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迷宮のドールズ  作者: オグリ
二章
27/88

狂戦士

 嫌でも本能的に分かる、成熟したオスの臭い。人間の中で暮らしているワーキャットと違い、野生化している為、余計に顕著だ。

 しかも上から下まで体毛に覆われ、限りなく獣に近い、全頭フルヘッド。シオンのような半獣より、個体としては強い。


 ――はぐれか!

 シオンは牙を剥きながら、身を低くした。


『はぐれ』は、オス同士でつるんでいる野生のワーキャットの集団のことだ。彼らが、他のオスに追われた個体ばかりであることを意味している。ワーキャットの縄張り争いは激しい。家族を作れないオス同士が身を寄せ合い、狩り場を流れているのだ。

 群れることで好戦的になり、凶暴性を増す。流れる先で別の群れと戦いを繰り返す彼らは、常に気が立っている。

 野生において、ワーキャットは単体ならリザードマンの敵では無く、国重はリザードマンの中でもとりわけ巨躯である。にも関わらず、自分たちより何周りも大きな相手に、集団で襲いかかった。

 国重の皮膚は硬く、ワーキャットの鋭い爪や牙を持ってしても、その銀鱗に傷をつけることは難しい。だが、体の表側はそれほどの強度では無く、急所である首筋や腹を狙われ、喰いついていた。相手が老いたリザードマンだということも分かっている。

「グォォォォッ!」

 国重も獣の声を上げ、威嚇する。彼の首筋に喰いついたワーキャットは、直後に太い腕で弾き飛ばされた。

「おじいちゃんっ!」

「キキ、よせ!」

 祖父が攻撃される様を見たキキが、悲鳴のような声を上げ発砲した。

 国重の喉に喰いつこうとした一体に着弾し、顎の下で破裂した。狙いは的確だった。的が動きさえしなければ。

 咄嗟に身を引いたのか、傷は浅いようだ。

 この素早さが厄介なのだ。頭も並みの魔獣より良い。

 その俊敏さで獲物を追い詰め、鋭い牙と爪で仕留める。ワーキャットの狩りは凄まじい速さで決着が着く。ゴブリンなどとはレベルが違い過ぎる。

 仲間が吹っ飛ばされたワーキャットが、キキに目を向けた。

「シオンさん、退避じゃ!」

 腕や背中に喰いつかれながら、国重は二体のワーキャットを殴り飛ばした。

 首許に牙と爪を受けるのも構わず、国重は肩をいからせながら吼えた。

「ウグァァァアァァアァァァアァアッ!」

 敵も味方も身が竦むほどの轟声バジングに、果敢だったワーキャットらも不意をつかれ動きを止めた。

「逃げろ! 国重さんが引き付けてる間に、あいつらが出てきた部屋に入るんだ!」

「あ、あたし、戦う!」

 叫ぶキキを、シオンは怒鳴りつけた。

「銃じゃ相性が悪い! 接近されたら、一撃で死ぬぞ! 今は態勢を立て直すんだ!」

 シオンはキキの腕を掴んで、引きずるようにして走り出した。

 ダガーを構え、休憩部屋に飛び込むと、中に敵が残っていないことを確かめ、引っ張ってきたキキを部屋の中に押し込んだ。

 ワーキャットたちは、この部屋と破棄された作業用エレベーターに潜んでいた。

 まだ上にも居るかもしれない。さっき国重が無線で連絡した妹尾組が駆けつけてくれるまで、紅子とキキはこの部屋に身を隠していてもらうのが最善だ。二人も護りながら戦えない。

 そのとき、ドスン、と地面に重いものが落ちる音がした。

「あ」

 シオンが振り返ると、追いついてきた紅子がぽかんと口を開け、妙に間の抜けた声で呟いた。

 そこには大きなリザードマンの姿があり――一瞬、国重が部屋に入って来ようとしているのかと思った。

 だが、そのリザードマンは衣服を身に着けておらず、岩肌のような鱗は、黒く光っている。

 紅子の杖の光に照らされ、口の中が異様に赤く見えた。


 ……嘘だろ。


 シオンの背中に冷えた汗が流れた。

「獣堕ち……!」

「グアァァァァァァアアァァァァァァアッ!」

 黒いリザードマンが激しく吼える。轟声バジングだ。

 咄嗟に備えたシオンは一瞬の硬直で立ち直ったが、紅子は驚き立ち尽くしていた。

「浅羽、逃げろ!」

 シオンは叫びながら、リザードマンと紅子の前に割って入った。瞬間、リザードマンに殴りつけられ、壁に叩き付けられた。

「小野原くん!」

 紅子の悲鳴が響く。

 いいから逃げろ、と言いたかったが、声にならなかった。

 まともに頭を殴りつけられ、受け身も取れず壁に背中を強打し、シオンは転がった。ふらつきながらも唸り声グロウルを上げ、リザードマンの気を引こうとする。

 腹に力を込めながら立ち上がる。しくじった。紅子がやられると思った瞬間、何も考えず飛び込んでしまったのだ。勢いのついたところを殴られて、ダメージも大きい。どれだけ訓練しても、脳までは鍛えられない。そこを激しく揺さぶられ、目の前が回る。

