ティーパーティーで・・・
あまり現実的なものは入れないほうが良いと思っているのですが、想像しやすいように、ある程度、実在のものを書いていきます。ご了承ください。
また、このティーパーティーでの話しが予想より長くなりそうなので、分けます。
準備には、宣言通り、翌日にヴィルベルトが手配してくれたと思われる仕立て屋と宝石商がやって来た。
仕立て屋も、ただの仕立て屋ではなく、マダム・プティのアンナ・ジャルティエが直々にやってきてくれた!
昔、このマダム・プティでドレスを仕立てようとおもった姉上様が、半年は待たないと届かない。と、仰っていた気がする。
しかも、支払いは次期公爵様から頂いているから要らないという。
何をした。魔王様は一体何をした!たかが、婚約者もどきの、しかも妹の為になんつー事をしてくれてる!
こ、これが、魔王様が仰っていた、誠意なのか?いや、もう、これは、誠意と言う名の脅しなのではないか?うん、そうだ、そんな気がする。
採寸が終わると、アンナ様は、どんなドレスにしたいか、案が有るのか聞いて来てくれたので、これたけは、絶対に外せない、と思っていた、普段姉上様が装うドレスと全て真逆の案を伝えた。
伝え終わったところで、アンナ様は、訝しい顔をして、「本当にこの案で良いのか」と、何度も確認してきた。
うん、わかってる。似合わないと思ってらっしゃるのですよね。わかります。私のスペックは、姉上様寄りですから。胸の山以外は。
だからといって、ハイ、そうですか。と、似合うドレスなんて着てみたら、それは、破滅へのカウントダウンに他ならない。できる事は、最大限回避しなければ!!!
採寸とデザイン案が出来上がると、アンナ様は、早々に帰っていき、今度は宝石商がやってきた。デザイン案を見せると、やはり、訝しがりながら、こちらも私とデザイン案を交互に見やった後、ブレスレットとイヤリングを提案してくれた。
ブレスレットは、プラチナベースのダイヤモンドで出来ている、テニスブレスレットとこれまたプラチナベースのストレートチェーンのイヤリングを提案してもらった。
うん、デザイン案には、とっても似合いそうなんだけど、この、テニスブレスレット、ダイヤモンド一体幾つついてるんだ!ってくらい、キラキラ光ってる。
それだけでなく、この、イヤリング。長く伸びたチェーン(これもおそらく、プラチナ)の先に涙型に沿って、ダイヤモンドが散らばり、その中心にメッチャクチャきれいなライトブルーのアクアマリン。これ、同じレベルのサファイアだったら、恐ろしい値段になっていた事請け合い。いや、だからって、そのイヤリングがお手頃な値段かといえば、決してそんな事はないと断言出来るけどね?!
キラっキラ、キラっキラ、眩しいわっ!!
お値段なんか、怖くて聞けない。しかも、なんかよく分からないけど、宝石商の方、お母様にもう合意を得ている。何故だ。何故、お母様を先に籠絡しようとするんだ、宝石商の方よ。しかも、ここでもまた、お支払いは、次期公爵様から頂いておりますっていいやがった。
なんだこれは、賄賂か。そうか、賄賂なんだな?でもね、魔王様、こんなもので、私の良心が痛む理由が・・・あるわぁあああ!!うぅ、痛い!良心が痛い!
