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迷宮のドールズ  作者: オグリ
三章
69/88

緊急警報(サイレン)

 荒れそうな様子もなく、海は静かだった。

 天気は良いとは言えないが、雨でなかったのは幸いだった。


「でも、またいつ降るか分からないな……」

 誰に言うともなくシオンは呟いた。

 ニコねこ屋の車に積んでもらっていたバッグを下ろすと、中から同じグローブを何枚か掴んで取り出す。一つはいつも通り手にはめ、残りをウエストバッグに押し込む。滞在中にもう何度も替えた。

 冒険者になって二年と少しだが、短期間でこんなに多くのダンジョンを一気に探索したのは初めてだ。曇り空を眺め、シオンはふうと短く息を吐いた。

 べたつく海風が髪や耳の毛に張り付くような感覚。海側はやはり好きになれない。


 ――今日で終わりだ。


 十日間の滞在でアタックしたダンジョンは三十を超えている。自分たちが行っていない場所はニコねこ屋が調べてくれた。たった四人でかなりのダンジョンの数を下見してくれた。彼らにもセイヤにも感謝しなければならない。

 それにしても驚くべきは、房総半島に存在する洞窟群の数だった。ダンジョンと認定されている洞窟の数は百なんて軽く超えている。一回の滞在で調べ尽せるはずもない。今回は南房総市を中心に、その一部を探索しただけだ。



「今日もがんばろうね、こっこちゃん」

 海犬シードッグクレイの背に腰かけたアイカが、紅子に声をかけている。紅子はいつものように元気良く――はなく、ただ笑顔で大人しく頷いた。

「あんまり気負わなくて大丈夫だからさ。ほら、ここだって関東だよ? 近い近い。夏休みの間にまた来たらいいじゃん」

「あ、ありがとう……」

「あたし、待ってるよ。またおいでよ? ね」

 そう言って、アイカが紅子の手を握る。こくこく、と紅子が頷く。なんかもうすでに泣きそうになっている。

「もー、泣かない泣かない。いっぱい魔法勉強してきたんでしょ?」

「うー」

「こっこちゃんって、ほんと冒険者に向いてないよねぇ」

 泣きべそをかく紅子に、きゃははと笑いながらアイカが腕を回し、ぽんぽんと背を撫でる。

 その光景をシオンは黙って眺めていた。

 冒険者には向いてないって言うなって、オレには言ったくせに……。

 しかし同じ歳のアイカと一緒にいると、紅子も気が休まるようだ。それはシオンたちには出来ない役割だった。

「がんばろーよ。そんで、楽しく誕生日迎えよーよ」

 アイカが紅子の手をぎゅっと握り、にこっと笑う。その腕には小さな魔石を連ねたブレスレットがキラキラと輝いていて、

「ね、こっこちゃん。これ、見て」

 と、自分の腕にはまっているブレスレットを見せる。

「わ。可愛いね」

「自分で作ったの。クズ石だけど、海にこうゆうの落ちてるときあるから、小さい頃から少しずつ集めてね。ね、これも元々は大きな魔石だったのかもだよね? そうゆうの、けっこうあるんだ。だから、こっこちゃんの探し物の石だって、きっと見つかるよ」

「……う、うん」

 と言いながら、紅子の目がみるみる潤んでいく。

「もー、また泣くー。これからダンジョンだよ?」

「ごめんー……」

「ちょっとかがんで、こっこちゃん」

 紅子が膝を曲げると、クレイの上に座っているアイカが紅子をぎゅっと抱き締めた。そしてまた背中をぽんぽんと叩く。

「もうちょっとだから、がんばろ」


 そんな様子をシオン同様に眺めている仲間たちが、口々にぼやいた。

「もー準備出来たぁ? 早く探索して帰りたーい。あたしもおじいちゃんとおばあちゃんに会いたいよぉ」

「そうだな。私も早く帰って足を伸ばせるうちの風呂に入りたい。水上歓楽街には行けなかったし、私がマーメイドに近づこうとすると、リョータたちが邪魔するし、夏の海はもっと楽しいとテレビでやっていたのにちっとも楽しくない。シリンちゃんとセイちゃんに会いたい。きっと二人とも私に会いたいだろう」

「もう全員冒険者辞めたら?」

 緊張感が無いのは、いいのか悪いのか、このパーティーの特徴だなとシオンは思いながら、ニコねこ屋の様子を見る。

 ワーキャットとは思えないほど真面目に、黙々と探索の準備をしてくれている。

 彼らへの報酬はセイヤが払ってくれることになっていると聞いた。これだけ働いてもらっているのに、シオンたちからは一銭も受け取らないという。それはストライブとの抗争を収めたことや、紅子がレンの怪我を治したことに彼らが恩を感じてだが、それにしてもずいぶんと世話になってしまった。