 それでもダガーを構え、唸りながらリザードマンを睨みつけた。

「シオン! 大丈夫っ?」

 部屋からキキが飛び出してきた。マズい、とシオンは思ったが、小さいキキのことをリザードマンはさして気に留めなかった。

 獣堕ちの同族を初めて見た彼女の顔は、強張っている。だが、少しは冷静さを取り戻していた。

 シオンを助けにきたのではなく、紅子の腕を引っ張った。

「紅子、こっち!」

 そうだ、それでいい。この場は、逃げてくれたほうがありがたい。シオンはリザードマンから目を逸らさず、唸り続けた。

 ワーキャットの群れに、リザードマン。国重も自分も生き延びられる保障は無いが、妹尾組が駆けつけるまでの時間を稼げばいい。

「小野原くん、い、いま治すからっ……」

「いい! 来るな!」

 リザードマンを牽制しながら、紅子に怒鳴りつける。

 たとえ一体でも、ワーキャットよりも遥かに気の抜けない相手だ。

 一撃が強く、素早さがある。長い手足だけでなく太い尻尾も武器になる。爪も牙も鋭い。何よりその巨体だ。

 大きな亜人たちが魔石を運んでいた坑道は、動き回るのに充分な広さはある。だが、巨体での突進には注意が必要だ。

 ましてや、捕まえられたら終わりだ。

 それでも普段のシオンなら、一体くらいは相手に出来るだろう。

 だが、さっき頭を殴られたのが効いている。いつものような動きが出来るだろうか。そこそこの広さがあるとはいっても、足を使う戦いを得意とするシオンは本領発揮出来ない。

「小野原くん、あたしっ……!」

「浅羽、何してるんだ、早くしろ!」

 紅子は杖を握り締め、唇を小さく震わせた。

「もっ、燃えて!」

 杖をリザードマンに向けているが、何の魔法も発動しない。変わらず魔石が周囲を照らし、発光しているだけだ。

「あっ……あれっ? あれっ……?」

 戸惑ったように紅子が何度も繰り返す。

「何してんの! は、早く!」

 無意味に杖を振り続ける腕を、キキが強く引く。

「こんなとこで魔法撃ったら、シオンに当たるよ!」

「だって、あんなの、小野原くん一人じゃ……戦わなきゃ……」

「逃げなきゃ! 勝てないよ!」

 キキはいきなり現れた凶暴な野生種に、本能的に危険を感じているようだった。

「もっ、燃えてっ……あれ……えっ……なんで……?」

 そう言って、詠唱を口にしようとするが、言葉にならない。

 助けを求めるようにシオンを見ると、彼も紅子どころでは無い。ダガーを構えながら、苦しげに顔をしかめている。その動きはどこか、いつもと違う。

 そうだ、さっき頭を殴られて、背中も打っていた。治さなきゃ! と思いながらも、近づく隙が無い。その間にまた紅子は襲われるだろう。だから来るな、とシオンは言った。でもこのままだったら、彼は戦えない。

「小野原くん、治さなきゃ……ううん、それより、攻撃しなきゃ……!」

「何言ってんの! 今近づけないでしょっ! 状況見てよ!」

 キキが必死で叫ぶ。

 回復が出来ないなら、せめて攻撃魔法で援護しようと思っても、いつもみたいに魔法が使えない。巧く集中出来ない。集中を向けようとしても、苦しげなシオンの顔が目に入ってしまう。集中が乱れ、頭の中で組み立てていた魔法が霧散する。

 攻撃、回復、攻撃、回復……どちらも形にならない。

 魔法が――使えない。

「空気読んでよ! ソーサラーなんか、詠唱してる間に殺されちゃうよ!」

「でもっ」

「いいから!」

 詠唱なんて、いつもは必要無いのに。短くても適当でも唱えれば出てくるのが彼女にとっての魔法だった。「それは才能にあぐらを掻いているだけだよ」と透哉はよく言うが、今までそれで問題無かったのだ。ちゃんとした詠唱式を覚えているのは、苦手な魔法いくつかだけ。普段使う魔法は、好きな言葉で歌を歌うより簡単に唱えられるのだ。

 でも、今はその簡単なはずの魔法が、巧く組み上がらない。

「……こ、攻撃……回復……? どうしよう……ど、どうしたら……?」

 戦いは怖い。だがいつもシオンが助けてくれた。ゴブリンでも、鬼熊でも、その他の敵でも、彼が先に戦ってくれて、遠くから紅子は豪快な攻撃魔法を撃つだけで、決着がついたのだ。

 いつもシオンは危なげなく戦い、紅子にアドバイスや指示も出してくれていた。

 けれど、自分を庇ったシオンが初めて攻撃を受け、今も余裕の無い様子を見て、紅子は感じたことの無い恐怖と焦りを覚えた。

「浅羽、いいから行け!」

 シオンの苛立ったような声が、その場に響く。

 リザードマンと睨み合っている間に、時間切れがきた。

 二体のワーキャットが国重から離れ、こちらに向かってきたのだ。

 リザードマンとワーキャット。両方は捌けない。こういう状況でどう対処してきただろうかとシオンは自分の経験を探ったが、逃げた記憶しかない。誰かを守るような戦い方はほとんどしたことが無い。

