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気まぐれな短編集

異世界帰還者対策課

作者: 紫陽花の人

夜、暗く街灯のない道路を彼は、滑るように移動していた。いや、滑るようにではなく実際に滑っているが。


ともかく彼は当てもなく歩いているようだった。


"パァン"


突然銃声が鳴り響く。


"ビチャ"


弾丸は彼に命中したようだが彼は気にも留めない。


"パァン"


"ビチャ"


"パァン"


"ビチャ"


弾丸を撃ち込まれてもまるで効いていない。そして、ポツリとそこにある街灯に照らされ彼の姿が闇から浮かび上がる。


"異形"


その言葉が当てはまるような体躯をしていた。下半身はまるで蛇のような形をしている。上半身は体が水のようなもので構成されており、先程撃ち込まれた弾丸が体の中程で止まっていた。腕は細く鞭のように長くなっており、その先からは3本の長く鋭い爪がアンバランスに存在していた。唯一、頭の部分はヒトの形を保っているが、目は血走り瞳に理性は見受けられない。

そんな彼はただ真っ直ぐ進む。と、その時


"パリン"


と、何かが砕ける音がした。それは彼の額からだった。彼の足元にはサファイアのような深い青色をした砕けた宝石が転がっていた。


「ぅがぉ?」


彼が足元に目を向け、その砕けた宝石を確認すると同時に、彼は倒れた。正確には倒れかけた、だ。

何故なら、倒れかけると同時に彼は灰となり消失したからだ。


「しまった。あぁ殺っちまった。」


「なにやってるんですか!?貴重なサンプルですよ!?」


そこに男女が駆け付けるが、そこには先程までいた"異形"は跡形もなかった。



case1 炎地竜


「また殺してしまったのか!遺族の方になんて言えばいいんだ!」


異世界帰還者対策課では今日も彼、杉崎 まもるの怒号が響き渡る。


「全く!あのなぁ、お前の狙撃の腕はかっているが、殺すのではなく無力化しろと何度言ったら理解できるんだ!」


「すみません」


「サーセン」


今、普通に謝ったのが狙撃の腕を買われ、昨夜、対象を殺してしまった井ノ上 蓮 である。そして、彼の隣にいるのが、異世界から帰還した元聖女・・・の水崎 凉子 である。


「水崎!少しは上司すぎさきを敬え!全く。報告書は今日中に出せよ。」


そんな彼らに後二人加えて総勢5名の異世界帰還者対策課である。


主な活動としては、異世界から帰還した者の保護と処置・・である。


「失礼しまーす。青少年消失対策課でーす。そっちの案件っぽいので持ってきましたー」


青少年消失対策課。異世界帰還者対策課より以前に発足し、現在では主に異世界召喚・・・・・される子供たちの後始末を行っている部署である。

そんな彼等は異世界帰還者対策課と協力し帰還した者の対処を行っている。


「待ってくださいよ!私達昨日、水蛇蜥蜴アクアリザードマンの対処してたんですよ!?まだ報告書も……」


「そんなことよりもさ、火力発電所に居座っているこの子をどうにかしてよ。俺達じゃ手に負えないんだよ。」


「仕方ない。水崎、行くぞ。」


「待ってくださいよ!?先輩置いていかないで~」


と、二人は対策課を出ていく。


そんな二人を見つめていた杉崎は、


「胃薬切れてる……」


と、呟いた。




「ここが例の火力発電所ですか。たしか彼は炉に居座っているですよね?」


「そうみたいだな」


彼等は早速、火力発電所に来ていた


「えー彼の姿を見た係員の証言ですが、『四足歩行で体に岩が張り付いているみたいだった。しかも炎を食べてた(・・・・)』ですって。どうします?」


「とりあえず、炉を停止させて外へ誘き出す。その後に俺が誘導するから捕獲用の罠を設置してくれ。」


「了解です!にしても、この証言から考えると"炎地竜"って感じですね!」


「また、なんだその名前は。勝手に名前をつけるなと何度言ったらわかるんだ。はぁ、とにかく。俺は中に行くから。」


そう言って井ノ上は火力発電所の中に入っていく


かんかんかん


靴音を出しながら管理室へと向かおうとする。

が、井ノ上の足が止まる。


と、同時にバックステップ、更に左にローリングし炎のブレスを避ける。


「縄張りに入ってくる奴は容赦しないのか」


"ドン!"


井ノ上の目の前には、炎を纏った姿の炎地竜・・・がいた。


"パァン"


井ノ上は安全装置を外したcz100を発砲。が、炎地竜はびくともしない。


「がぁぁぉぉぅぅ!」


炎地竜が咆哮すると同時に口からマグマを吐き出す。床は溶けていき井ノ上は逃げる。しかし、目の前には炎地竜がいた


「回り込まれたかっ」


"パァンパァンパァン"


cz100を続けざまに発砲するが炎地竜はうっとおしそうに唸るだけ


そして、最後の1発を放つ。


"ドロッ"


弾丸の中からドロドロした液体が大量・・に流れ出てくる。すると、炎地竜が纏っていた炎は消える。更に炎地竜を包み込むように存在している液体が粘着性を増し、炎地竜をその場に縫い付ける。


「はぁ、粘液弾が役に立つとはな。とりあえず、水崎に連絡を……」


"パリンッ"


「まさかっ!」


そこには、割れたルビーのような色をした宝石が、砕け散っていた。






「また失敗か、そうかそうか自爆されたか。それは仕方ないか。はぁ、報告書が増えたぞ。良かったな、それではな」


連絡を受けた杉崎は、胃薬を飲みながら。一つの書類を手に取る。


「新しいメンバーか。面倒なやつじゃなければいいがな」


異世界帰還者対策課case1 保護失敗


お読みいただきありがとうございます。不明な点や誤字脱字等がありましたら、ご指摘のほど宜しくお願い致します。

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