「でもさぁ、あんな調子で紅子、大丈夫なの?」

 いつもの大荷物に、おじいちゃん人形を胸に抱いたキキが顔をしかめた。

「初心者だろ。ナーバスになることもあるさ」

 ハイジは案外寛容に、特に気にしたふうもなく言った。

「魔力底なし娘とは言っても、体力はまあまあ人並みだからな。ハイペースで探索した疲労が蓄積したのだろう」

 蒼兵衛がまともなことを言ったところを久々に見た。

「我々と足並みが揃わんこともあるだろう。魔力が多いのと食欲以外は、そこそこ普通の人間の娘だからな」

「お前は人間なのに人間じゃないもんな」

 キキが口汚く言った。

 考えてみればシオンも、女性冒険者とこんなに長く行動したことがなかった。いつも明るくてムードメーカーの紅子が、こんなふうになるのかと、正直シオンは戸惑っていた。

 どんなに魔力がすごくても、彼女は新人冒険者で、普通の女子高校生だ。初めての長い冒険に体力も限界で、精神がまいっている。

 冒険慣れてしている自分たちのペースで探索したことをシオンは少し後悔していた。もっとペースを上げて探索しても足りないくらいだが、焦ることでかえって紅子のコンディションを崩してしまった。

 あの強かった桜でさえ、仲間に弱みを見せていたのだ。

「こっこちゃん、やれる?」

「……ん、大丈夫。ありがとう、アイカちゃん」

 少し落ち着いたようだった。顔を上げた紅子は、いつも通りの紅子だった。胸の前でぐっと両の拳を握る。

「最後までがんばる。私の《探しもの》だから」


 アイカがいてくれて良かった。紅子が落ち着いたのを見届けて、シオンはパーティーメンバーに声をかけた。

「――今日で最後だ」

「うん!」

「ほーい」

「やっと仲間外れじゃなくなった……」

「あまり騒がないように」

 それぞれがそれぞれらしい返事をしたのを確かめ、シオンも頷いた。


「行くぞ」




 シオンたちがダンジョンに入った後、ニコねこ屋のレンがピクッと耳を動かしながら、海のほうを見やった。

「――今、変な音しませんでしたか?」

「あ? なんだって?」

 車の中からマップを取り出していたリョータが、頭を上げた。

「わりぃ。これ探してたから聞いてなかった」

「風と波の音に混じって、なんか咆哮みたいな」

「ミナも聴いたかもー」

 ワーキャットの聴力は優れている。遠くの音を聴き取る能力はワーラビットほどではないが、複数の音を聴き分けることが出来る特性を持つ。波音や吹きつける風の音に紛れて、遠くに出現したモンスターのかすかな咆哮を、レンとミナは聴き取ったのだ。

