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約束

やっと、タイトルに近づきました。

 どうしてこうなった、私!!!


 話は戻って、数十分前。


 このまま、アイヴィーとして、会う前に、ウェンディとして、公爵にどういうつもりで、妹にちょっかいをかけようとするのか、直談判にやってきた。

 急な訪問にも関わらず、今回は直ぐ面会できた次期公爵様を前に、アイヴィーは、急な訪問の失礼を詫びたところで、本題に入った。


「それで――、どういうつもりで妹をパーティーにお誘い下さるの?」


 二人がけのソファに腰をおろしたアイヴィーは、紅茶を一口のんで、背筋を正して問題を投下した。


「忙しそうな君の事を少しでも知りたいと思うのはいけないことかな?」

「・・・私の事が知りたいのなら、私に直接お尋ねなさっては如何?」


 ニコニコ。今日の私は、前回の様な失敗は致しません!たとえ、このイケメン防御壁があろうとも、今日は未来の私の為の戦いなのです。


 てすから、皆様、『ひと狩りいこうぜ!』なんて、某アクションロールプレイングゲームの様な、そんな気軽な煽り文句は付きません!

 そう、ここでつけるなら、『さらば、魔王!』ですかね?


 え?ちょっと盛りすぎ?


 期待値込でも盛りすぎですかね?


 前回を思い出せ?ん?・・・そんな事、私には聞こえない!


 さあ、いざいかん!魔王様、戦うのならば、私の屍を越えてゆけ!


「・・・そうしたいと思ってはいたのだがね、ウェンディ嬢、貴女は、いつも妖精のように私の事をかわしてくれるのでね、情けない話だが、こうして妹君に貴女の事を教えていただこうかとおもってね。」


 うん、だって、会いたくないの。

 それに、会っても話す事なんてほとんど無いよ。

 そこ、分かってよ。察してよ。察して下さい。

 なんで、姉上様と同じく、グイグイ肉食系なのよ。


「だから、どうして、妹なのですか!!私の事を知りたければ、この前のようにいくらでも調べればよろしいのじゃなくって?」

「それもそうなんだけどね。貴女の事を良く知っている方の話も直接聞いてみたいと思っただけなのだが――、何か問題でもあったかな?」

「も、問題なんて―――。」


 有るに決まってるでしょおおおお!?

むしろ、有る以外の選択肢が無いからね?ちょっ、そこ、理解してくださいまし?


「うん?私は貴女がどうしてそんなに妹君に会うのを嫌がるのか理解に苦しむのだけどね。」

「だ、だから、それは、貴方が、妹に変な気を起こさないか心配しているだけです!!」

「ふむ、なるほど。つまりそれは、この中途半端な関係のせいで君を不安にさせてしまっている、ということかな?」


 相変わらず、マネキンもビックリな長ーいお見足を組んだ次期公爵が、顎に手を添えて、首をかしげ、悩ましい表情をお作りになさいました。


 ・・・お作りになさいました。


 なんじゃそりゃあ!?!?


「ぇ?い、いや、そういう事じゃなくて・・・・」


 ヴィルベルトの表情に動揺を隠せず、目が泳ぐアイヴィー。


「じゃぁ、どういう事かな?忙しいとずっと断ってきていた君が、妹君に君の事を聞きたいと願った瞬間、私の目の前に、忙しいはずの貴女が現れている。理由を聞けば、妹に会うなという。この行動に一体どんな理由があるのかな?」 


「・・・わ、わ、私は、軽薄な男性は嫌いです。」


「うん?」


「私は、私に会えないという事が分かっただけで、すぐに別の女性――たとえそれが妹であっても、私以外の女性と出かけようとする軽薄な男性に、大切な妹を会わせる事なんてできませんわ。」


 そ、そうなんですよ。本来の目的は、妹として魔王に会わない様にする事。グイグイと来られて本来の目的忘れかけてました。危ない、危ない。


「――そうか、なるほどね。そう思ったのか。でも、それは誤解だよ。」

「誤解でもなんでも、そもそも、誤解を受けるような行動をするのが問題なのです。」


 うん、そう。誤解だろうが、なんだろうが、魔王様と私が会わずに済んで、それでもって、次いでに、お別れ出来るのなら、その些細な一言でも揚げ足とって、嫌われる口実にさせてもらいますからね?

 肉食系にいくら迫られようとも、身を守る方法くらいもってるのです。


「――――それもそうだね、私からこの関係の継続を申し出たのに、確かに誠意が足りなかったように思う。だから、今、君に誓おう。こんな事は、もうしない。と。」

「で、では、妹の出席は見送っていただけますの?」

「そうしてあげたいのは山々なのだがね、もう出席の用意をしてしまっていてね。」

「では、一体どうするおつもりなの?」


 眉を寄せて怪訝な顔をつくると、魔王様は、申しわけ無さそうに答えてくれた。


「申し訳ないけれど、今回は出席してもらえないだろうか?大丈夫。妹君にはご迷惑をおかけするのだから、ドレスや宝飾品は、こちらでしっかり用意させてもらうよ。それに、当日も貴方の大切な妹君に不埒なやからが寄りつかないようにすると約束する。だから、私が、軽薄な男でないという証明する機会を与えてはくれないだろうか?」


 そういうと、魔王様は、席を離れ、私の隣に腰をおろした。そして、右手を胸に当て、左手で私の手を取り、指先に唇を当て、上目遣いに懇願した。


 っ指先ーーーーー!!!!!!指先に、なにか、当たりましが!!私の指に何か当たりました!!なんですか、その忠誠のポーズは!騎士みたいな!!騎士みたいな!!!そんな事したって・・・・!!


