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十二年の月日

この世界に産まれ変わって、あれから十二年の月日がたった。


今、住んでいるこの国の名前はイステリアル皇国という名前らしい。

親と呼ぶのに少し抵抗があるのだが両親はこの国の貴族であった。正直なところ貴族というものは歴史の中の存在であったのでしっくりはこない。

そして、その貴族の息子というのもどうにも馴れない。


家というより屋敷に戻ると誰もがこちらにお辞儀をし、お坊ちゃん、お坊ちゃんだ。

しかも、魔法というのもあるのだから驚く。まるで、御伽噺である。

といっても、自分には素養がないらしいのであまり関係はない。


元の世界よりも満ち足りた生活をしているのは確かだ。

本を読むのが好きな俺としては色々と買ってもらえるこの身分はとてもありがたかった。

そのせいで上の兄達から疎まれているのは確かだが…どうしようもない。


「お坊ちゃん、お坊ちゃん」

「ああ」


振り向くと、初老の老人が立っている。

俺のお目付け役のルベイルだ。柔和そうな顔をしてこちらを見てニコニコとしている。


「旦那様、奥方様がお呼びですよ」

「あ、ああ。ごめん考え事をしてたんだ」


子供らしく振舞う。流石に敬語を使うわけにもいかない、向こうからしたら俺は小さい子供なんだ。

大人びた口調でいたら流石に薄気味悪いだろう。


「お坊ちゃまはホント、考え事がお好きでございますね」


そう言って嬉しそうに笑う。


「いや、大したことは考えてないんだ。ただ、空が何で青いかなぁーって考えてただけだよ」

「そうでございますか、答えは出ましたか?」

「いや、全然」


笑って答える。


「それはですね、色の神でカラロス様がですね……」


こうやっていつも御伽噺を聞かせてくれる。

この世界での御伽噺なのだろうが興味深く面白い、こうしてよく話を聞かせて貰っている。

屋敷に戻る道中何個かイステリアル皇国に伝わる話を聞かせて貰った。


屋敷に着くと相変わらず大きいと思ってしまう。確かに、自分が子供であるから大きく見えるというのもあるだろうが……それを、差し引いて大きい。


門を開けると噴水が見え、相当な広さの庭と遠目からでも見える大きさの屋敷が見える。


昔、仕事をしに行った相手の住居がこんな感じだったのを思い出すが、それでもこれよりは小さかった。


「お坊ちゃま、お帰りなさいませ。もう、旦那様方はもう広間に集まってますよ」

「うん!」


近くのメイドがそう教えてくれる。

まさか、本物のメイドを見る日がくるとは俺も思わなかった……この世界にきて驚くことばかりだ。


無駄に広くて長い廊下を駆け足で行く。


広間の場所は頭に入っているがそれでも迷いそうだ。

もう少し小さくてもいいと思う。


一つの扉を開ける。


「ただいま!お母さん、お父さん!!」


元気よく子供らしく声をあげ入る。


「遅いぞ、ラウ」

「ごめんなさい」


父の叱咤の声で少し項垂れてみせる。

……今の俺の姿を見たら上司は絶対に腹を抱えて笑うだろうな。

想像がつく。


「いいのよ、今日はみんなでおでかけだから」


母親が助け舟を出してくれる。


「はい、ごめんなさい」


見ると、もうすでに家族全員が集まっていたらしい。

母と父、兄が二人に妹が一人、これが今の俺の家族である。


血は繋がってるのだろうが、前の記憶があるせいで他人にしか感じない。


「ホント、遅いぞラウ!!」


一番上の小太りの兄が文句を言って、それに便乗するように二番目の中々もてそうな顔の兄が囃し立てる。

正直毎回思うのだが、一番上の兄はホントに遺伝子が繋がっているのだろうか疑いたくなる。


「ごめんロウ兄さん、リウ兄さん」


とりあえず、謝っておく。

母に諌められるが、まだ、上の兄達はぶつくさと言っている。


「ったくよ」


とはいえ、そこは子供でありすぐに機嫌を治し、出かける準備をする。

今日は買い物だ。月の一度、こういう家族総出で出かける日がある。


「みんな、準備できた?」


母の言葉に全員が元気よく返事をする。

勿論、俺もしっかりと返事をする。


外で馬車が待っている。

これに全員が乗り、市場に向かうのだ。



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