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エピローグ1


頑張って書き上げていこうと思います!

感想、指摘などありましたらぜひお願いします!!

とある高級マンションの一室で右手でナイフを持っている男と太った中年の男が対峙していた。

調度品などが並び外の眺めはよく、深夜のせいで外の夜景が綺麗になっており、ここの持ち主が裕福なのがわかる。

そんな中で穏やかに済みそうもないな、とナイフを持った男、柴村 犬は思った。

といっても穏やかに事が進んだことなどこの仕事で一度足りともないのだが。


「何だね君は!?こ、こんなことをして……ただで済むと思っているのか!!」

「さっきも言った通り。殺し屋です」

「ば、馬鹿な冗談も大概にしたまえ!!そ…それに、何故っ私が殺されなければならんっ!」


中年の男のズボンの上で醜く揺れる腹が目に入る。

政治家が私腹を肥やすというのは聞くが本当に肥えているものだな。

脂ぎった顔と清潔さを感じない雰囲気をだしている。


「あの政治家かが違法な組織と密会!!って見出しの新聞が最近、世間で有名になってるからそれじゃないか」


事実、その通りであった。

政治面では大したことはないが、その密会の様子を記者に撮られ記事になり世間を賑わせているから大したものだとは思う。


「いや…あれは……」

「密会をしているのがバレさえしなければこういう目には合わなかったんだろうが……仲間なのかどうかは分からないが他の政治家に不要だと思われたんだろ」

「……う」


思い当たる節があるようで言葉につまる。


「そういう訳で俺が派遣されてきた訳だな」

「だが…だからといって殺す必要はないだろっ!!」

「それを俺に言われて困る。俺は上から殺せと言われてここに来たんだ……上司にこの仕事をやれと言われたら、とりあえずやっておくのが吉だろ?」

「待て、待ってくれ……君はその、なんだね私をこ、こ…殺すのかね?」


その言葉に頷くと、声にならない悲鳴を上げて後ろに下がる。

こちらがうごくのを阻止するするように早口で喋る。


「待ってくれ…!そうだ、君を雇ったお金の倍は出す!!だから……止めてくれ、私には妻と娘がいるんだ!!まだ、死にたくない!!やめてくれ、許してくれ!!」


情けない姿だとは別段思わなかった、よくあることだ。正直、気持ちは分からないでもない。

ある日、突然人が来て殺しますと言われたら誰でもそうなるだろう。

だがお金を受け取る訳にはいかないし、このまま帰る訳にはいかない。


「金を受け取る訳にはいかないな」

「そこを頼むっ!!」


泣きながら土下座をし始める、その様子を見ながら口を開く。


「頭を上げてくれ、仮にだ俺がこのまま帰っても他の奴が雇われてくるだけだ。諦めろ」

「そこを何とか頼む!!」


頼まれても困るんだ、このまま殺したほうが早いような気がしてくる。


「それに聞け、俺だから他の事をしない。他の殺し屋ならお前の家族に手を出してくるかもしれない」

「か、家内とむ……娘にか!?」

「そうだ、もしかしたらお前の両親も被害に合うかもしれないな」


恐怖感を煽る。


「そんな…」


その状況を想像したのだろう元々白かった顔がさらに白くなる。

顔をあげこちらを呆然と見る男の傍に縄を置く。


「これで自殺しろ」

「じ、自殺…」

「俺が殺してもいいが…自殺のほうがプライドは傷つかないだろ」


震える手で縄を掴むが、手の震えが伝染したかのように体が震えはじめる。


「それにお前がここで死ねば、誰にも迷惑はかからないんだ。家族も無事だし誰も危害はかからない、お前一人が死ねば、だ」

「……しないと」

「家族に危害が加わるかもしれないし、もっと酷い目に合うかもしれない」

「………分かった、死のう」


その潔い言葉に、ほおっと思った。

内心自分の手を汚す必要があると思っていたが、まさか必要なくなるとはな。

悟りきった落ち着いた顔であり心強さを感じ、この雰囲気であれば票を入れるやつがいてもおかしくないなとまでも思った。


「遺書用だ」


内ポケットから便箋を出し手渡すとそれを素直に受け取り礼まで言われる。


殺しにきた相手に礼を言われるのも変な気分だな。


「君はいつもこういうことをしているのかね?」


しばらくして政治家の男は机に座り便箋に言葉を残しながら、尋ねてくる。

よくあることの一つだ。死を覚悟すると、殺しにきたはずの男をまるで旧友のように感じるのか親しげに接してくる。


「こういうこと?、この仕事のことか?」

「そうだ」

「仕事だからな…もう二十歳から初めてもう四年になるな」


指で日数を数える。


「以外に若いんだな、もっと上だと思っていたよ」

「よく言われるな」

「後悔はないのか?殺し屋をしていて」

「政治家をやっていて後悔はなかったか?あるだろ?」


柴村の言葉に、ああ、とだけ返事をする。


「それでも、続けてるだろ。それと同じだ、辞めたくても半ば義務みたいになっているな」

「そういうものか。だが、辞めたいと…思ったことは?」

「あるな」


正直に吐露した、辞めたいという気持ちはある。


「だけど辞めれないからな、そう簡単には」

「つらいな」

「ああ、つらいな。人を殺すのに罪悪感がない訳じゃないしな」

「なら、私が死ぬのにも罪悪感を感じるのか?」

「勿論だ」

「なら、良かった」


そう言って乾いた笑いをすると縄を天井にひっかけ椅子の上に立つ。

その様子を見守る、ここにきて死にたくないと言い出さないように。

だが、その心配はなかった無言で首に縄をかけ椅子をけり首を吊った。

しばらく苦しそうな息切れをしたような声というよりも音に近いものを発していたが、やがてなくなり死んだ。

最後まで見届けないといけないとはいえ何度見ても気分がいいものではなかった。


男が書いていた、遺書を手に取り目を走らせ中身を確認する。

変なことが書かれてないか暗号のようになっていないかをみるが、何の変哲もない、ただ家族に宛てた手紙であった。


「これなら、処分の必要はないだろう」


遺書を元の位置に戻す。

マンションから出るとき一度死体をチラッとだけ見て出る。



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