 こんな状況になるのが嫌だからソロの仕事ばかりしていたのだ。護衛任務もあまり受けなかった。

 いつだって、自分だけが助かるような戦いしかして来なかった。

 誰かを救う自信なんて無かったのだ。

 だが、もうそうは言っていられない。

 損得関係無く、紅子を助けてやると決めたのだ。

「キキ! 浅羽を連れて逃げろ!」

 シオンはリザードマンに斬りかかった。

 襲ってくるワーキャットは、国重が追いかけていた。全てのワーキャットを引き付け続けていた彼の全身には、すでに無数の切り傷と、喰いちぎられた痕が出来ていた。が、その突進力は凄まじかった。

 だが、ワーキャットの足は速い。あっという間に二体のワーキャットが、紅子とキキに襲いかかっていた。

 キキは向かってくるワーキャットに銃を向けた。

 距離はまだある。が、さっき確実に顔面を狙った攻撃を避けられたことがキキの脳裏をよぎった。真っ直ぐに跳んでくる弾を、奴らが正面から喰らうだろうか。それに外せば、後ろから追ってくる国重に当たるかもしれない。

 撃てない。やっぱり、逃げなきゃ。

「紅子っ……」

 未だ硬直している紅子の手をキキが引こうとしたとき、国重が叫んだ。

「危ない、紅子さん!」

 二体のワーキャットが、紅子とキキをそれぞれ襲おうとした。一気に距離を詰めて突進してきた国重は、迷わず紅子を襲おうとしたワーキャットを殴り飛ばした。


 キキはその光景を、きょとんとした顔で見ていた。

 戦いの最中であることも、命の危機であることも忘れて。


 ――おじいちゃん……なんで?


 もう一体のワーキャットが、呆然としているキキに飛びかかる。


 ――なんで、あたしじゃないの?


「キキ!」

 喉を裂かれる――その前に、シオンは弾丸のような速さで駆けてきて、その間に割って入った。爪と牙とダガーで防ぐ。

 その後ろから、リザードマンの突進をまともに喰らった。シオンはキキを抱き込みながら、襲ってきたワーキャットごと吹き飛ばされた。

「ぐぁっ!」

 シオンの苦悶の声が聴こえたが、キキは戦闘中だということも忘れ、放心していた。


 戦いの場に飲まれているわけではない。

 むしろ飲まれていたのは、紅子のほうだ。

 でも、おじいちゃんは紅子のほうを護った。

 戦えないどころか、動くことも出来ない紅子を。


 ――なんで?


 たしかに、紅子は護るべきか弱い人間かもしれない。

 キキは、リザードマンの一族かもしれない。

 でも、でも。


 ――あたしの、おじいちゃんだよ?


 今、シオンが来てくれなかったら、死んでいた。そのことに、キキは呆然としていた。

 死ぬかもしれなかったことにでは無い。

 どちらかが死ぬという状況で、国重はキキではなく、紅子を助けた。

 それは、キキは死んでもいいってことなの?

「キキ、逃げろ……」

 呻くような声に、キキははっと顔を上げた。シオンはキキを抱き締め、身を丸くしている。自分たちの体と壁の間で、ワーキャットが潰れていた。突進のクッションになったのだ。

 背中にまともに突進を喰らったシオンは、それでも持っていたダガーで、ぐったりしているワーキャットの喉を裂いた。血が噴き出す。その血を浴びながら、キキは叫んだ。

「シオン!」

 ずるりとシオンの体が後ろに運ばれる。ジャージの背中を掴まれ、地面に転がされた。ダメージで体がまともに動かないのだ。それでも立ち上がろうとしたところを、踏みつけられた。

「がっ!」

 黒光りする鱗を持ったリザードマンが、シオンの背中を片足で押さえつけ立っている。シューシューと荒い息遣いを漏らしながら。

 光の無い目が、キキを見た。

 一族の皆とは違う、冷たい獣の目。

 これが、獣堕ち。

「や、やめてよ……やめて」

 心の無い獣堕ちが、キキの懇願など聞き入れるはずも無い。

 筋肉の塊のような太い脚を上げると、倒れているシオンの膝を地面にめり込むほど踏みつけた。

「あああああっ!」

 二度、三度と続けざまに膝を踏み潰されるたびに、シオンは絶叫を上げた。痛みの余りにか、グローブから突き出た指で硬い地面をガリガリと掻いた。膝の骨が砕けた。それでもリザードマンは容赦せず、また足を持ち上げた。

「うわああん! やだぁ!」

 キキが叫び、無我夢中で飛びかかろうとしたとき、ワーキャットを始末した国重が、リザードマンに突撃した。

「ぬおおおおおっ!」

 片足を上げた状態で弾き飛ばされたリザードマンは、壁に体を打ちつけた。国重はそのまま若いリザードマンを力いっぱい殴りつけ、頭突きを繰り出した。

「何をしておるんじゃあっ、黄々! シオンさんを紅子さんのところに連れて行って、お前は戦うんじゃ!」

「うあ、ああっ……じいちゃ……」

 身を竦ませるキキに、リザードマンと組み合いながら、国重が怒鳴った。

「泣く奴があるかい! 尻尾を巻いて逃げるなら、せめて敵のほうに向かっていかんか!」

「ひっ……うあっ……」

 鼻を啜りながら、キキは頷いた。

 背中に背負った銃の入ったバッグを下ろし、代わりによろよろとシオンを担ぐ。少しの衝撃でも背中と膝が痛むのか、シオンが呻いた。

「キキ、オレは置いて……逃げろ」

 キキは泣きながら頭を振った。

 妹尾のリザードマンなら、仲間を置いて逃げたりしないからだ。

 それをしたら、獣堕ちと同じだ。

(いいかい、黄々)

