迂闊とはこのことです
本日二回目の投稿です。ティーパーティ直後です。
ごきげんよう。アイヴィー・オルウェンです。
何で、挨拶がいつもと違うかって?それは、帰宅早々に、ティーパーティーで約束した例の特許出願に関する報告をお父様にしていた際、見事に姉上様に色々ばれて、現在、締め上げられているからであります。
まず、姉上様に締め上げられるまでの流れをお話します。
帰宅早々、着替えた私は、サンルームにて、ローテーブルを囲んで私と向かい合わせの状態で、笑顔のお父様はいった。
「それで、ティーパーティは、無事何も無くすんだかな?」
「はい。お父様、当初懸念していた件も、次期公爵にばれることも無く無事に済みました。それで、そのこととは別に報告があります。」
「別の報告ってどんな話だい?」
お父様は、片方の眉をあげ、てたずねてきた。
「実は、パーティーでお話していた際、次期公爵様から、特許出願に関してお力をかしていただける事になりました!!」
「と、特許??レベニスク次期公爵様が?」
「そうです、お父様!!これは、吉報ですよ!お姉様のお見合いでまさかの棚ぼたで御座いますよ!」
「だ、だが「アイヴィー、それは、どういう事ですの?」
お父様の言葉に見事に被った相手を確認すべく、ゆっくりと横に振り向くとそこには、笑顔の姉上様がいらっしゃいました。
タイミング!タイミングが!相変わらず、姉上様は、何故こんなにもタイミングが良すぎるのか!
「お、お姉様?!?!?!」
「お父様、只今、帰りました。」
そういうと、姉上様は、膝をおって、淑女の礼をとり、お父様が何かを言う前に、有無を言わせないままお父様の隣に腰をおろした。
「あ、あぁ、おかえり。」
「それで、どうして、レベニスク次期公爵様がアイヴィーの特許に関して協力してくださるのかしら?」
「そ、それは、なんというか・・・。」
目線を泳がせ、挙動不審なアイヴィー。
待って、姉上様!待ってね?うん。私、今、あまりの衝撃に、頭がついていかないのでございます。姉上様、一体いつから、お話聞いていたのですか?うん、そこ。そこ分からないとね。こっちも八方塞がりというか・・・。
「はっきり仰りなさいまし?まさか、ここで、特許出願しようと考えている人が、嘘を重ねようなんて浅慮な事、なさいませんわよね?」
笑顔のまま、しかし、アイヴィーの視界に入ったのは、拳に力が入るウェンディ。
うん、私の発言はしっかりお耳に届いていたみたいですね。なんで、嘘を重ねるなって言うのですか。棚ぼた発言は、聞いていたのですか。そうですか。
「うっ・・・・・・・・」
蛇に睨まれた蛙とは、私の事です。
隊長!体が動かないであります!!メデューサの石化の呪いが発動した模様であります!
そして、再び、アイヴィーは、ウェンディに視線を移すと、ウェンディは、こめかみが血管の形に盛り上がり、ビクついているのが確認できた。
・・・・嘘です!メデューサとか言ってごめんなざぁぃ!ごめんなざぁぃ!!!私は悪くないのです!そう、お父様とお母様が、姉上様を心配するあまり、暴走して、私に全部丸投げしたのが全ての原因なのです!お父様、私を助けて下さい!
そう思って、お父様に視線を投げると、ため息をついてお父様が言った。
「・・・・仕方が無い、嘘もここまでだね。ウェンディ、私が話をするよ。」
そう言って、お父様が、計画を立てた時から計画倒れしていた、この無謀な計画について説明してくれた。
説明を聞きながら、思わず、色々思ってしまうのは、愛嬌という事で。うん、だって、お父様も力技って分かってて、娘にさせようとしたのか!と、今更ながらツッコミたい。
全部が全部ご都合主義とはいかない様である。
父男爵の説明を聞いた、ウェンディが、ため息をつきながら、紅茶を一口飲んで、声を発した。
「お父様の説明は、わかりました。ですから、今回のお父様とお母様の愛故に暴走してしまった事は、仕方有りません。愛故に暴走する事は私にも経験がありますし。それは、許しますわ。それに、切っ掛けを作ったのは、私の様ですしね。・・・でも、アイヴィー、貴女、どうしてソレが、特許出願に話になっているのかしら?」
ヒュオオオオオ。
ブリザード!姉上様のブリザードが、肌に痛いで御座います。絶対零度とかいう荒業繰り出さないでほしいよ!!!この場の雰囲気すらも冷え冷えだよ!許すって言ったのに、なんで、怒ってるの?姉上様!!愛ゆえに暴走するって自覚あるなら、そのブリザードはやめてほしい!!そんな冷たい愛私はいらないですよ!!