「超大型のシーモンスターが浅瀬にやってくることもあるわ。でも、ダンジョンの中には入って来られないから」

 ユエが言った。

「一応、シオンさんたちに連絡だけしておきましょう。千葉の冒険者センターにも。私たちは、外のダンジョンを出来る限りの時間で調べましょう」

「大丈夫ですかぁ……」

 いつも明るいミナが、不安げに耳を下げた。

「あたしたち、海は苦手だから、大型のシーモンスターなんかに襲われたら絶対ヤバいですよぉ」

「なにビビッてんだよ」

 蒼兵衛を慕っているレンがぎろりと睨む。

「だってぇ、今日はソウさんいないし……」

「普段面白がってるくせに、結局ソウさんに頼るんだな」

「オイ、ケンカすんな。仕事中だぞ」

 後輩たちにリョータがいつもの軽い口調ではなく、厳しい口調で言った。

 ユエが相変わらずの無表情で告げる。

「大丈夫よ。私たちのほうにも、今日は頼りになる助っ人がいるから」

「助っ人?」

 ミナが耳をぴくぴくと動かしながら、首を傾げた。

「それって戦える人ですかぁ?」

「ええ。戦いの専門家よ。さぁ、あと少し頑張りましょう。あのときに受けた恩を皆さんにはきっちりお返ししないとね」




 ニコねこ屋と二手に分かれて始めたダンジョン探索は、いつもと同じ調子だった。

 つまり、大した成果がなかった。

「次、行こう」

 ダンジョンから出て、シオンがそう声をかける。皆それぞれに頷いているが、紅子は青い顔をしている。

「こっこちゃん、気にしない気にしない」

「う、うん……」

 アイカに慰められ、紅子が頷く。

「もういっそ、この海には何も無いって、なんない?」

 キキが言うと、紅子はうっと声を詰まらせた。泣きそうな顔だ。

「ごめんなさい。私の感知能力がもっと高かったら……」

「こっこちゃん、泣かないで」

 アイカがクレイの背にくくりつけたバッグからタオルハンカチを取り出し、紅子の目許を拭う。

 シオンは無言でキキの耳を掴んで引っ張った。

「いってえ! 黙って暴力振るうの反対だよ!?」

「黙って探せ」

「この小ワニを海に放り投げる手伝いならするぞ」

「キキちゃんに何かあったら神奈川のリザードマンが黙ってないよ!?」

 ギャアギャアとうるさいキキにも気にせず、ハイジがじっと海を見つめている。

「どうした? ハイジ。何か視えるのか?」

「昼の海にゴーストってそんなに出ないけど」

 クレイの毛並みを撫でながら、アイカが言った。ハイジが黙っているので、シオンが代わりに答えた。

「並みのシャーマンが感知出来ない霊体も、ハイジには視えるんだよ」

「へぇ」

 淡い灰緑色の瞳を、ハイジは遠く沖のほうに向けた。手にした短いワンドで、遠くに見える水平線の上に向ける。

「こういう曇りの日の海には、ゴーストとも言えない霊体が、ふわふわと漂っていることが多いんだけどね。今日はそれが無い。そういうときは……」

「――わたし……」

 ハイジの言葉を遮ったのは、タオルハンカチで顔を覆った紅子の泣き声だった。

「……わたし、欲しいのに……どうして……」

「こっこちゃん?」

 顔を覆ったまま、紅子が背を丸め、うっと声を詰まらせる。背負っている長杖ロッドの先端についている赤い魔石が、こうこうと輝き出した。

「わたしのなのに。わたしがほしいって、おもってるのに。こんなに……こんなに……なのに……どうして……いつも、みんなに……おのはらくんに、めいわくかける……」

「浅羽、気にするな。トレジャーハントなんてこんなものなんだ。誰も苦に思ってない」

「そ、そうそう。キキちゃんまだまだ元気だよ!」

 シオンが優しく声をかけ、キキも声を上げる。

「……どうして……? いじわるなおじいちゃん……こっこは、だいきらい。おじいちゃんのせいで、みんな……おとうさんも、だいすきなおにいちゃんも、いなくなったんだもん……」

 まるでぐずる子供のように、紅子が涙と共に声を落とす。

「浅羽、少し休んで、メシにしよう」

 シオンの言葉に、紅子は顔を上げた。

「ごはん?」

「ああ。メシ食ったら、元気になる。腹減ってるんだろ?」

 紅子は自分の腹を手で押さえた。子供のようににこっと無邪気に笑った。その目は真っ赤に輝いていた。

 シオンの背中に悪寒が走った。飛びのいて後ずさりたいのを堪えるが、何度見ても慣れない。瞳の赤い紅子に。

 その瞳がシオンを捉え、口許がにたりと歪む。

「うん。こっこ、ごはんすき。おいしいから。おいしくないものばっかりのとこには、もういたくないの。もう、もどりたくない。ダンジョンなんて、きらい」

 散々騒いでいたキキも、蒼兵衛も、ハイジも、アイカも、全員声も出せずに紅子を見つめる。

 クレイだけがグルルルと唸り、身を低くして後ずさっていく。その背に乗っているアイカが慌てて長い毛を掴んだ。

「ど、どうしたの、クレイ……!」

「だから、はやく、みつけなきゃ」

「浅羽!」

 シオンは紅子の手を取った。手から零れたハンカチが、ごうと突然吹きつけた風に飛ばされて、海に向かってひらひらと落ちた。

「えっと、紅子、激おこ……?」

 キキは顔を引きつらせながら、無意識に腰の魔銃に手を添えていた。蒼兵衛も刀に、ハイジも杖に手をかけている。

「浅羽、しっかりしろ! オレは気にしてない! 魔石くらい、いくらでも探してやる!」

 シオンは紅子の肩をしっかり掴み、揺すぶった。

「誰もお前を追い詰めてなんかない!」

「はやく、みつけなきゃ」

 顔を上げた紅子の瞳は、涙に濡れながら赤々と輝いていた。紅子に触れているだけで、体が消し飛びそうなほどの魔力を、感知能力の無いシオンでさえ感じた。


「おにいちゃんが、おこってる……!」


 直後に、轟くような魔物の咆哮を、居住区アクアリアの住人たちは聞いた。





「……透哉、こっこちゃんは、どこかしら」

 ふらりと現れた寝巻き姿の母親に、透哉は読んでいた本をソファに置いて、立ち上がった。

 リビングの入り口に立つ母の背を支え、片方の肩からずり落ちているカーディガンを直してやる。

 母親の茶和さわが、虚ろな目で透哉を見上げる。

「あら……あなた、今までどこにいたの? 心配したのよ……」

「今日は休みだから。僕がもっとこっこについていてあげられたらいいんだけどね」

「そう……」

 相変わらず話が噛み合わない。茶和は最近は自室で寝ていることが多い。ずいぶんと痩せて、やつれている。ほっそりとした体を優しく支えながら、子供にするようにその背をぽんぽんと撫でた。

