015 最終
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迷宮を探索し始めて数ヶ月が経った。
俺とリーゼは少しずつ攻略を勧めようやく三回層へと足を踏み入れたが、そこが俺とリーゼの限界だった。
互いに力を合わせ、命を助けては助けられ、それでも頑張ったが二人だけでは三回層を抜けていくのは無理だという事だけがはっきりとわかる。
一度無理やりにでもと三階層へと挑んでそれがはっきりと実感できたのだ。
三階層は広い草原と森と山、それが一緒になった地形をしていた。
そして俺とリーゼが無理だと判断したのはそこで出て来るモンスターは群体だったからだ。
二体、三体程度であればまだ必死に頑張れば行けたかもしれない、だが最低でも六体以上、多ければ数十体という規模でグループやPTを組んで襲い掛かってくるのだ。
圧倒的なまでの力があればいけるのかもしれない、だが俺もリーゼも特別な存在でも無い、そんな力を持っている訳はないのだ。
そして挑んだ結果は俺は左腕を失い、リーゼは背中に大きな消えない傷を残して終わりを迎えた。
俺が無理に推し進め、進んだ結果だった。
リーゼに消えない傷を残した、俺は自分の腕が失われた事自体は自業自得であり、まだ右腕が残っているからかなりきつい事に放ったが納得はしていた。
だがリーゼの傷だけは別だ、これは俺のせいで俺が強引に推し進めたせいで出来たのだ、俺は謝る事しか出来なかった。
そんな俺にリーゼは嬉しそうに微笑んだ。
「良いんですよ? ふふ、寧ろ私は嬉しいです。だってこれはケルンさんを守れた証拠ですから」
「それに、ケルンさんはもう私を見捨てる事が絶対に出来なくなりましたよね? ふふふ、あははっ! それならこんな傷位なら幾らでも問題ありません! だってそのお蔭で離れる心配がなくなったんですもの!」
そんな事を言い出した。
突然のそんな笑い声を上げながらの宣言に目を白黒さえていた俺は、リーゼに抱き付かれる感触で意識を戻す。
「ケルンさんは優しいですよね、普通ならこんな変な子見捨ててしまうのに、ケルンさんは出来ないですよね? 嬉しいです」
狂っている、そう思えるような言動だがその瞳から感じられる感情に狂っている様な所は見受けられない。
「……良く解らないけど、最初からもう見捨てる何て選択肢は俺にはなかったよ」
俺はそんなリーゼを見ながら、溜息をつきそう声を返す。
「そうですか、そうなんですか。でも、私はそれが解りませんでした、だからケルンさんが絶対に手放せない、手を離したくない、そう思って貰えるように色々行動したんですよ? そしてケルンさんはこんな風になった私は絶対に離せないと思いますよね? これだけの間いれば少しくらいはケルンさんの性格も解ってきますよ」
リーゼは続いて私の全てはケルンさんの物ですよと心の底から嬉しそうに笑うのだ。
「だからケルンさんも私だけを見てください、私だけを、捨てないでください、頑張りますから。きっと大丈夫だって信じています、信じてはいますけど怖いです、だから、これからも宜しくお願いします」
そしてリーゼは最後にそう言ってくる。
「ああ、大丈夫だ。そんな事俺には出来ないよ、だからまぁあれだ、宜しくな」
それに俺はそんな返事を返すだけだった。
地味に、此処まで純粋に求められるという事に嬉しさを感じながら、此処まで思って貰えるならリーゼの為に頑張ってみようか、そんな事まで考え始めていた。
いや、可笑しいということくらいは解るが、それでもそれがどうしたのかと俺は思ったのだ。
今までは目的も理由も意味もなく、ただ約束を守る為だけに生きる、死なないと思ってきた。
隣で嬉しそうに抱き付きながら俺を見上げるリーゼ。
これからはそうじゃなく、このリーゼを守り、二人で生きて行けるように力を求め、頑張れば良いのだと俺は誓う。
今度こそ、今度こそ絶対に護り切って見せると、リーゼの隣こそが俺の最後の場所で終われるために。
片腕が無くなって一階にしか今は潜れない、これからもっと頑張りせめて二階で活動できるようにし、金を稼ぎながら力を付けて行くんだ。
そして最後の最後、リーゼの隣で共に笑い顔で射られる様に、俺はリーゼの手を取った。