 祖母・静音の言葉が蘇る。

(一番か弱い者は、進んで自らの尾を切り離す。それが出来ないなら、お前に冒険者は無理だよ)

 一番弱い者から、自分の尾を切れ。それが妹尾の戦士だ。役に立たない者から敵に向かって行け。囮になれ。逃げる時間を作れ。強い者が弱い者を守るように、弱い者も強い者を守るために死力を尽くすのだ。文字通り、体を張って。

 仲間を見捨てて逃げたなら、もう帰る場所は無いと思え。

「キキ……オレは、いいから」

 シオンが苦しげな声を上げるが、キキは何度も頭を振った。

「にげ、ない……!」

 重たいバッグと同様にシオンをしっかりと背中に担ぎ、紅子のところへ走った。


 ――早く、早くしなきゃ。


 黒燐のリザードマンと銀鱗のリザードマンとの激しい戦いは、残りのワーキャットたちを近づけさせない。だが、老いて腰を悪くし、しかも怪我をしている国重が、おそらく不利だ。

 ワーキャットたちも逃げ腰では無い。隙あらば戦いに割って入り、いずれかの獲物を仕留めようとしている。


 ――おじいちゃんが、殺されちゃう!


 紅子の許までシオンを連れて行き、キキは搾り出すような声で言った。

「こ、こうこ……シオンを、治してよ……」

「お、小野原くん……?」

 へたり込んでいる紅子が、ぽかんと口を開けた間抜け面で、シオンを引きずってきたキキを見た。

 いつの間にか手放した杖は、離れた場所に転がっていた。

 紅子は激しく震えていた。

「な、治さなきゃ……えっと、えっと……魔法……」

 紅子は苦悶の表情を浮かべるシオンを見下ろし、自分の頭を抱える。

「あっ……ああっ……!」

「どうしたの、紅子……シオン、膝が壊れてるんだよ。早くしてよ」

 今なら、国重が時間を稼いでくれている。魔法を使う時間は充分あるはずだ。

 なのに、紅子は泣いてばかりで何もしない。

「魔法、魔法が、分からなくなっちゃった……」

 したくても、出来ない。

 シオンの激しい悲鳴が、紅子の頭の中にこびりついている。

 治さなきゃ。そう思うのに、さっき魔法が巧く出せなかったことで、彼女は混乱をきたしていた。

 絶対的に信頼していたシオンと、自分の魔法。

 そのどちらもが、今は失われている。

 シオンは負傷して、魔法は使えなくなってしまった。

 こういうときは、どうしたらいいの?

「浅羽……」

 顔を歪めたシオンが、紅子を見上げる。その目は、逃げろと訴えていた。

 逃げる?

 怪我してる、彼を、置いて?

「ど、どうしよう……どうしよう、キキちゃん……」

「どうって……」

 キキは顔を引き攣らせ、泣きじゃくる紅子を見返した。

 年上のくせに、縋るように自分を見てくる。なんだ、この女。だんだんと腹が立ってきた。

「どうしようも無いよ! シオンを早く治して! そしたら二人で逃げてよ!」

 紅子の頬を、キキは怒り任せに叩いた。

「早くしろ、ブス!」

 なんでシオンは、こんな女とパーティーを組んでるんだろう。

 優しいだけで、戦いじゃ何にも出来ないじゃないか。

 一人だけ無傷の癖に、シオンや国重が戦ってるのに、ただずっと混乱している。

 いくら凄い力があっても、いざというときに役立たずな女に、キキは怒鳴った。

「でも、あたしは戦うからっ!」

 ――違う!

 腹が立つのは、紅子にじゃない。

 役に立っていないのは、自分も同じだ。

 ダンジョンと言ったって、妹尾一族が管理している安全な場所だと、どこかで過信していた。

 自分のわがままに、シオンや紅子を巻き込んだ。

 彼らやおじいちゃんを、殺してしまうかもしれない。

 激しい戦闘音に、キキは振り返る。二体のリザードマンがもつれ合い、互いの肩口に噛み付いている。だが、国重の肩の傷のほうが酷い。

 野生のリザードマンの牙は鋭く、顎も強い。まんじゅうや大福が大好物で糖尿持ちの老リザードマンの牙など、相手の硬い皮膚に喰い込みはするものの、かえって国重のほうが辛そうだ。


 ――おじいちゃん、おじいちゃん、おじいちゃん!


