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龍神湖のStorry  10

あの日、菜々子に別れを告げてから6年 奇しくもまた龍神湖の大祭の年に当たる。

天保6年から180年、あの年から30回目の大祭の年でもある。


6年前、自分の意思でない、生まれ変わる前の太助の意思で、菜々子と一緒になるのは嫌だと言って別れてから菜々子とは一度も連絡もとってはいない。自分から決めて別れたのにこの6年、徹の心から菜々子が消えることはなかった。


この道を登りきって左に曲がるとカフェ湖畔の椅子が見えてくるはずだ。坂道を登りきって左に曲がった。湖畔の樹木の向こうに懐かしい建物が見えた。建物の上に青空が広がっている。

湖畔の椅子まで30mくらいまで来たとき、徹はそこで足を止めた。あと少しすると18時になる。前と同じなら18時に彼女は終わるはずだ。彼女の終わるのを待とう。

徹は遊歩道の所々にあるベンチの1つにに座った。そしてゆっくりと周りを見渡した、自然はたった6年では何も変わったてはなかった。


人の6年はいろいろな変化をもたらすが自然は変わらない。もしかして180年前も今の景色とそんなに違ってないのかも、おけいや太助も同じ風景を見ていたのかもと思った。


暫く周りの龍神湖の自然を眺めていると、湖畔の椅子のドアが開いて女性が出てきた。6年ぶりに見る菜々子は何も変わってはいなかった。龍神湖の湖面を背中にして遊歩道をこっちに歩いてきた。


徹はベンチから立ち上がった。菜々子が徹に気づいた。


「徹さん?」


菜々子は呼びかけた。


徹は今回は自分の意思で 菜々子に言った。


「僕は 生まれる前からあなたを探してました」


菜々子は立ち止まった。立ち止まった菜々子の後ろの湖面に夕日が落ちようとしていた。菜々子はしっかりと徹を見ていた。


「僕は 生まれる前からあなたを愛してました。そしてこの6年間もあなたを愛してました」


「僕とこれからの人生を一緒に歩んでください」


菜々子の目から涙が溢れた。


「はい」


少しの沈黙のあとに菜々子は はっきりと答えた。菜々子は突然のことで状況が把握できなかったようだったが、徹が迎えに来たことがわかった。

菜々子は徹がいつかくることを信じていた。信じて待っていた。


徹はしっかりと菜々子を抱きしめた。

龍神湖の湖面が沈み行く夕日に照らされて黄金色に輝いていた。180年間 2人を引き離した龍神湖が、まるで2人の再会を祝福してるかのようだった。


                                  おわり

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