しかし、我が家の両親(少なくともお母様は)は、まるで痛んでいる様子がないのが、尚更、痛い。
と、その日は、一日良心の呵責に悩まされた。
◇◆◇◆◇
そして、ティーパーティー当日。
その間、アイヴィーは、ずっと良心の呵責に悩まされ、苦しんでいた。そして、もう、この際、婚約くらいならしても良いんじゃないか、と思うくらいには、今も苦しんでいる。
とはいえ、「かくかく云々で、騙していました。」と言う勇気もないアイヴィーは、偽姉上様と言うことがばれないように最大限努力する事にした。
まず、ドレスは姉上様が絶対着ないような、キャメル色にした。そこに鎖骨のあたりまでレースをあしらって地肌が見えるようになっているハイネックの少し大人っぽいドレスを用意してもらった。ウエストには大きなネイビーのリボンがウエスト引き締め効果をだし、ウエストしたの部分は、プリーツスカートになって、全体的にすっきりした装いになっている。袖はひじあたりまでで、裾が扇状にひろがり、中から、プリーツとレースがみえている。
髪の毛は、シニヨンで、ゆるくまとめてもらい、眉も濃く、しっかりえがいてもらう。唇に塗る紅もピンクや赤みの強いとのは控えて、ナチュラルな色合いの押さえめの色で、オーバーリップ気味に描いてもらう。目元もタレ目気味になるように、アイランを引いてもらい、まつ毛も目尻側にガッツリとマスカラを塗ってもらう。
そして、思いつく限り、いつもの姉上様と間逆の事をしてもらい、準備が完成した。そこには、普段のアイヴィーやウェンディーからは想像もつかない、自然体なのにそこはかとなくかおる艶やかさを持った美少女がいたのだった。
「お嬢様!!完璧でございます!!」
「完全に別人でごさいます!!!」
「・・・皆さん、本当にありがとうございます。これで、誰が見ても私やお姉様などとは誰も思いませんね!!」
いやー、本当に、自分に向かって、この人誰っておもってしまいました。人間かわろうと思えば、ここまで変われるものなんですねぇ。素材は同じなのに、作り上げる雰囲気がまるで別人!!
普段の姉上様を妖精とするなら、この姿はなんでしょう・・・うーん・・・・。健康?人間てき?
とにかく、期待通り間逆な感じに仕上がってよかったです!
「お嬢様、ちょうど今、レベニスク次期公爵様がいらっしゃいました。」
「わかったわ。有難う。では、行きましょう。」
そういって、アイヴィーは、ヴィルベルトの待つロビーへ向かった。
臨戦態勢でロビーに向かうと、既に待っていた、ヴィルベルトと目線があい、お互い挨拶をした。その後、アイヴィーは、今回のドレスやアクセサリーについて、懇切丁寧にお礼を言うと、次期公爵は、相変わらず、微笑みながら、言った。
「いえいえ、ウェンディ嬢に妹君をエスコートさせてくれとお願いしたのは、私の方ですから、お気になさらず。これは、無理に貴女に付き合わせてしまう、せめてものお礼とでも思って下さい。ですから、今日は、どうぞ楽しんで下さい。」
「・・・有難う御座います。」
なんだ、その謙虚な姿勢は。いつもの魔王を想定してたから、思わず、肩透かしくらってしまった。しかも、今の私は、罪悪感という毒魔法を食らって、弱っているので、その姿勢は、非常に有り難い。
「それにしても、オルウェン男爵家の美人で秀才の姉妹だという話を伺っていましたが、本当にその通りですね。」
「そうでしょうか?お姉様の事はわかりますが―――もしかして、次期公爵様もお姉様の美貌に・・・?」
「ウェンディ嬢は確かに美しいが、美しいという言葉は、貴女の方にも似合いそうですね。」
今日はいつものお世辞は小休憩かと、安心した思った私が馬鹿だった!!
もう、魔王様の口からお世辞と言う名の口説き文句は、息をするくらい簡単な通常攻撃なのですね。
はい、油断してました。魔王様は、相変わらず、通常運転だという事を。
「それをお姉様の前では言わないで下さいね。」
「おや、ウェンディ嬢は、私が思っている以上に嫉妬深いのですか?」
「レベニスク次期公爵様が、お姉さまの事をどうお想いか分かりかねますが、お姉様は、妹思いなので御座います。」
クスりと、ヴィルベルトは、笑みを零して、答えた。
「ああ、――そのようだね。では、そろそろ出ましょう。」
「ええ。宜しくお願い致します。」
アイヴィーが、馬車の中で何かあるかと思いきや、世間話程度に、今日のティーパーティーについての話しを聞いただけで、見事に肩透かしをくらってしまった。
魔王様が馬車の中で話してくれたことによると、今回の梅雨時期のティーパーティーは、次期公爵様のお母様が育てて品種改良しているお花を楽しむ事が出来るのだそうで、その花も、香りの強いものは、抽出して、香水にしているそうなので、試してみたらどうか、と言われたり。
次期公爵様のおすすめは、バラと紫陽花、変わったものだと、花菖蒲もおすすめだとか。クチナシは香りがおすすめとのこと。
そんなお話を伺っていたら、あっという間に、公爵邸宅に到着した。しかも、何故か、心なしか魔王様の言葉使いが砕けた気がする。まさか、この短時間で、仲良くなったと思われた・・・?まさかねぇ?とりあえず、言葉使いは、無視しよう。そうしよう。そして、今回で二度目の訪問になる訪問。気合をいれて、いざ、行きましょう!!!