「透哉」

 廊下から声をかけてきたのは、父親だった。自室にこもっていたはずだが、母親が起きてきた物音に気付いたのだろう。

 浅羽蘇芳(あさばすおう)。透哉の父で、紅子の叔父にあたる。

 長身の透哉と違って、中肉中背で、黒縁眼鏡をかけている。地味な印象だが、よく見れば眼鏡の下の目鼻立ちは紅子に似たところがある。叔父なのだから当然だ。彼も浅羽の血族だ。だがその力は、彼の父であり透哉と紅子の祖父である天才魔道士・浅羽光悦が見限ったほど、凡庸なものだ。

「母さんは私が連れて行くよ。せっかくの休みだ。お前はゆっくりしていなさい」

 そう告げ、茶和の肩を抱き、透哉から離れる。

 とっくに魔道士としての大成は諦め、魔道具を扱う職人を志した。家ではほとんど自室にこもっていて、たまに出てきても喋らない。昔からそういう人だったので、紅子は彼に関してはそう変貌したと思っていないようだ。物静かで一人になりたがるところはあるが、根は優しく、かつて茶和と共に紅子を我が娘のように可愛がってくれた。精神衰弱した茶和が紅子に辛く当たるようになると、彼は黙っているだけだった。助けてくれない叔父を、変わってしまったと紅子は思ったかもしれないが。

 透哉からすれば、この人は昔からこうだった。気弱で、流されるだけの男。

「あら、あなた……どなた?」

「浅羽蘇芳だ。お前の夫だよ」

「そう……そうだったかしらね……ねえ、こっこちゃんを知らない? トラタもいないわね……」

「トラタは死んだよ。もうずいぶん前に」

「……そんなはずはないわ……さっきごはんをあげたところよ……こっこちゃんにも……そうよ、こっこちゃん……お外に出てはダメだと、おじいさまからきつく言われているのに……まだ小さいから、危ないわ……あんな、海なんかに、どうして……」

 ぼんやりとした目を宙に彷徨わせながら、茶和がぶつぶつと呟く。

「探しておくよ。お前はもう休みなさい」

 そう言って、肩を抱いて廊下を歩き出した。

 浅羽一族にしては魔力が低いとはいえ、入眠の魔法くらいは扱える。

「父さん」

 去ろうとする父に、透哉は声をかけた。

「……なんだ」

「紅子は、きっと魔石を見つけてきますよ」

「……どちらでも構わんよ。私は。浅羽の魔道士だが、平凡な能力しか持たない私は、持っているものの苦悩も、優越も、何も知らん。知らないものは恐ろしい。私は、臆病な男だ。紅子にも向き合えないでいる」

「紅子の面倒は俺が見るよ。最後まで」

「そうか……お前には、苦労をかけた」

「そんなことはないです。父さんと母さんには、感謝してます。紅子をずっと大事にしてくれた」

「でも、一番寄り添っていたのはお前だよ」

「それに、俺のことをここまで育ててくれて……」

「親なんだ。当然だろう。他人行儀はやめなさい」

 蘇芳が透哉の言葉を遮る。透哉は小さく頭を下げた。蘇芳は茶和の背を支えながら、狭い廊下を老人のように少しずつ歩いた。

「……こっこちゃん、あぶないわ……そんなに海の近くに……おっこちちゃうわよ……」

「大丈夫だよ、紅子なら。さぁ、お前も少し休みなさい」

「だって、海はあぶないのよ……大きなモンスターが、たくさんいるわ……」

 寝室に去っていく両親の背中を見ながら、透哉は目を細めた。茶和のように〈遠視ヴィジョン〉が使えれば、遠くの紅子の姿が見えるのだろうか。

遠視ヴィジョン〉で視る光景はかなり不鮮明だと聞くが、〈予知〉とは違って、すべてそこで現実に起こっていることだ。使いこなせれば便利な魔法だが、本人にはほとんどコントロール出来ず、偶発的に発動することと、視えるのも近しい者の様子が主だという。それゆえに魔術というよりは超常現象のように扱われている。


 どちらにしろ、自分には紅子の姿は見えない。茶和が視たのなら、きっと海では本当に戦闘が起こっているのだろう。それも、茶和が不安で起き出して来るくらいの、大きく激しい戦闘が。

