特許出願中の間、婚約しよう。」

「あら、駄目ですわよ!特許出願中だけなんて!」

 ため息をつき、ヴィルベルトは、ウェンディの提案に是と答えた。しかし、ウェンディは、手にしていた扇をパシンと閉じて、ヴィルベルトに言ったのだった。


「な、貴女は、一体、私にどうして欲しいのだ!」

「私、妹に幸せになってもらいたいだけでしてよ?婚約破棄なんてされたら、その先誰も貰い手が無くなってしまいますわ!」


それを聞いたヴィルベルトは、はぁ、とため息をついた後、ウェンディに返答した。

「・・・その事なら、心配しなくても大丈夫だ。」

「あら、どうしてですか?」

「ここだけの話と言う事で、言わせてもらうが、おそらく、近々、私は、隣国に駐在大使として赴く事になっている。隣国に何年行くか分からんから、お祖父様が無理矢理婚約を急いでいるのだ。駐在大使として泊をつけろとか、早くひ孫がみたいだとか、何とか言って。」

「あら、そうでしたの。」

「だから、婚約破棄したとしても、納得される理由だろう。」

「それなら、今は、納得しますわ。」

「往生際の悪い女だな、一体なにが、不服なのか。」

「ふふふ。それは、ご存知でしょう?」


 姉上様は、不敵に笑って、紅茶を飲んだ。


 うん。一切、会話に入るすきが無かったけど、私、結局、魔王様と婚約する事なってるよね?!なんで?!どうして?!


 もう既に、婚約破棄を受付たい・・・!!

ご覧になっている皆様、ありがとうございます。また、ブックマークや評価してくださる皆様にも感謝もうしあげます。


やっと、やっと、タイトルに沿えました!!!

ここまで、たどり着きたくて、一日何度も投稿する形になり、大変ご迷惑おかけしました。

明日から、また、一日一話投稿にもどる予定です。


何かと至らない点が多々あるとおもますが、今後とも暖かく見守っていただけると幸いです。これからも、よろしくお願いします。


ごま豆腐

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