表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

龍神湖のStorry  8

時計をみるとそろそろ奈々子の来る時間だった。ほどなく奈々子から駐車場に着いたとメールがきた。部屋まで来るようである。扉がノックされて奈々子が入ってきた。奈々子は元気そうだった。 


「菜々ちゃん 体は大丈夫?」


徹は奈々子のことを菜々ちゃと読んだ。少し照れ臭かったが奈々子との距離を縮めたかった。奈々子は徹のそんな変化に応えるように 

徹さんと」呼んだ。

昨日 奈々子は鍾乳洞から帰ってきてから頭が痛くなって カフェ湖畔の椅子は18時までの勤務予定だったのだが17時で切り上げて帰ってきて そのまま今日のお昼まで寝ていたと奈々子は話した。鍾乳洞から戻って と聞いて徹も昨日あの鍾乳洞の中で気持ちが悪くなったことを思い出していた。それとさっきネットで調べたときに 生贄の少女を龍神様の隠れ家で龍神にささげたという記述が気になっていた。


奈々子が部屋に来てしはらくすると またドアをノックする音がした。徹が「はーい」と返事をすると 「田中です」と声がした。准教授の田中だとすぐにわかった。「どうぞ」というと田中が入ってきた。幾分、日にやけたようだった。入ってくるなり「邪魔だったかな」と二人の顔を見て言った。


「明日からの打ち合わせしようと思ってたんだけど 後からにしようか?」

田中は奈々子の来てるのを知って気を利かせたようだ。

今からでいいですよ」


そう言って徹は座布団を田中に渡した。民宿の部屋は8畳の畳の部屋だった。真ん中にテーブルを置いて周りにそれぞれが座った。奈々子がお茶を入れてくると言って食堂の方に歩いて言った。


返事をしてから奈々子には悪かったかな? とも思った。しかし、奈々子との付き合いを深めていくためには 僕は生まれる前からあなたを探してました。この言葉の意味するところを知りたい。田中は古くからのこの土地のことも知っている だから田中と話しをすれば何か糸口が見つかるのではそんな期待をしている。奈々子が冷たいお茶を持ってきた。


「もうすぐ夕食の用意ができるから食事をしながらお話をしたら」てここのおばさんが言ってましたよ。


「徹くん お茶を飲んだら食堂にうつりますか?」


「そうですね。田中さんに先にお話ししたいことがありまして」


そういうと徹はこの前からの不思議な出来事を田中に話した。


「その話を聞いて少し思い当たることがありますよ。食堂に移ってからお話ししますよ」


三人は食堂に移った。


「少し確認をしてから僕の思ってることを話しますね」


「まず 奈々子さん どちらかの肘に傷はありませんか?」


奈々子は夏でも日に焼けるのが嫌なので長袖をきていた。奈々子は


「傷はないですが左の肘のところにホクロならあります」


「あくまでも仮説でずが」


そう前置きをしてから話し始めた。内容はこうだった。


「昨日からの君たちのことを聞いて僕はこんなた説を立てましてた。奈々子さんは龍神さまの生贄になって命を失ったおけいさんの生まれ変わりなんです」


物証はないがそう考えると今度のことは説明しやすいのです。徹もそう考えたこともあったのだが 徹と悟の説明ができないのでその仮説は違うのではないかと考えた。

田中は


「全体的なことから説明します。質問があったらその都度質問してください」


三人は食堂に移動した。四人掛けのテーブルに徹と菜々子が並んでかけ 田中がその

正面に座った。


田中が話し始めた。

江戸時代になりますが、天保6年(1835)、いわゆる江戸時代の四代飢饉の1つ 天保の大飢饉のときに当時のこの村も例外でなく、水害に襲われたんだ。その前年も農作物の収穫がおもわしくなく今年も駄目なら村人の食料を確保することも難しいという状況だったんだ。


そこで村の庄屋の家に村の長老たちが集まり、龍神様の怒りが水害の原因だ、もうここまでの状況なら生贄を出して龍神様の怒りを鎮めて大雨を止めるしかないということになったんだ。この話はこの地域のお寺にいったときに当時の寺の住職が事細かに書き残してあったのを僕が確かめてきたんだ。


話を続けるよ。それで誰が生贄になるのか、これが重要なことになるのだが、村一番の器量好しを差し出さないと龍神様の怒りは収まらないということになって おけいという娘が選ばれたんだ。


