表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

されど生命は繰り返す

作者: Nuke

 

 ――気づけば、誰かの手の中。


 温もりは手を伝い、僕の全身を包む。

 

 叫ぼうと、泣き喚こうと、いつだって二人が、僕を満たす。


 ――二人から離れた日には、自分と同じ者たちと、過ごす日々。


 彼らは僕に、友達だという。


 僕は彼らに、友達だと返す。


 同じことをして、同じ道へ進む。

 

 彼らといると、様々な感情が生まれることを知る。


 ――いつからか、服装まで統一される。


 俺に友達だと言った彼らは、随分遠くへ立っている。


 もう、互いを友達だと認め合うことはなく


 俺は横にいる者と喋っている。


 ――皆がペンをとり、文字を書き出す。


 かくいう俺もそのひとり。


 前に立つ大人は、全てを知っているようだ。


 なぜ勉強をするのか?


 そんなことを問うものは、ごく一部に過ぎないようで。


 ――誰かが、俺の話をしている。


 気づいたところで、何かは変わらない。


 物はなくなり、者もなくなる。


 こないだ横にいた君は


 どうしてそんなに遠くへいるの?

 

 家に帰れば勉強をして


 俺は今


 何をしてるの?


 ――ひとりで暮らすのに慣れた頃


 俺は、あなただけを見つめている。


 必死に掴んだこの学びも、期待と違ったこの場所でも


 きっと、あなたと二人乗り越えていけると


 そう思えた夜が明く。


 ――働く辛さは通り過ぎ、二人は将来を誓い合う。


 毎日厳しく辛い日々のなかでも


 子供のこと思うなら


 娯楽の報いを省みて


 私たちの未来は明るいはずだ、と。


 ――家に帰ると、妻子は寝ている。


 朝にも子供の顔は、見れていない。


 慣れたアルコールは表面だけを熱くさせ


 孤独な胸に、針を刺す。


 喜びがないこの世界で


 最後に笑ったのは


 いつだっただろうか。


 ――離婚したのは昨日のこと。


 リストラされたのは一昨日のことで。


 遠くに死んだ両親の顔は


 もう思い出すことができない。


 感情を置き忘れた虚しい心を


 この海が


 救ってくれるとは思ってないのに。



 ――命は終わったはずなのに


 私の目の前に老人一人。


 老人は、なくした心に呼びかける。



 主は、己の命を自ら絶った。


 ……………………………………………。


 大切に作られた人生を、自ら切るのは重い罪じゃ。


 ………………………………………………………………………。


 人間は、辛いことを乗り越え、そこに希望を見つけるもんなんじゃ。


 ………………………………………………………………………………さい


 だから自殺なんて、どんなに辛く、苦しくても、しちゃいかんのじゃ。



 主は自分に、負けたんじゃ。



  …………………るさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!


  お前に何がわかるんだ!お前ら年上はすぐ勝手なことばっか言う!何も知らないくせに!


  どんなに辛いかお前にはわかんねえよ!


  悪口言われて暴力されて物隠されて!助けなんかどこにもなくて!


  世を憎み人を憎んで、憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで


  憎んでも!大人になれば希望があると思った!


  家族を思って!未来を思って必死に働いた!働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて!


  身を削って娯楽もせずに!辛さを心に押し込めて!耐えて努力して!


  それでもも一度!もう一度人を信じようとした!世を信じようとした!


  なのにっ …それなのになんでっ!!


  

  ……どうじてだれもっ…僕を見てぐれないの……



 ………そうじゃったか… 


 主は、生命のサイクルに戻るか、外れるか決めることができる。


 主が、一番、この世で一番したかったことは、なんじゃ。

 


  ………僕が、したかったこと……



  一番、したかったことなんて……


  

  友に裏切られ、勉学に裏切られ、人を憎んで、世を恨んで、



  いじめられリストラされ離婚して



  楽しいことなんてなかった、この腐った人生に


  

  僕は、僕はただっ、



  両親と  友達と  彼女と  妻と  息子と  家族と


   


  ――――――ただ、生きたかっただけなんだ




  ……ふむ… …本当に、ええんじゃな?



  ………………………………………………………………………。



  思いは魂にのせ、僕は生命を次の僕に引き渡す。



  早く死にたいと、真っ黒な人生を歩んだのに



  そこにほんの少しでも希望があるから



  ―――――やはり、生命は繰り返す。


 

 生きるということは、本当に難しい。


   良いことや悪いこと、嬉しいことや悲しいことも、


   全部乗り越えていくことが、生きるということ。


   人と関わり起こる、感情の連鎖は、


   人々を悩ませ、さらなる壁を築き上げる。


   立ち止まり、『生きること』をやめるのはすぐできてしまう。


   しかし、きっとどこかに、あなたを必要としてる人がいる。

  

   あなたの味方になってくれる人がいる。


   だから、立ち止まらないで、逃げてほしい。


   逃げて、逃げて、みっともなくても逃げて、


   あなたの生きた証を


   あなたの命を、つなげてほしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