「なんて素敵なの――!!!」
到着すると、アイヴィーは、目の前に広がる色鮮やかな緑の庭園に対する称賛を口にせずにはいられなかった。
これが、インシグリッシュガーデンというものなのでしょうか!!とってもきれい!これで、背景にロマン派の音楽なんて流れていたら私本当に惚れてしまうわ!!えぇ、私も含め、女の子は、すべからく雰囲気に弱い生き物だと、思っています。
――――っ!!!
ま、まさか、こうやって、魔王様は、これまで数々の女性をとりこにしてきたと・・・?それで、今回、偽姉上様である私を呼び寄せようとしたっていうの?!!魔王め!!何処までもあなたの死の宣告に誘うルートに乗せようとしてくるとは!!なんたる非道か。
「ありがとう。母もその言葉を聞いたら、きっとよろこんでくれるよ。」
ヴィルベルトは、アイヴィーの賞賛の言葉に返事をしながら、進むアイヴィーの後をゆっくりとついていく。進んでいく先々で、アイヴィーは、これは何の花だの、この香りは好きだの、この色が素敵だの、散々はしゃいでしまっていた。そして、何故か、いつもの無駄に甘い言葉を発しないヴィルベルトに、ついついアイヴィーは、ウェンディとした会っているときの事を忘れて、普段の言葉にするのを憚られるような心情は鳴りを潜め、ほとんど素に近い状態で案内された庭園を周遊して楽しんでいた。
「これが、先ほど教えてくだっさたお花ですか?」
「あぁ、これは、花菖蒲というはなでね。菖蒲属の花で、海を越えた日の国から取り寄せてそだてているんだ。アイヴィー嬢は、青紫色の花が好きなのかな?」
「えぇ、梅雨をイメージするとどうしても、青色の花に目がいってしまいますね。」
「そうか。それならば、クレマチスという花は知っているかい?向こうの方にアーチ状になっている花がみえるかな?あれが、クレマチスで、これも、日の国から輸入したものを母が品種改良していてね。近くまで行ってみるかい?」
そういって、ヴィルベルトは庭園の奥のほうにあるアーチ状になっているところを示した。そこは、緑がアーチを描いて通路になっていた。アーチは、先ほどヴィルベルトが言っていたクレマチスが見事にアーチ状に絡まり、見事に緑と青のコントラストを描き、幻想的な入り口のような趣になっていた。
「よろしいのですか?」
好奇心がとめられないアイヴィーは、魔王の言葉ということもわすれ、素直に喜び、うながされるまま、庭園のおくに足をすすめ、アーチを描いているそこに近づいて行った。
「ウェンディ嬢にも是非この庭園を見せたかったのだけどね。――なかなか都合が合わないんだ。」
緑と花のアーチをすすみながら、ヴィルベルトはアイヴィーにそう答えると、アイヴィーはその場で足を止めて、ヴィルベルトに質問した。
「その、次期公爵様は、どうしてお姉様と?」
実は、私、今あえて言わせてもらいますけど、帰り際に婚約の話が出てきて、ひっじょうに驚いたのです。
十中八九、『ときめきマジック』が起こったせいとはいえ、まさか、フラグ建設していたとは思わなかったのですよ。この遺伝・・・もとい、常に付与されている『ときめきマジック』のおかげで、こんなに手痛い思いをするなんて、誰が思うだろうかって!!