おけいは 呉作という小作人の娘で器量は村一番だと誰しも認める娘だったんだ。小作人の呉作には、村の長老の決定したことに反対する力もないし、村を出ることもできずに おけいを生贄に差し出すしかなかったんだ。


まだたかだか180年くらい前の話だから少し前までは残酷な現実があったんだ。

そして差し出された場所が君たちと会った龍神様の隠れ家と言われている あの鍾乳洞なんだ。この村の言い伝えに生贄として差し出されたものは、生まれ変わって必ずこの村に戻ってくると言われているんだ。だから菜々子さんがあの鍾乳洞に行った時に体調を崩したのもわかるし、菜々子さんがこの町に移り住んできたのも当然のことなんだ。

僕はこの手の話を信じる方ではないが そう説明すると説明がつくんだよ。


田中がそこまで話してると食事が運ばれてきた。


先に食事をすることにした。菜々子が自宅で作ったにくじゃがを持ってきていて民宿のおばさんに許可を得て出してくれた。田中さんも一緒に肉じゃがを食べた。そして絶賛していた。


「いいお嫁さんになれるよ 徹くんが羨ましい」といささか気が早いと徹は思ったが照れながらも嬉しかった。


食事が終わって菜々子がお茶を入れ直した。田中はさっきの話の続きをはじめた。


僕が寺に言って調べたのはここまでなんだけど、実は当時の住職が別に書いたものがあるそうなんだけど 僕がいったときは所在が不明で見ることはできなかったんだ。その別に書いたものを見ればもう少し具体的なことがわかると思うんだ。その住職が生贄になる おけいに龍神様の隠れ家でお経を読んだと言われているんだ。


「田中さんそれだけだと 僕が初めて会った菜々子さんに、僕が生まれる前からあなたを探してました。生まれる前からあなたを愛してます。と無意識に出たこの言葉の説明にはならないですよ」


「そこが知りたいのです。あと菜々子さんの前の亡くなった彼氏と僕がそっくりであることの説明もできてないので。」


徹は田中に疑問なところを率直に話した。もし 当時のおけいさんに好きな人がいてその人の生まれ変わりと仮説を立てるにしても 生まれ変わりが徹と聡の二人いるのでは合理的な説明にはならない。


「明日 一緒に寺に言ってみよう。先日見れなかったもあ一冊の書き写しが見つかっていると思うんだ。」


徹と田中は明日の朝 8時に出発をすることを確認して別れた。徹と菜々子は食堂に残った。今夜は泊まりの客が多いので菜々子が手伝うことになっていて それで菜々子も一緒に夕食を食べたのであった。

菜々子は「今から手伝いにはいるね」というと調理場の方に消えていった。


徹は夕食を食べたあと部屋に戻り、さっきの田中の話を思い出していた。菜々子さんは そのおけいという少女の生まれ変わりだとしても説明はつく。しかし、徹がそのおけいさんの恋人の生まれ代わりとしたら 僕にそっくりだった菜々子さんの前の恋人は ただ偶然、僕に似ていただけなのだろうか?


そこが徹にはひかかっていた。あとこんなことも考えてた。いま 徹が菜々子のことを好きなのか? それとも過去の生まれ変わる前の誰かが菜々子のことを好きなだけで 徹自身はどうなのか?


普通に考えているときは間違いなく徹の脳は100% 徹が支配している。だが菜々子のことなると脳が一人歩きしてしまう。100% 徹の支配下で動いてないような気がする。いろいろ考えていたら菜々子からメールが入った。夕食の手伝いが終わったから帰るという内容だった。


徹は急いで食堂に行った。菜々子がお茶を飲んでいた。徹に気づくと席を立ってお茶を入れて持ってきてくれた。


「明日 お寺に行ってくるね 気になることがいろいろあるから調べてくるよ」


「うん いろいろありがとう 疑問なことがわかるといいけど」


徹はお茶を口に運んだ。菜々子ともっと深い関係になりたい。今夜帰したくない そう思う気持ちが強くあるのだが 徹はこの不思議なことがわからないと 前に進めないという気持ちも強くあった。裏を返せばそれだけ 菜々子とのことを真剣に考えているということになるのだが 徹自身は自分の真意がどこにあるのかわからなかった。


そのあと菜々子を駐車場まで送った。菜々子の車のテールランプが夏の夜の闇に消えていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