 どぅああああ!!かっこいいに決まってる!!


 めちゃめちゃ様になってますよおおお!!!魔王様ああああ!!!


 イケメンの懇願とか!イケメンの懇願とか!!!!


 何この、心臓に悪いホラーゲーム。

 もう、これ魔王討伐ファンタジーとかじゃなくて、何処から何が出てくるかわからないホラーゲームの類なのじゃないだろうか。

 心臓に負担がかかり過ぎるよ!


「そ、そこまでおっしゃってくださるのなら・・・。」

「ありがとう。君は女神のように優しい人なのだね。」


 そういって、魔王は、左手だけ開放してくれた。うん。左手だけ。この背後にぐるりと回っている右手は相変わらず、腰を包み込んでる。


「だ、だから、どうして、そうなるのですか。」


 し、心臓が溶ける・・・。


 心臓が溶けるという意外私にはわからないよぉおおお。


 魔王の言葉には特殊効果が常に付随してて、その付随効果でもって、タンパク質を分解させようと、そういう、現代社会もビックリな、そういう魔法でも行使しているのでしょうか??


 心臓を溶かすなんて、誰も考えなかった恐ろしい技を行使してくるとか!!!胃痛持ちもビックリの技ですよ!


 内部破壊反対!!


 鎧通し反対!!!


「どうしてだろうね?本当に、私には貴女が女神に見えるのだから仕方ないだろう?わが女神はいつも私にはとうてい及びもつかない行動ばかりしてくれるからね。」


 だ か ら

 その顔で、煽てるな!

 その顔で、微笑むな!

 その顔で、近づくな!


「ま、まぁ、それはお互い様でしょう?それに、他人の行動を読みたいだなんておこがましいですわ。他人の行動を読むなんて、人にできる限界を超えておりますわよ。次期公爵様は、神様か何かにでもおなりになりたいのかしら?」


「ははは。まったくその通りだね。私もそう思うよ。」


 何故笑う。相変わらず、魔王の笑いのツボは摩訶不思議也。

納得してくれるなら、少しは、妥協してほしい。魔王の特殊効果を軽減して、普通に話せるように手加減してほしい。

このままでは、貴方に抗い続ける私の心臓はドロドロに溶けて無くなってしまいますよ。せめて、もう少し距離をおいてほしい。さっきから怖くて、貴方の顔を背けてるこの情けない姿勢を回避させて下さっ!!パーソナルスペースも何もあったものじゃない。

 少しは、反省して、魔王!!!


「で、でしたら、少しは、その他人を簡単に動かせると思っている発言をお控えなさったほうがよろしくいのではなくて?」


「ははは。あぁ、そうだね、君の前では控えるようにするよ。」


 うん。だから、反省しようよ。他人を簡単になんとかできると思ってくれるな。たとえ、この距離でも、私は負けない、負けないんだからぁああ!!


「私以外の人にもお優しくなさってくださいまし。」


 そして、少し離れて下さい。お願いします。


「おや、貴女は私が少しは軽薄でないということを既に理解してくれているのかな?」


 ん?私何か変な事言ったかな?言ってないよね?ちょっと高飛車な発言したのは理解してるけど、それと軽薄でないのは、何故結びつくの?私が高飛車だから、差し引きゼロとでもいいたいの?


「まぁ、なんの事でしょう?」


「『貴女以外の人にも』なんて可愛らしいことを言うものだからね。」


 ちょっ!それ!揚げ足取るとか、酷いですよ、魔王!!


「そ、それは、言葉のあやというものですわ。」


「そうか、では、その言葉のあやついでに、もう少し君に誠意を見せたほうがよさそうだね。」

「え――?」


 そういうと、魔王様は、私の腰回した手に力を込めて、グイっと引き寄せると、その美しい顔を近づけて、耳元でバリトンボイスで囁いてきた。


「ウェンディ・オルウェン令嬢。このパーティーが終わったら、君に正式に婚約を申し込ませてくれ。」

「え?な、な、な、どうしてそうなりますのぉぉぉぉぉ?????」


 思わず、発狂しかけたのは仕方がないと思う。囁かれた右耳を両手で抑えた、私は、この男の軽薄さについて、訴えても文句無いと思う。


「これ以上、貴女に軽薄な男と思われたくはないからね。―――いずれ、婚約するつもりで居たのだから、早いか遅いかの違いでしかないよ。これで、少しは、私の誠意を信じてくれると有り難いのだが。」


 今の行動!どうして、耳元で囁くのか!!それ、軽薄だから!軽薄ですからね!

