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プロローグ

 カコン、チョロチョロ・・・・・カコン、チョロチョロ・・・・・・


竹に水がたまり、ししおどしが、静寂の中、小気味良い音をならす。


 (ここで、一度断っておきますが、上記表現はあくまでも、前世で日本人だった、自分が今の心象風景を描いた幻聴と幻覚です。


 きっと今の状況として、ししおどしの音が定期的にリズムを打つ想像をする事は、イメージ上そんなに外れていないはず。


 そもそも、なぜそんなものを思い出したか、という話。


 まず、前世の記憶といえば、チートな香りしかしない。

 その上、現世の私、アイヴィー・オルウェンは、貴族社会では、珍しくもない普通の男爵令嬢の末娘・・・。


 女であることをはじめ、末子である私に将来にわたって貴族としてのうまみなぞほぼ皆無なのです。


 しかし、ここで、前世記憶です。


 私の知ってる前世記憶を持つ人は、だいたい、乙女ゲームの世界での経験をいかして、将来王太子妃になる、とか、前世記憶をもって領地改革に乗り出し、爵位に見合った以上の功績を収めたり、前世記憶を使って料理無双するとか、そういう奇天烈な展開を期待した。


 えぇ、普通に・・・・期待、しましたよ。


 でなければ、何のための前世記憶!!!


 な、わけですが、これが面白いくらい現状、役に立ちそうもない知識ばかり。


 正直、今の立場以上になんのうまみもないというか。


 なんで、前世記憶思い出した、自分!!!と嘆きたくなったのは、間違っていないと思う。


 それなら、せめて、魔法が使えるとか、錬金術つかえるとか、ファンタジーな方向に能力開花してほしかった!!!


 まぁ、魔法とか、現在ほぼ消滅しかかっているし、錬金術はいわゆる薬師で、ポーションとかそういった、奇跡の御業みたいなものなんて存在しないっていう、まったくファンタジーじゃない、世界。


 せっかく、異世界に生まれたのに、悲しい・・・。


 とはいえ、そう簡単にあきらめられなかったので、前世記憶を思い出してから暫く、色々試したけどね。


 全部上手く行かなくて、本気で両膝ついて神様に懇願しながら泣いたよ。


 うん・・・・・・神様、信じてないけどさ。


 その上、うまみの一切ない男爵貴族の末子。)


 そして、話は冒頭の心象風景に戻るのである。

 アイヴィーは、目の前に用意されたティーカップに手を伸ばし、一口、紅茶を飲むと、再びカップを戻して、姿勢を正したまま、再び、回想にはいる。


 (何故、鹿威しかって?


 それは、只今、婚約者候補としてお見合いの真っ最中だからです。


 もちろん、残念ながら、非常に残念過ぎるのだけど!私本人の婚約者候補などではないのです。


 姉上様の婚約者候補様なのです。


 鹿威しとえば、お見合いですよね。


 そう、お見合い。


 私の中のお見合いのイメージといえば、前世でも現世でも

 「本日はお日柄もよく〜」だとか

 「後は若い二人で〜」だとか言って、男女の縁に遠い、私のような・・・・


 ごほん、もとい、『結婚は人生の墓場だ!』と思っている私のような人の為の儀式であります。


 そう、あえて!あえて!

 結婚しない貴族の為に親が懇切丁寧に結婚までのルートを引いてくれる有り難い・・・ありがた迷惑な儀式なのであります。


 そう、ありがた迷惑なのです。


 決してモテない、という訳ではないのです。


 そう、たまたま、前世でも、特に現世でも、異性交遊にご縁が遠かっただけなのです。

 だから、決してモテない訳ではないのです。


 断じて!!!・・・そうに決まっている!!!


 ・・・・はい、そこで、お見合いに話をもどします。


 ここから先は、是非とも両手を叩いて笑ってくださいませ!


 そりゃね、何が悲しくって、他人の、しかも自分の姉のお見合いに参加しなくちゃいけないのか!という話ですよ。


 笑い話にしなかったら悲しすぎるわっ!


 なんといっても、このお見合いは、私の為なのではなく、我が男爵家長女の姉上様の為のお見合いなのですよ!


 これを笑い話にせずにいられるでしょうか!?


 いや、いられない!!!!いられないったら、いられない!


 はぁ・・・はぁ・・・・。少し、興奮しすぎてしまいましたが。


 そう、今日は姉上様のお見合いに姉上様として、私が、あの!レベニスク公爵家嫡男の方とお見合いをする事になったんですねー。


 はい、笑うところですねー!!


 そして、是非とも、哀れんでくださいねー!!!


 うぅ・・・泣きたい・・・。


 実は、レベニスク公爵家との縁談は、急遽決まった事でして。


 一般的に、この国では、上位有力貴族には、幼い頃から婚約者なり、婚約者候補なりが存在するわけなのです。


 まぁ、仕方ないですよねー。だって、上位貴族だし。金持ちだし。権力あるし。


 所謂、自衛ってやつですよね。


 何処の馬の骨ともわからないメギツネに下手に集られたく無いですもんね。


 分かりますよー。


 ・・・分かられたくない?そりゃそうか!!

 望んでお見合いに来ていないとは言え、私が正にメギツネ的立場ですものねー!!


 ・・・はい、そこで、件のレベニスク公爵家であります。


 レベニスク公爵家、この国が公国だった小さな頃から忠誠を誓ってきたとっても古いお家柄な上に、何代か前に当時のお姫様が臣籍降嫁したお家で、高貴な血筋なんですよねー!


 その上、宰相様や大臣を常に輩出していまして。


 さらに、領地も広くて、安定した領地経営に加え、領地の名産品も数多くこの王国に出回ってるっていう、大商人ですらすり寄ってしまいたくなる程、旨味の多いお家柄なんですよねー。


 羨ましい!

 そりゃぁ、婚約者がいようが居まいが、お近づきになりたいですよねー。


 玉の輿ですよ!タマノコシ!!


 更に、更に!そこまで素晴らしいお家柄に加えて、極めつけは、イケメン&美声らしいのですよね~!

 見た目に関しては、噂程度の事しか知らないのですが、詳細は、会えば分かるとおもいます。


 とはいえ、ここまで完璧にそろっている次期公爵様ですよ!!


 ナニソレ二次元の話?って、普通、なりますよね?


 なりますよね!


 私、この話聞いた時点で、なりましたよ!!!


 そんな超優良物件で有らせられる、レベニスク公爵家にして、嫡男。


 それが、今回のお見合い相手、ヴィルベルト・レベニスク次期公爵様でございます。


 はい、拍手ー!!!!パチパチパチパチ。


 ・・・・うん、私のお見合い相手じゃないんだけどね。)



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