 ワーキャットたちも黒いリザードマンを警戒している。国重より若く、体は一回り小さいが、最も力のある時期のオスなのだ。

 きっと最初は、このリザードマンとワーキャットが戦っていたのだ。いや、ワーキャットはリザードマンに追われて、ここまで逃げてきたのだろう。待ち伏せしていたところに、キキたちが戻ってきた。

 そうなると、他にもリザードマンが居るかもしれない。そいつらまで追ってきたら、もう生き残れるとは思えない。

 どうせ死ぬ。

 喰われながら死ぬのって、すごく痛いだろう。

 恐怖に震えながら、キキはじわりと涙の溢れる目許を、袖でごしごしと擦った。

 黒いリザードマンと戦う国重はすでにズタボロだ。

 皆を逃がすためにワーキャットを引き付けていなければ、あれほどの怪我を負うことは無かった。その怪我の所為で、若いリザードマンにいいように殴られている。腰が痛むのか、国重の力は全盛期のそれには遠く及ばない。

 そして、二体のリザードマンが争い続け、両方とも疲弊するのを、ワーキャットたちが光る目で伺っている。


 ――おじいちゃん!


 ずるっと鼻を啜り、キキは声を上げた。

「うわああああああああああああん!」

 恐怖に勝る怒りが、頭の中を真っ赤に染める。泣き声が、咆哮に変わっていく。

「おじいちゃんをいじめるなぁ!」

 そう叫び、向かったのは、リザードマンでは無くワーキャットたちのほうだった。遠くから銃を撃ち、とりあえずは牽制している。じりじりとさっき放り捨てたバッグに近づき、弾が尽きると新しい銃を取り出し、とにかく撃ち続けている。

「ダメだ、キキっ……!」

 持ち込んだ銃器を片っ端から使い、ワーキャットを近づけさせない。ひとまずは時間を稼げているが、時間の問題だ。使い捨てる銃が尽きたら、弾を補充する間に奴らは襲ってくるだろう。

 シオンは痛みに喘ぎながら、紅子に訴えた。

「浅羽、オレの足を治してくれ!」

「お、小野原くん……」

 紅子は跪き、シオンの足に手を当てている。そして、ずっと錯乱したように独り言を呟いているのだ。

「な、治してるの、治してるのに……治らないよお……」

 泣きそうに顔を歪め、紅子が唇を噛む。そして、またブツブツと呟き出す。

「治って、治って……治ってよぉ……」

「浅羽……」

 完全に恐慌パニックを起こしている。

「分かった、もういい……」

 シオンは気を失いそうな痛みに、全身から汗を吹き出させながらも、上半身を起こした。魔力を巧く伝えられない紅子の、震える手を握る。

「浅羽、お前だけでも逃げろ」

「小野原く……」

「すぐに妹尾組の人たちが来る。それまで隠れてろ。オレたちで……そのぐらいの時間は稼げる」

 そう言いながらも足は動かない、すでに自分は戦力外だ。根拠なんて無いが、今は紅子に落ち着いてもらうしか無かった。

 シオンはウエストバッグに手を伸ばし、中を漁った。雑多に入れられた冒険者カードや携帯電話やキャラメルがバラバラと地面に落ちる中、小型のプラスチックケースを探り当て、中を開いた。手のひらに握り込めるサイズの注射器に、皮下注入用の液剤が一回ぶん入っている。

 携帯用の鎮痛剤だ。しかしラベルは無く、実は所持することも禁止されている非合法のドラッグだ。

 初心者時代、たちの悪い違反冒険者アウトローに引っかかり、彼らが死ぬまで使い走りをさせられていた頃に貰った、苦々しい思い出の品だ。冒険者であっても所持しているだけで罰せられる代物で、使ったことは無い。何度も捨てようと思ったが、こんな仕事なのでいざというときの為に持っていた。

 何やら訳の分からない魔草から成分を抽出し、亜人には酷く効くとしか聞いていない。本物かも判からない。痛みを遮断し、高揚感すら生まれる。たとえ自分がモンスターに喰われても、これを打てば気持ち良くなるくらいだと言っていた。そう言った彼らは本当に喰われてしまったが。

 副作用が怖いぞ、と下卑た笑いで言った悪党の言葉を思い出す。同時に、彼らがモンスターに襲われ、死んだ姿も脳裏に生々しく蘇った。

 悪い連中だった。縁が切れて、結果として自分は助かったかもしれないが、あのときとは違う。

 あんな惨たらしい死に方を、紅子やキキや国重がするっていうのか。

「……治んない、治んないよぉ……なんでぇ」

 逃げろと言ったのに、紅子は泣きじゃくりながら、シオンの足を擦っている。

 ダンジョンに入る前、彼女が得体の知れないもののように見えたことを、思い出した。魔力の強過ぎる彼女に対して、内心ではそんなふうに感じていたのか。

 そんなことは無い。

「ごめん、浅羽」

 本人には聴こえもしないだろう掠れ声で、シオンは呟いた。

 全滅するかもしれないこんな状況でも、彼女がまともに魔法を使えさえすれば、切り抜けられるかもしれない。それだけの力が彼女にはある。力はあっても、まだ使いこなせないだけだ。だから、それが出来ず泣いている彼女に、怒りも失望も感じない。

 彼女の望みどおり、早くダンジョンに連れて行ってやらなければと、シオンも焦っていたのかもしれない。桜がそうだったように、彼女にもそれが出来る才能があると思ったから、力になってやりたかった。

