龍神湖のStorry 5
翌朝、徹は6時に目が覚めた。寝るときに窓を開けると風が部屋の中まで入ってきたのでエアコンは使わずに窓を網戸にして床についた。自然の風が心地よかったのか、朝まで目を冷ますことなぐっすりと眠れた。
朝食は7時からだった。時間があるので民宿の周りを散歩した。外の温度はすでに30度をこえてるようだった。
散歩から戻ると7時を過ぎてたので食堂に行くと40歳くらいの男性が食事をしていた。徹がその男性に おはようございます と挨拶をすると顔を上げて おはようございます と返事を返してくれた。
民宿の食事は、豆腐と油揚げの入った麹の白味噌の味噌汁、漬物、のり、焼き魚と卵焼きだった。徹は麹の白味噌の味噌汁の甘みのある味が美味いく感じた。
食事が終わって食堂でテレビをみていたら、先に食事をしてた男性が戻ってきて 徹に話しかけてきた。その男性は短大の準教授で氏名は田中幸雄、全国の湖のにまつわる伝説と江戸時代の住民の暮らしを研究してることを話した。
徹も学生であること まだ進路が決まってなくあてもなくここに来たことを話した。田中は暫く考えて
「ここにはあと二週間ほどいるんだけど、僕の手伝いをやってみないか? ここの民宿の宿泊代金くらいしか出せないけど」 と言って今度は名刺を徹に渡した。
詳しく田中の話を聞くと旧盆にこの地域の祭りがあり、その祭りまでみどり湖の龍神伝説と江戸時代のこの地域の住民の湖との関わり方を調べる予定をしているのだが大学の仕事が急遽入り、予定通りに済まないので徹に手伝ってほしい とのことであった。
徹は名刺の携帯番号を確認すると
「お昼までに携帯に返事をいれます」と返事をして食堂を出た。
部屋に戻り携帯を見ると菜々子からメールが来てた。予定通り9時に民宿に来るとの内容だった。時計を見ると8時半だった。
暫くすると菜々子からメールが入った。民宿の玄関にいるという内容だった。徹が玄関先まで行くと、菜々子はコンビニの袋を持っていた。そして徹に
「いま来る途中で下着を買ってきたから」と言って手渡した。
徹も民宿を出たら下着を買おうと思っていたので
「すいません、助かります。いくらですか?」と聞いた。
菜々子は「いえ、この代金はいいです。私のせいで遅くなって泊まってもらって宿泊代もかかってるから」と言って代金を受け取ろうとしなかった。
徹は菜々子の気遣いが嬉しかった。徹も今まで何人かの女性と付き合ってきた。でも年上の女性は初めてだ。まだ何も知らない未知の女性ではあるのだが、解り合えてるそんな思いも頭のどこかで感じていた。
菜々子も昨日あったばかりの青年に心を許してしまっている自分が不思議でもあったる。今までだったらありえないことである。
顔立ちははっきりとしているのに、美人にありがちな冷たい感じはない。そして聡明である。そんな菜々子は今まで何人かの男性に言い寄られたが、高くガードし男たちから自分を守ってきた。
なのに徹がいとも容易く、菜々子の心の中に入ってきて根をしっかりと植えつけようとしている。この奇妙な安心感は何を根拠に芽生えたのだめうか?
徹は「お言葉に甘えます。着替えてくるので少し待っててもらえますか?」と言って部屋の方に消えていった。
暫くして戻って来た徹は
「今日は何時までにカフェに行けばいいのですか?」と聞いた。
「13時までです」
「今日は昨日の不思議な出会いのことは忘れてお昼まで時間をすごしましょう」
菜々子は ゆっくりと頷いた。
「昨日、民宿の人に聞いたんですがみどり湖を過ぎてもう少し走ると鍾乳洞があると聞いたんですが、そこに行ってみたい思ってるのですが、どうですか?」
「暑いからちょうどいいかも、鍾乳洞は天然のクーラーで夏でも中はひんやりとていて気持ちいいですよ。私の車で行きましょう。徹さんはここに車を置いていきましょう。私がおばさんにお願いしてくるわ」と言うと奥の方に歩いて行った。
徹は会計をすませると菜々子の車に乗った。