 だが、帰って来るだろう。

 紅子は光悦を超える魔道士だ。それに、強い仲間がいる。

 呪文を唱えるように、彼はそっと呟いた。


「頼むよ、小野原くん」






 穏やかだった海に、大きく波が立っていた。まるで大型船が近づいてきたみたいだ。

 生ぬるい風が強く吹きつけ始め、遠雷が聴こえた。

「やだ、天候変化スコール!?」

 アイカが慌てて、クレイの背を叩く。

「陸に戻って。みんなも、いったん引き上げようよ」

「それがいい。ここらのダンジョンは水位が上がると水没するからね」

「ひえぇ、濡れトカゲになっちゃうよぉ」

「思いのほか早く終わってしまったな。水上歓楽街で打ち上げといくか……」

 岩場を駆け上がろうとして、アイカはダンジョンの入り口に立ち尽くしてる紅子を振り返った。

「こっこちゃん、行こうよ! スコールが来たら海が荒れるかもしれないし、こんな低い場所にいたら危ないよ」

「浅羽、行こう」

 シオンは紅子の手を掴んで、引っ張った。

 紅子はぼんやりと顔を上げ、その瞳はまだ赤く輝いていたが、いつもの紅子のように思えた。怯えた顔で、シオンを見返す。

「小野原くん、私、さっき、変だった……」

「分かってる。大丈夫だ。今は戻ろう。ニコねこ屋とも合流して」

「時々、変なんじゃない? 私、みんなに迷惑かけて……」

「無い! いいから来い!」

 ビクッと身を竦ませる紅子を、シオンは無理やり引っ張って岩場を上がった。つい怒鳴ってしまったことをシオンはすぐに後悔したが、今は行動するほうが先だ。

「前に、ハイジが言ってた。大きな戦闘の前は、静かだって。そういうの、オレも分かる。きっとそうだと思う。たぶん、ヤバいモンスターが近づいてる」

「や、ヤバいモンスター……?」

 それには軽くだけ頷き、シオンは紅子を支えながら岩場を上がった。

「浅羽、草間さんが言ってたやつ、大魔法は三回まで、だったよな?」

「う、うん……でも、私、三回以上撃てると思う。あの、鬼熊と戦ったときみたいな、攻撃魔法を……」

「ダメだ。きっとこれから先も、こういうことはある。それも含めて、三回までなんだと思う。浅羽は、もっと配分を考えて戦ってくれ。浅羽には……」

 岩場を登った道の上に紅子を引っ張り上げたシオンは、彼女の肩を両手で掴み、真っ直ぐに不安げな紅い瞳を見つめた。

「よく聞いてくれ。浅羽には、やれることがたくさんある。でかい攻撃魔法フォースも、どんな怪我でも治す治癒魔法ヒールも、オレたちは誰も出来ない。浅羽にしか出来ないことばっかりだ」

「そんな……」

「その魔力で、浅羽にしか出来ないことをやってほしい。でも戦いの中で、まだ初心者の浅羽がそれをやるって、すごく難しいと思う。だから、ハーピィ戦と同じだ。戦いには極力参加しなくていい。戦ってるオレたちを見ててくれ。これからの戦いは、たぶん、たくさんの冒険者やマーマンや人間と協力することになると思う」

「待ってよ、そんなに大きな戦いなの?」

 尋ねたのはアイカだった。クレイに横座りになって、不安そうに海を見つめた。

「たしかに、シーモンスターやハーピィは増えてるから、そいつらを捕食する大型もよく海岸までやって来るけど、そこまで大きな戦闘、もうずっと起こってないよ。こっこちゃんをそんなに不安にさせなくても」

「いいんだ。オレたちは冒険者なんだから」

「でもさ。今のこっこちゃんが戦わなくたって……」

 アイカのほうを見ずに、シオンは答えた。

「オレたちは冒険者だ。冒険者の仕事は色々だ。トレジャーハントが目的なら、別に殲滅戦に参加する必要は無いかもしれない。でも逃げ回ってるだけじゃ、きっといつかヤラれる。浅羽は今まで逃げて来なかった。そのぶん経験も積んできた。たぶん、浅羽が欲しいものを手に入れるまでに、もっともっと経験を積まなきゃいけない」

 あの強かった桜でさえ死んだ。これから先、強さは必要だ。それはシオンたちも、紅子自身も。

「いいか。浅羽」

 探しているのは、紅子のような強い魔道士を輩出するような一族が隠してきた魔石だ。

 きっとそれは、紅子にしか見つけられない。彼女か、彼女と同じくらいの力を持った、同じ一族の人間だけだ。

「浅羽の石は、浅羽と同じくらいの力を持った人が隠した。だから、浅羽が本気で探さないと見つからない。でもそれは、お前が本気で欲しいって思ったんなら、絶対に手に入るはずのものだ」

「わたしの、ため……?」

 呟く紅子に、シオンはしっかりと頷いた。

「ずっと考えてた。魔石は同じ浅羽の魔道士が隠した。隠すのは、他の奴に見つけられたくないからだ。また同じ一族の人間が手にするときまで。だったら、同じ一族の奴なら、見つけられるはずなんだ」