「特許出願の件は、元々、レベニスク次期公爵様が、仰られた事でして。」
「あら、次期公爵様御本人が?」
「はい。だから、私が言い出したしたわけじゃないのです。」
そうなのです。元々、婚約への助力として特許出願のお話を受けたのですが、ここで、私がむりやり、特許出願の特許使用権半分譲るから、手をかして下さいって、話にしたのです。だから、言い出しっぺは、魔王様なのです!姉上様、勘違い厳禁!!ですから、ブリザードを!ブリザードを解いてください!
「そう、それで、貴女、私に偽装がバレたのだから、特許出願の件は断りなさいまし。」
「え!えええええーーーー!!!!」
アイヴィーは、驚きのあまり後ろに後ずさり、飛び退いた。
「なんですか、その態度は。まさか、その様な態度で、次期公爵様の前で、そのような態度で、私と偽っていたというのですか?」
ああん?っていう脅し文句が聞こえた。うん。姉上様、怖いです、私の態度より、姉上様の態度の方が、問題ではないのでしょうか?
チラリと姉上様に視線を移すと、笑顔の素敵な淑女がいらっしゃいました。
はい、違いますね。私の態度の方が、明らかに大問題ですね。淑女として、有るまじき行いでした。ごめんなさい。
「・・・すみませ「申し訳有りません」」
「・・・申し訳有りません。」
「では、話は纏まりましたね、お父様、明日にでもレベニスク公爵家に謝罪を。そして、アイヴィー、貴女も特許出願の件はお断りなさいませ。」
ニコリと微笑むと、ソーサを手に持ち、優雅に紅茶を飲む姉上様。
「「ええええええーーーー!!」」
初めて、お父様と声が被った瞬間である。
「お姉様!お父様の謝罪は分かりますが、私の特許出願は、その・・・偽装とは関係無いのではありませんか?」
「関係無いと言うのは、そのお口かしらぁ?貴女、昔、特許出願に関係したおかげで、我が家がどれ程痛い目に合ったか忘れてませんわよね?それとも、まだ、諦めてませんの?」
「あきらめていないというより、もともと、出願する気はなかったのだけど・・・公爵家の後ろ盾があるなら、平気かなーって・・・思ったりしちゃったり?」
「なんですか、その言葉使いは!!それに、平気ではありません!我が家は、公爵家を騙そうとしていたのですよ?そんな相手の話に乗る馬鹿が、何処に居ると言うのですか。」
馬だけに。鹿だけに。乗れない話でも無いと思う。
「でも、こんな美味しい話早々転がってないです・・・」
「―――アイヴィー、貴女、珍しく渋るのね?」
「し、渋ってなどいません!」
「そう、じゃあ、どうしてそんなに嫌がるのかしら?元々出願する気は無かったのなら、諦めるのも簡単な話でしょう?」
「う・・・そうですけど・・・」
「―――それとも、お父様や私にも言えない事が何かあるのですか?」
言えない事?言えない事・・・有るにはある。毎回、攻防を繰り返してたとは、まず、いえない。あと、イケメン魔王に負け越しているとも言いたくない。毎回、お世辞という名前の殺し文句でもって、グサグサ心臓に弓矢が射抜かれているとか言いたくない。なにより、恥ずかしい!それに、そんな話したら、また、姉上様のブリザードが降ってくる事請け合いですからー!!ハッハッハー!!
そ、それにですね?淑女のままでは、魔王様と対峙できないのです!姉上様には、分からないと思いますけどね、私が、毎回どれだけ、あの魔王様に苦しめられていたと思うのですか!まだ、片手で足りるくらいしかお会いしてませんけどね、あの魔王様は、簡単に心臓を溶かそうとなさるのですよ!そんな、禁忌を平気でやってくる相手に、淑女としてなんて、振る舞っていたら、私既に死んでましたからね?
「・・・そんなものは、ありません!」
「そう、なら、特許出願は諦められますわよね?」
「・・・私に何かご褒美が有っても良いのではないですか?」
「やっぱり、アイヴィー、貴女何か隠していますね?」
そして、冒頭にもどります。
今現在ここ。姉上様に精神攻撃を食らってギリギリと絞めあげられております。なう。
く、苦しい・・・。私は、チート能力も生かせず何故だか、いつでもいっぱい、いっぱいであります。
「だ、だから、隠して等いませんってば!」
そういうと、姉上様は、手に持っていた、ソーサとカップを置いて、ニッコリと微笑みながら、言葉を続けた。
「今、心に閉まったその言葉。姉として、私が当てて差し上げましょうか?アイヴィー、貴女、次期公爵様に恋―――してるでしょう??」
「はぇ?な、な、な、な、なんでそうなるのですか????」
「やっぱり、そうだと、姉は気付いておりましたよ。心配なさらなくても大丈夫。初めての恋というものは、誰にとっても難しく、己の事でも分からないものという事を私ちゃんと理解しておりましてよ。」
「そ、そうだったのかい?アイヴィー!だから、こんな困難な事嫌がりもせず、引き受けてくれたのかい?」
いやいやいや!!!!