もうね、この『ときめきマジック』を付与されている時点で、私、若干・・・いや、かなり不利な状態なのではないかな?と、思ったわけですよ。
この前、二回目の脳内抹殺が起こって、その後の魔王様の発言のおかげで。うん、何がどうしたら、婚約するって話になってるのか。思い出せない、自分が恨めしい。
だから、きかせてください。魔王様、なんで婚約する話になっているのか、という事を。
「ん?今回の事かい?」
「え、ええ。」
なんだ?魔王様、やたらモヤっとした言い方しますね。
「どうして―――か。・・・アイヴィー嬢、恋とは、なんだと思う?」
ヴィルベルトの返答に思わず、アイヴィーは、その場で凍りついた。
いきなり哲学的命題みたいな返答してくれるな。しかも、返答が重い。重いよ魔王様。
その上、いきなり氷魔法とか、貴方どれだけ、魔法万能なのですか。魔法使いは希少なのですよ?
しかも、何故にそんなに多様性に富んでいらっしゃるのですか。
その魔法の秘訣は何ですか。
顔面偏差値で魔力が異なるとか、そういうふざけたシステムですか。
「私には経験が無いので、分かりかねます。」
アイヴィーがツンっと首をそむけるとヴィルベルトは苦笑して答えた。
「・・・私も良く分からないんだ。でも、恋を良く知る友人が言うにはね、もし、私が、恋に気づいたら、それは、とうの昔に相手に対して恋に落ちていたって事らしいんだよ。」
はい、きましたー!!
皆様、退避の準備はできていますか?そうですか。
今日の私は過去二回の戦闘において実力を理解しました!!!ですので、今日の私は、戦いませんよ!!無駄に血を流すべからず。
何が、何が、気付いたらこ、恋に落ちているっだ!!チューボー相手だからって、そんな中2病みたいな事言わないでください!!だから、誰が『甘ーい』なんて突っ込みをいれてやるか。
だいたいね、私、見た目は14歳ですけどね、中身は品の無いアラサーですからね?そこのところ、理解していただきたい!!えぇ、本当に。
「それは、なんと言うか・・・。出口に向かって逃げ場た先が罠みたいなものですね。」
ほんとにそれ。今の私の事言ってるって自画自賛しかけた。あまりの衝撃に余計なこと言ってしまった。ここは、肯定のみでよいはずなのに!!私の口よ。あいかわらず、よくすべる。
「ははは。たしかにね。ところでアイヴィー嬢、君は、14歳という年齢にも関わらず、今年学園の最終学年じゃないそうか。」
「あ、そうです。・・・どうして、それをご存知なのですか?」
訝しがりながら、片方の眉を起用にもちあげて、アイヴィーは、ヴィルベルトに返答し、歩みを止めていた足を再び動かして、アーチの中を進んでいく。それに、続くように、ヴィルベルトも歩きだし、アイヴィーの質問に答えた。
「レオンハルト王子とは、古い付き合いでね。」
「ああ、殿下とお知り合いなのですか。」
「これから先の事、どうするつもりか聞いても良いかな?」
ゆっくりとだが、確実に進んでいた二人の道の先には、ドーム状の屋根をした洋風の東屋が見えてきた。そして、二人は歩みを止めることなく、東屋に向かう石畳でできた一本道を歩いていった。
「それは、次期公爵様にご心配いただくような事ではございませんので、お話致しかねます。」
「それは、そうだろうが・・・。アイヴィー嬢、貴女は幼少の頃からいくつか特許申請しているよね?」
「ええ。ですが、全て他の特許と申請内容が被って使い物になりませんでした。」
「まぁ、君が知っている事実はそうだろうね。」
「と、仰ると、何かご存知なのですか?」
「私に貴女の様に、新しい物を作り出せはしないけれどね。これでも私はね、君よりは、物の使い方を知っているつもりだよ。」
そういうと、ヴィルベルトは、アーチの先に見えていたドーム状の屋根をした洋風の東屋へアイヴィーを促し、そこにあるきちんと手入れされている椅子に座るように促した。
いつも、ご覧になってくださる皆様、ブックマークや評価してくださる皆様、大変ありがとうございます。
次回、前世記憶がほとんど生かされていない理由について触れていく予定です。
今後とも暖かく見守っていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
ごま豆腐