「……でも、知らないよ、私……」

「でも、さっき強く思っただろ? 欲しいって。自分の石だって」

「う、うん……」

 紅子が戸惑いながら頷く。離れて見守っている仲間も、アイカも、怪訝そうな顔をしている。

「だったら、絶対にくる」

 言いきって、シオンは海を振り返った。

「ええー……うっそ」

 キキが顔を引きつらせた。

 波のうねりに紛れて、巨大な海蛇シーサーペントが長い胴体をくねらせ、咆哮を上げている。

「ダメなやつきてる……」

「あれを紅子が呼んだというのか?」

 蒼兵衛が半信半疑そうに顔をしかめた。

「まったく信じられんが、そういう才能まであるのか? この規格外娘は」

「魔物は体内魔素が濃いから、僕らよりも強く魔力を感知する傾向がある。魔物と対峙した際にソーサラーが狙われて死にやすいのはそういう理由もあるね」

 携帯電話を取り出しながら、ハイジが冷静に言った。

「それに、魔力のある亜人の集落が襲われやすいのもね」

 と、電話を耳に当てながら、アイカのほうを見やる。

「う、うん……だから、あたしたちは居住区アクアリア外で行動するときは絶対単独にならないようにしてる。海で襲われたらひとたまりもないから……ここらにモンスターが出やすいのも、あたしたちの住む場所があるからだって……」

「中々出ないわね……緊急だっていうのに……」

「おっ、久々の女言葉」

「姉上だ」

 冒険者センターの緊急ダイヤルにかけながら、苛々とハイジが呟く。キキと蒼兵衛が何故か嬉しそうにしている。電話の向こうから呼び出し音ばかりを聴きながら、ハイジは眉をしかめた。

「……とにかく、紅子のせいだけじゃないだろう。討伐専門の冒険者の不足で、小型と中型のモンスターが海に増えていて、その討伐が追い付かないこと。そいつらを餌にする大柄の狩場が沿岸に近づいてること。マーマンの集落が近いこと。色んな要素が重なってる。――あ、もしもし? 出るの遅いわよ。これ緊急ダイヤルでしょ。南房総の居住区アクアリア近辺で大型モンスターを確認、シーサーペントよ」

「わ、わたしの……せいで」

 紅子が顔を青褪めさせる。シオンは彼女の肩をぽんと叩いて、手を離した。

「言ったろ。色んな原因があるって。でも、お前の探し物が、あの中にいるかもしれない」

「げえっ、いっぱいいる!」

 波間に目をこらし、キキが声を上げた。大海蛇シーサーペントは一体ではない。少なくとも三匹はいる。

「……シーサーペント三匹で」

 モンスター発見報告をしていたハイジが顔をしかめ、訂正する。

「あんなのが、こんな近くまで来てたなんて……!」

 アイカが愕然と声を上げた。

 普段から近海に棲みついて、主食となる中型のシーモンスターを喰らっていたのだろう。

 クレイが激しく唸りだし、あっとキキがまた声を上げた。

「なんか、もふもふっぽいのいる! もふもふがいっぱい海ん中いる!」

「あれはスキュラだ。美人の魔物だ。初めて見たぞ」

 ほう、と蒼兵衛が目を凝らす。スキュラは上半身が美しい女性の姿をした、海に棲む人型の魔物だ。人型の大型モンスターは知能が高く、魔法を唱えるものが多い。スキュラは女性の半身で詠唱を唱え、下半身から生えた六つの海犬の頭と蛸のあしのような触手で、近づく獲物を捕らえる。