ちょっと待って!!なんで、我が家の人間は、いつも勝手に暴走するかな!しかも、斜めな方向に!!
私、ひとっことも、次期公爵様に対して、す、好きだとか、素敵だとか、そういう甘ーい言葉呟いた事すらないからね?・・・ないよね?
それに、あの魔王について、戦歴を語れても、愛の歴史については一切語れませんからね?語れませんからね!!
それをどう間違えたら、レベニスク次期公爵様に恋してる事になるのか!姉上様のその、恋愛至上主義な思考はここには必要ありませんよ?
そう、私と魔王様の関係を上げるなら、敵!それ以外有りません!!!
「お父様、お姉様、勘違い為さらないで下さい!!私と魔お・・・次期公爵様の間に何かあるとするなら、それは、恋等というものではなく、常に緊張状態を維持しなければならない、対敵である、という事くらいです!!」
「まあ!そんなにレベニスク次期公爵様の事、好きなのね?私にも覚えが有りましてよ。あれは、いつだったかしら?確か、学園の頃でしたわ。あの時、私も男爵令嬢ということで、周りから冷たく当たられていた時がございましたの。そんな私をレオンハルト王子の側近で、腹心でだった、辺境伯のご嫡男バインツ様が、私になにかにつけ優しくして下さいましてね?初めは、哀れみから優しくしてくださるのだろうと、思っていたのです。ですから、私も女の矜持が御座いますでしょ?そんな簡単に助けられて、憐れまれたくなどございませんもの。折角、手助けしてくださる、バインツ様に対して、冷たく当たっておりましたの。ですが、そうして、月日が流れて私とバインツ様の間に敵とも友とも言えぬ複雑な関係が成り立っていた時に、バインツ様に婚約者様が擁立されてしまったの。その時、私初めて、バインツ様への恋心を自覚したのですわ。ですが、その時はお家の事もあって、バインツ様は、婚約者の方と順調に仲を深めていかれておりましたの。私、恋を自覚した瞬間に失恋してしまったのですわ。ですから、アイヴィー。貴女に私の様に後悔して欲しくないのですわ。」
うん、めっちゃ長い回想いらなかったよね?姉上様の恋愛一人寸劇が始まらなかったからまだ良かったけど。
そこまで長く話さなくても、昔恋した人がいて、失恋したって一言で済むのに、なんで、わざわざ姉上様は、こーやって、ストーリー展開したがるかなぁ!
その上、この恋物語が始まったタイミングで、お父様は、『ちょっと用事があるから、後で詳細きかせてね』と、早々に私をいけにえにして立ち去った。お父様!!この仕打ちどうしてくれよう!!
し か も お父様も私が魔王に恋しているというとんでもない勘違いしたままで。
「ですから!お姉様!私恋などしておりません!」
「アイヴィー、貴女今私の話聞いていまして?」
「え?あ、はい」
「なんですか、その間抜けな返事は。いいです事?恋は、自覚した瞬間、手遅れになるという事もあるという事でしてよ?」
ん?なんか、これ、何処かで似たようなフレーズ聞いた事あった気がするなぁ。どこだったっけなぁ??あ!!あれだ!恋は自覚した瞬間落ちているって、魔王様が言って・・・・・
ボン!っと、顔が一気に赤くなったのは言うまい。
その理由も魔王様のハニカミ顔を思い出したからでは無く、恥ずかしいお言葉を思い出したせいだと、明言しておきます。
そう、たとえ自分が発言した言葉でなくとも、中2病な発言を改めて聞くと死にたくなるほどもだえることってありますよね!!過去の記憶を亡き者にしたくなるほどには。
私の周りは、何かと、恋を話題に中2病発言したがる、恥ずかしい人ばかりという事ですね!!はい。
「やはり、恋なさってるのでしょう?わかりましたわ!!ここは、姉が一肌脱いでさしあげますわ!!」
「ちょっ、ちょっと待って!!お姉様!!」
「さぁ、善は急げですわよ!!次に次期公爵様がいらっしゃるのはいつですの?」
姉上様は、さっと立ち上がり、席をはなれた。私は、立ち去る姉上様をとめるべく、あわてて立ち上がって、ひざをぶつけてしまった。うぅ、痛い。
「お姉様!!一体何をなさるおつもりなのですか!?」
「私が、アイヴィーの恋の天使になってさしあげますわ!!」
そういって、姉上様は、颯爽と手を振りながらサンルームを後にしたのでした。
「ちょ!!だから、私、恋なんてしていないっていってるでしょぉぉぉぉ!?????」
私のこの叫びが姉上様に届いていたかどうかは、経験上怪しいと思っている。
我が家の家族は、暴走特急で運行していく模様です・・・。
どうしてこうなった!