 キキや国重の所為でも無い。このダンジョンに来たのは、キキのわがままに付き合っただけでなく、紅子の演習も兼ねたのだ。妹尾一族が管理しているダンジョンだ。こんな事態が起こる確率のほうが低かったのだ。

 それでも、初心者が安全と思っていたダンジョンで、予想外の出来事に遭遇し、命を落とす。それも致し方ない。ありふれた事件だ。シオンにとってはそうだった。でも、紅子にとっては、ありふれたことなんかじゃなかった。

 この前まで、戦いを知らない少女だった。

 初めてゴブリンを倒したとき、震えていた。

 ただの、人間の女の子だ。

「……っ!」

 躊躇っている場合ではない。小型の注射器を掴み、親指で針先のキャップを外すと、ジャージの上から太腿に注射した。しばらく押し当てていると、自分の体の中を何かが駆け抜けていくような感覚を憶えた。きっと錯覚だろうが。

「うわああああああああっ!」

 キキの大声がダンジョン内に響く。何故か魔銃を撃たず、ワーキャットの群れに特攻した。錯乱したのだとシオンは思った。まだ四体は残っているワーキャットたちにわざわざ背を向け、さっと身を丸めてしまった。

 亀のように頭を低くし、腕で守る。背中の硬いリザードマン種が柔らかい腹を守るための防御体勢だが、当然背中は無防備だ。そこにワーキャットたちが殺到した。

「キキっ……!」

 彼女はリザードマンとはいっても見た目は人間だ。

 シオンは足を動かそうとするが、その意思に痛みが抗う。早く、早く薬が効いてしまえ。

 捕食者に怯えるように小さく丸まった少女に、ワーキャットたちが襲いかかった。鋭い爪が、小さなキキの背中を、頭を守る腕を、引き裂く。

「キキ! やめろぉっ!」

 だが、獣共にたちまち血祭りに上げられるキキの姿は、そこには無かった。

 無残に衣服が破かれ、中に着込んだ防刃ジャケットまで切り裂かれているというのに、その下の皮膚は血の一滴も流れず、金色に煌いていた。


 鱗だ。

 キキの背中は一面、リザードマンの硬い鱗で覆われていた。


「うぐっ……背中、いたい、いたいよぉ……うぁっ……」

 キキが涙声を漏らす。ぶるぶると小さな体が震えるたびに、背中の金鱗が煌く。

「……う、あっ……あッ、あああっ……!」

 ゆらりと頭を上げ、キキは吼えた。

「グオァァアァァァァァァァァァアアアアッ!!」

 轟声バジングだ。子供ながら強靭な肺を震わせ、リザードマン独特の怒りの咆哮を上げる。その両手に魔銃を構えている。

「よくも、よくもっ……お前らぁ!」

 攻撃を防がれ、カウンターで轟声バジングを浴び、完全に虚をつかれたワーキャットたちに、避けきれない距離から魔弾を撃ち込む。

 一番近くで犠牲になったのは、さっきキキに顎を吹き飛ばされたワーキャットだった。数発の魔弾が顔や腹に着弾し、たちまち炸裂する。今度こそ全身を損傷して、崩れ落ちた。

「――よくもっ……よくもよくもよくもよくもよくもよくもぉっ……!」

 キキは激しく咆哮しながら、魔弾を乱射した。命中精度はずっと落ちているが、めちゃくちゃに撃つのでワーキャットたちは迂闊に近づけず逃げ惑っている。

 弾が尽きる前にもう一体、肩を吹き飛ばされた。動きが止まったところで、更に銃弾を撃ち込む。体中に穴を開け、魔獣が倒れる。

「てめえらぁっ……キキのおじいちゃんをっ、いじめたなぁぁっ!」

 弾が尽きた。両手に銃を構えているため、ウエストバッグから新しい弾倉を取り出すのに、一度銃を仕舞わなければならないが、ワーキャットにとっては襲いかかるのに充分な時間だ。

 二体のワーキャットが素早く駆け込んでくる前に、キキは弾を入れ替えるどころかあっさりと魔銃を放り捨てた。

 地面に落ちていた何かを拾う。

「薄汚い獣堕ちがぁっ! ぶち殺してやるっ!」

 国重が手にしていた槍だった。ダンジョン内でも扱えるように小振りだが、それでもリザードマン用に誂えたものだ。長さはともかくしっかりとした重量がある。

 それを細い腕でしっかり構えると、向かってくるワーキャットが近づけないように突き出した。

「グアァアアアァァアアアアァッ!」

 槍の扱いに慣れている様子は無い。だが、轟声バジングを上げながらやたらめったらに振り回すその姿に、素早い獣たちも容易に近づけないでいた。

 大振りな攻撃をくぐり抜け、一体のワーキャットがキキの傍に迫った。もう一体に槍を向けながら、キキは自分の首を狙ってきたワーキャットに、キキは避けもせず自ら頭を突っ込ませた。