「私、目がいいんだ。おお……裸だ」

「……スキュラ追加よ」

 女性と言っても、その体は巨人級だ。頭の大きさだけで小型船くらいはある。シーサーペントとは共存出来るらしく、特に争うことなく共に波間を沿岸に向かって進んでいる。

「よく興奮できるなあんなので」

 キキが呆れた顔をした。

「遠目だとちょうど良いサイズじゃないか。普通の美人に見える」

「普通の美人は腰にもふもふ生やしてねーんだよ!」

「海水浴場だってあるし、漁にも出るのよ。あんなのが海岸まで来たら被害がいっぱい出ちゃう!」

 沿岸全体にサイレンが鳴り響き出した。

「ここで倒しておけばちょうどいい」

 蒼兵衛が事も無げに言った。

「惜しい美人だがどうせ蒼兵衛さんと結婚は出来ないだろう。富のあり余る成金リザードマン一家と違って我が家で六匹も犬は飼えんしな」

 と言いながら、蒼兵衛も電話をかけ始めた。

「――もしもし、リョータか? 私だ。ワンコールで出てくれないか? 寂しくなるから」

「着信拒否したくなるよこんな奴」

 キキが顔を引きつらせる。

「サイレンは聞いたな? 迎えに来てくれ。ここでは奴らを迎え撃てん。なるべく多くのマーメイドが蒼兵衛さんの格好良い活躍を見られる場所で戦いたい」

 雨こそまだ降っていないが、黒雲が立ち込め、遠くで雷鳴が轟いている。ワーキャットのシオンは、雨の中の戦闘は苦手だ。とも言っていられない。

 ここまで魔物が出てきたら、あれが出ないわけはない、とシオンが思った通り、昼だというのに日没後のような暗い海の上に、ゆらゆらと鬼火が現われ、揺らめき出した。

「当然、ゴーストも出るよな……」

「シャーマン派遣して。いや、足りないじゃなくて」

 ハイジはまたも電話口で苛々している。

 鬼火はそれ自体に脅威はないが、海で大量のゴーストが出たときに出現する。シーゴースト大量発生の合図みたいなものだ。

「ハイジが全部やっつけちゃえばいーじゃん」

 電話を切りながら、ハイジが頭を振った。

「無茶言わないで。近海戦闘では芋づる式にゴーストが出てくるのよ。穴という穴から血が出るわ。レイス程度をターンアンデッドする霊力も惜しいの……惜しいんだよ」

 口調を直しながら、ハイジは沖を指さした。

「ああいうの出るから」

 それは古い漁船だった。それも朽ち果てた。

 波に流されゆっくりと進んでいるその船は、五、六隻ほどもあった。

「あれが幽霊船ゴーストシップ。廃棄された船や沈没船にとり憑いた憑依霊ポゼッションの類いだ」

「幽霊船……キキちゃんが思ってたのと違う……もっとこう、海賊が乗ってそうなやつかと」

「海賊が乗ってる船見たことあるの? どんな大きさでも、ゴーストがとり憑いた船は全てゴーストシップだよ」

「あれにチョロチョロされたら戦いにくいな」

 蒼兵衛が顔をしかめた。

「海のモンスターをぶった斬るには、こちらも船で沖に出るしかないからな」

「た、戦うの!? あんなにたくさんのモンスターと!?」

 アイカがぎょっとしたように言った。

「や、やめといたほうがいいんじゃない? あんた達、ここらの冒険者じゃないもの。海のことは地元の冒険者に任せてたほうが……」

「モンスターの大量発生に遭遇したら、遠征先でも出来る限り協力するのは冒険者にとっては当たり前のことだ」

 シオンはそう答えて、腰に差した武器を撫でた。

 はっきり言って、この中でシオンが一番、海での戦闘力は低い。元々スピードと跳躍力を生かした近接戦闘をする。力がそれほど強くないぶん、加速や反動を生かしてダメージを叩き込む。接近戦に特化した戦闘スタイルで、武器もリーチの短いものしか持っていない。偉そうに言えるほど役には立たないかもしれないが、それでも自分に出来る役割を探すつもりだ。


 紅子はまだ青い顔で、接近している魔物の一群から目を離せないでいた。いつでも魔法を唱えられるように、背中に背負っていた杖を両手で握り締めている。

「浅羽」

 シオンがその背中を叩くと、紅子はビクンと身を震わせた。

「こっこちゃん……」

 紅子が振り返ると、やはり青い顔したアイカが、海に向かって唸り続けているクレイの背中の毛を掴み、呟いた。

「こっこちゃん、そんなにすごい魔法が使えるの……?」

「アイカちゃん……」

「こんなこと頼むの……ひどいかもしれないけど、でも、ホントにこっこちゃんが強いソーサラーなら……」

 アイカには戦う術が無い。風と水の力を借りた簡単な魔法と護身術程度の武器の扱いしか知らない。そんなもので当然、巨大なモンスターとは戦えない。

 そんな自分が同じ歳の少女である紅子にこんな頼みをするのは、あまりにもひどいとは分かっていながらも、言わずにはいられなかった。

「あたしたちの仲間に……アクアリアに、近づけさせないで……あいつらを……。ごめんね……お願い」

 クレイの背の上で、頭を下げる

 そんなアイカの姿を見て、紅子は唇を噛んだ。ぎゅっと杖を握り締める。背中にシオンの手のひらの温度を感じる。

 いつも明るいアイカの、泣きそうな顔を紅子は初めて見た。

 冒険の間、紅子が泣いたら真っ先に慰めてくれた友達。

 アイカが泣く姿なんて、見たくない。そう思ったら、恐怖や緊張が少し失せ、代わりにほんの少し勇気が奮い立った。

 こくっ、と紅子は頷いた。

「分かった! 私、戦う……! 戦うよ!」

 その〈大魔道士の瞳エリクシルアイ〉は、まだ赤く色づいている。未知の魔物への恐怖や、上手く魔法を扱えないかもしれないという緊張プレッシャーよりも、アクアリアを守るという使命感が勝ったのだろう。こうなったら紅子は強い。