 え、あ、ちょっとまって。今魔王様はなんて言った?早いか、遅いか???ん??何のこと?ま、まさか、ここで『ときめくマジック』発動しちゃってたー?なんか、めちゃめちゃ大切な事言ってたきがするのに、き、記憶がないなんて!!!あり得ない!


 そう、あ り え な い!


 と、とりあえず、誤魔化せ私!


「――――貴方の誠意を信じるかは、これから次第ですわよ。」

「では、パーティーで妹君が私を信じてくれたら、少しは信じてくれるかい?」

「だから!どうしてそうなるのですか?それとこれは、別問題ですわ!」


 はて、それ(誠意を信じる事)とこれの『これ』とは何ぞや?自分で言ってて、自分の不甲斐なさに涙したい。


「君はどうして、そんなに頑なかな。私の何が君の理想に足りないのだろう?」

「私の理想―――――?」


 うん、なんか展開が読めないけれど、理想って、理想の男性って事?まぁ、私の理想を知りたいって言ってるって事は、理想像に近づけたいって事かな?

 だとしたら、ここで、もう、とってもあり得ない理想を上げたら、少しは引いてくれないだろうか?例えば、財力がある人が良いだの、自分より身長が高い方が良いだの、贅沢させろ、だの。姉上様だって、女性が綺麗にいる為の贅沢くらい最低限の男の甲斐性って言ってたし!その上で、少女漫画のような、ファンタジー男子を論えば、さすがの魔王様も引いてくれるのでは?


 そ、それだーーー!!!


 これなら、嫌われないにしても、好かれる要因ではないものね!


「そう、参考迄に教えてくれないかな?」

「いいですわ。私の理想は、見目が良いのは当然として、逞しく、私を守ってくれる事は絶対条件ですわね。あと当然の事として、私為のドレスや宝飾品を準備するのに文句を言うような甲斐性の無い方は問題外ですわね。その上で、優しく、浮気なんて絶対にしない、私だけを愛してくれる男性てすわ。」

「うん、それだけ?」


 は?


「そ、それだけって、こんなお伽噺の王子様みたいなのが理想なのかと、お笑いにならないの?」

「まぁ、確かにお伽噺みたいな話ではあるけどね。私は残念ながら、殆どそれに当てはまっていると思わないかい?」


 この人、何て言った。


 ・・・コノヒトナンツッタ? 


 聞き間違いでなければ、この人いや、魔王様は、お伽噺に出てくる王子とにありーいこーるっていったよね? 


 言 っ た よ ね ???


「――――一体どこから、その様な自信が?」


 なんとか、頬を引き上げ、アイヴィーは、ヴィルベルトに質問した。


「まず、これでも私はそれなりにモテるつもりだから、見目については、悪くは無いと思う。次に、私は、次期公爵で、いずれこの邸宅や財産は全て私が継ぐ。これでも相当な財産になるが、さらに、私は、現在、宰相補佐でね。それなりに、対価はいただいているつもりだ。君言う程度の贅沢くらいならば、いくらでも叶えられる用意があるよ。逞しさについては、具体性に欠けるが、剣の腕なら多少は覚えもあるし、貴女を不安にさせない程度には、鍛えてあるつもりだ。あとは、優しさと愛については、君の判断になってしまうけれど、私の優しさも愛も今のとこの十分伝わっているように思うが、どうだろう?」


 そう言って、魔王は、私に強烈な(お言葉)を射抜いてくれたのでした。


 ぐっ!スッカリ魔王が定着して、忘れていましたが、次期公爵様は、超有料物件なのでした!!!姉上様の現実的な理想に私の理想をプラスしたところで、痛くも痒くもない程、完璧な男性だという事を私、すっかり失念しておりました。しかも、自他共に認めざる得ない程のイケメンは、言わず物がな!!!


「そ、そうですわね。」

「では、私の婚約を受け入れてくれるね?」

「・・・パーティーが無事終わったら、考えますわ。」

「分かった。ウェンディ嬢。その時は、ハイとだけ言ってくれると嬉しいのだがね。」


 ニコニコと、笑顔の魔王。


 もう、この『ただしイケメンに限る!』の付与なんとかしてくれないだろうか・・・。ここに居たら、心臓が溶けてしまう!!と、思い、焦ったアイヴィーは、急いで話題を切り上げ、邸宅を後にしたのだった。

 相変わらず、灰色の戦士だったのは、言うまでもない。

そして、帰りの馬車で思うのである。


どうしてこうなった、私!!!


と。

ストーリーと関係有りませんが、


アイヴィーが、「さあ、いざいかん!魔王様、戦うのならば、私の屍を越えてゆけ!」と書いた時、「それもう死んでるじゃん。」とツッコミ入れたかったです。


個人的に、他にもツッコミ入れたいところは、有りますが、↑が、一番ツッコミ入れたかったです。

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