 リザードマンの血を引く彼女の頭蓋は硬い。

「ふんっ!」

 そのままワーキャットの顔面に頭突きをする。

 自分から突っ込んだことで、キキの首筋を逸れたワーキャットの爪が、キキの顔面を抉った。幼く可愛らしい顔の、片頬が大きく裂け、血が噴き出す。

 傷は口の端まで達していたが、キキは痛みも感じてすらいないように、一心不乱に頭突きを繰り返す。それを、自分の額が割れても止めない。相手は目や鼻を血に染め、視界が潰されたようだ。

「ウガァァアァァアァァアッ!」

 キキはとっくに槍を手放し、ワーキャットの首に飛びついていた。息突く間も無いほど頭突きを繰り返す。ワーキャットもキキの背中を掴み、何度も爪を立てている、鱗が剥がれ、まだ幼い皮膚が引き裂かれる。それでもキキは狂ったように攻撃を止めなかった。

「グァァァァァァァァッ! ウグァァァァァァァッ!」

 手負いの獣の、死に物狂いの反撃に似ている。残ったワーキャットは、得体の知れない幼獣を完全に警戒し、飛び込まない。

 人間に似ているが、爪を防ぐほどの皮膚を持ち、リザードマンの咆哮を上げる、いきり立って暴れるこの小さな獣にひるんでいるのだ。

「……アイツ……狂戦士バーサーカーなのか……?」

 シオンは荒い息の中で、ぼんやりと呟いた。

 狂戦士症バーサーカーは、人間社会で馴染んだ亜人の中で稀に見られる、先天的な疾患だ。

 凄まじい感情の発露と共に、眠っていた野性が蘇り、我を忘れる。

 元々は好戦的でありながら人間社会に馴染むにつれ穏和となっていったリザードマン種族に多いとされる。

 普段の生活に支障は無いが、命を感じるほどの危機的状況で出やすいその症状から、そんな名が付いた。ひとたび狂戦士バーサーカー化すれば、より激しい興奮状態に陥る。それは恐怖も痛みも感じなくなるほどだという。戦闘下においては好戦的になり、文字通り死ぬまで戦う狂戦士と化す。

「ウガァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 どれだけ怪我を負ってもキキは怯むこと無く、むしろ自分と相手の血に一層興奮している。腰のベルトが外れ、スカートの腰下まで破れた衣服から、小さな尻尾が覗いていた。あの泣き虫のキキが、何度背中を裂かれようとも相手の首筋に組み付き、自らの額が割れても頭突きを繰り返し続け、顔面を血に染めたワーキャットも、いつの間にか動きを止めていた。

 それでも夢中で頭突きを止めないキキに、もう一体のワーキャットは隙と見て襲いかかろうとした。

 シオンはすでに駆け出していた。

 壊れた片膝では体を支えきれず、地面を蹴っているつもりなのにぐにゃりとしたものを踏んでいるようだったが、痛みは無い。

「ガァッ!」

 短く吼えると、ワーキャットが振り返り、臨戦態勢を取る。だいぶ薄れているといっても同族のオスの臭いに、敵も激しく唸った。姿勢を低くし、飛びかかってきた。シオンも吼え、爪をかいくぐった。

 単体なら、ただの獣だ。

 他種族にとっては厄介な素早い動きも、シオンは喉を裂かれる紙一重で躱わし、手にしたダガーで喉を掻き切る。

 血しぶきを上げよろめくワーキャットの首筋に、もう一撃入れる。

 群れを追われ、餌を求めて流れるだけの、心休まらない獣としての生の、末路。

 こんなふうに生きていたのは自分かもしれない。ダンジョンの中に、たくさんのワーキャットの群れが一瞬見えたような気がして、シオンははっとした。

 次の瞬間には消えていたそれは、幻覚だ。ドラッグの副作用だろう。

 こんなに効くのか。ぐにゃぐにゃとスポンジを踏んでいるように感じる地面に、ダンジョンの床や壁はたくさんの魔虫が這って蠢いているように見える。

 動かないワーキャットを、小さな金色のリザードマンが喰い殺している。仲間が襲われている――一瞬そう思い、ダガーを向けかけた。

 いや、違う。あれはキキだ。喰っているわけでは無い。我を忘れて攻撃を続けているだけだ。あのワーキャットが、敵なのだ。

 敵を間違えるな。シオンは混濁しそうになる意識を必死に保ち、しっかりと自らに言い聞かせた。もう、一人で戦っているわけではないのだから。

 息を震わせながら吐き出し、シオンはキキに近づいた。

「キキ……そいつは、もう死んでる……」

 キキが血に濡れた顔を上げた。

 あんなに可愛かった顔が傷だらけだ。口の片側が頬まで裂けてしまっている。だが、キキも痛みを感じていないようだった。

「死ん、だ?」

「死んでる……お前が、倒した……」

 小さな体で特攻して、三体ものワーキャットを倒したのだ。

「ガァ……」

 喉の奥を鳴らし、血だらけの顔で、顔の潰れたワーキャットを無表情で見下ろす。

 衣服も背中の布地はほとんど残っておらず、肌から金色の鱗にかけての美しいグラデーションも、血と泥で汚れている。覗いた下着の上に、ぴょこんと小さな尻尾が飛び出していた。