 本来女性魔道士は、戦うことよりも守ることにおいて力を発揮しやすい傾向になると、草間が言っていた。


「キキちゃんの新品の武器の威力を試すにはまさに好機! 全弾撃ち尽くしちゃる! ねっ、おじいちゃん!」

 大量の銃器とハンマーと槍、そしておじいちゃん人形を背負い、キキが海をびっと指差した。祖父のへそくりを食い潰しただけあって、ガンナーとして申し分ないほどの物量だ。しかも今回はここまでモンスターとの戦闘が少なく、弾がじゅうぶん温存出来ている。

 蒼兵衛はこの旅でゴーストをも斬れる妖刀を手に入れ、心強さが増した。もはや斬れないモンスターは無いだろう。

 ハイジは、少しだけ浮かない顔をしていた。ゴーストシップ六隻では無理もない。すべてをターンアンデッドしようとすれば、全身の穴から血が出るというのもあながち間違いではないだろう。

「ハイジ、無理はしないでくれ。蒼兵衛の妖刀もキキの退魔弾もある。浅羽も戦う気になってくれてるから……」

 シオンはこそっとハイジにだけ聴こえるように言った。紅子は埼玉の戦闘でワイトをこともなげに消滅させた。命の危機が迫れば紅子はいつもの紅子ではなくなり、そのときこそが最強の魔道士になる。

「うん……いや、大丈夫だ。僕もコンディションは悪くないし、ここまでけっこう温存出来てるから」

 ぜんぜん大丈夫じゃなさそうな表情で、ハイジが答えた。

「万全なつもりだったけれど、ここまでのモンスターが出るとは予想外だった。もうちょっと準備をしていれば良かったなと思ってね」

「そうか……」

「せいぜい、出血多量で死なないようにするよ」





 雨が降ってきたよ、と入って来た客に言われて、やえは店の外に出た。

 今日はずっと晴れだったはずなのに。あてにならない天気予報がまた外れた。いつもならそう思うだけのことだ。

 胸の奥がざわつくのを手のひらで押さえながら、やえは店の中に戻った。

「そういやさぁ、魚亜人居住区アクアリアのほうサイレンなってたよ」

「あのへん最近多いな。またハーピィだろ?」

「ママ、どうしたの? 家に洗濯物でも干してきた?」

 そう言って、数人の常連客が笑った。いつもならにっこり笑って仕事に戻る。でも。

「ごめんなさい~。今日は店じまいにするわね」

「え!?」

「い、いきなりどうしたの、ママ」

「いま来たばっかりなのに……!」

 にっこりと笑って告げたやえは、客たちの背を順番に叩き、椅子から立たせて追い出しにかかった。

「さぁ行って行って。今日はお代はいいわ。また来てね。ちょっと帰りがいつになるか分からないけど。何日かかかっちゃうかも」

「ちょ、ちょっと、ママ」

「お友達が近くに来てるの。だから、少し心配で。あの子はしっかりしてるけど、ちょっと頑張り屋さん過ぎるとこあるからね」

 やえの言葉に、客の男たちは誰一人意味が分からず、促されるまま外に出た。


 客を全員追い出すと、やえは急いで支度した。冒険者を辞めても、まだ全部残してある装備。探索に使う道具。武器。店の奥からスーツケースを引っ張り出すと、その中に入っている衣服を取り出す。花の刺繍の入ったドレスを脱いで、戦闘用のジャケットを素早く身に着ける。長いウェーブのかかった髪を一つに結んでポニーテールにし、邪魔にならないようお団子に結い上げる。必要なものを裏の車に運び込み、トランクを閉める。その支度には二十分もかかからなかった。

 素早く運転席に体を滑り込ませ、エンジンをかける。ラジオを付けると、沿岸全域にモンスター出現を知らせる緊急警報が繰り返し流れていた。

 この音、よく聴いてた。それを聴いて逃げる側じゃなく、戦いに赴いた。何度も。何度も。あの仲間たちと。

 桜の言葉は、いつだって力強かった。


(やえ、あたしがアンタを守ってあげるわ)


 だったら。


「……サッちゃんの大事なものは、あたしが守るよ。力不足かもしれないけど。やれるだけのことはやる」


 あたしはいつだってそうしてきた。

 いつだって、パーティーの足を引っ張るまいと、必死について行った。

 そんなあたしを、サッちゃんは絶対に見捨てなかった。

 必要だって、言ってくれたの。

 あたしよりずいぶん年下の女の子に、あたしは救われてた。


 ――サッちゃん、ありがとう。


 たったそれだけのことが、最後まで言えなかった。あまりにも傍にいすぎたから。当たり前過ぎて、言えなかったの。

 今なら、何度だって言うのに。

 誰だって、いつも後から後悔するばかりだ。ハイジも、夜も、鯛介も、きっとあの子――シオンも。

新連載を始めました。

見てくださるととても嬉しいです。

そちらも合わせてどうかよろしくお願いいたします。

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