「お前も怪我してる。もう、大人しくしてろ」

 緑色の目が、じっとシオンを見上げた。

 伝わったかは分からないが、シオンは再びダガーを構え、とうとう国重を押さえ込んだリザードマンの許まで駆けた。

 もしかしたら、自分が助けなくても、キキは戦えたかもしれない。そうシオンは思った。そして国重のほうが覚悟を決めて、キキをダンジョンに連れて来ていたのかもしれない。たとえそこで、孫娘が死んだとしても。

 ただ彼女のわがままに負けて、冒険者にしたのではない。老戦士はそのときがくれば、孫娘を一人の戦士として扱うつもりだったのだ。その腹はとっくにくくっていた。

 仲間の力を信じず、窮地を招いたのは、シオンのほうだったのかもしれない。

 いや、そんなことは後からいくらでも反省出来る。

 今は、国重を助ける。

 国重は首筋を喰い千切られ、地面に血溜りを作ってぐったりとしていた。意識を失っているのかと思ったが、シオンが来るのに気付いたようで、かっと目を見開いた。

 最後の力を振り絞ってリザードマンの首に太い腕をがっしりと巻きつけ、締め上げる。

「ぐおおおおおおお!」

 腕に力を込めるほどに、リザードマンは苦しみ、国重の怪我から血が噴き出す。

 シオンは飛び上がり、宙返りをするように、国重に捕らえられジタバタと暴れるリザードマンの首に片手で掴み、もう片手に握ったダガーを素早く、側頭部に深々と刺し込んだ。

「グギャァァァアァァァァッ!」

 威嚇の声では無い絶叫が、ダンジョン内に響く。

 動いていれば捉えるのは難しい、彼らの小さな耳の穴がそこにある。鱗に覆われた皮膚と硬い頭蓋の中にあって、唯一脆い場所。柔らかい喉や腹以上にダメージが入る急所を、シオンは的確に刺し抜いていた。

 リザードマンの背中に跨ったまま、素早く予備のダガーを抜き、もう片側にも突き立てる。

「ふんぬううううううっ!」

 国重が丸太のような腕に力を込め、もがくリザードマンの首を絞める。

 ごきり、と鈍い音がした。

 硬直した魔物の体は、次の瞬間びくんと大きく跳ねた。

 シオンはリザードマンの背中から滑り落ちるようにして崩れ落ちた。

 リザードマンの腹を、槍を手にしたキキが、横から深く刺し貫いていたのだ。

「おじいちゃんからっ……離れろっ! 獣堕ちがぁ!」

 何度も、何度も刺し貫くと、リザードマンがびくんびくんと震えた。しかし強い生命力で、キキを見て唸った。腹に喰いこんだ槍を掴み、キキが槍を手放すと、黒いリザードマンは小さなリザードマンに飛びかかった。

 キキは槍だけでは無く、ずっと背中に背負っていたバッグを、拾って持ってきていた。

 その中からすでに大きめの魔銃を取り出し、構えている。

「――死になっ!」

 ドン、と魔弾が発射される音がして、リザードマンの頭を直撃した。




 ドン、ドン、と何度も銃声が響く。

 ……終わったのか?

 シオンは体を起こした。

 撃たれたリザードマンの頭部や体のあちこちが凍りついている。

 ダンジョンでの戦闘に多用される凍結フリーズ弾だ。火魔法の弾と違って周囲への被害が少ない。

 その体は僅かに動いているが、立ち上がることは無いだろう。

 走り回った所為で痛み止めの効果も薄れたのか、砕かれた膝がさっきよりも痛む。それに、慣れない薬が効き過ぎているのか、吐き気がする。

「おじいちゃん、おじいちゃんっ!」

 顔を血で汚しながら、自分も酷い怪我を負っているのに、銃を放り捨てたキキはまっしぐらに国重に縋りついた。

 国重の傷は酷いようで、首筋や肩の肉は抉れ、大量の血を流している。

「うわぁぁぁぁん! おじいちゃあん!」

 シオンも立ち上がろうとしたが、ダンジョンの天井と地面がぐるりと入れ替わったような激しい眩暈に、口許を押さえた。

「黄々……おじいちゃんは、大丈夫じゃ……そう簡単に、死なん……」

 そう言い、国重は震える手を、愛孫の頭に伸ばす。

「大丈夫じゃから、最期に、抱っこさせてくれ……」

「最期とか言ってるじゃん! 死ぬ気なのっ! ダメだよぉっ!」

 キキは喚きながら、国重の血まみれのつなぎに縋りついた。

「――お、おじいさんっ……」

 ようやく落ち着いたのか、紅子がよろよろと駆けつけ、国重の傍らに膝をついた。

「こうこ……」

 顔の半分を怪我したキキが、紅子を見上げる。こんなに小さい体で、傷だらけになるまで戦った。その目を見ているのが、紅子は辛かった。

 自分だけ何も出来ずに、一人で震えていたのだ。

「ごめんなさい、ごめんなさい……! すぐ、治すねっ……絶対、治すからっ……!」

 紅子は号泣しながら、国重の体に手を当てた。

「大丈夫だからっ……! キキちゃん、絶対っ、あたし、今度は絶対っ……治すから……!」

 涙顔で見上げるキキに、紅子も涙を流し、何度も息を詰まらせた。何処にも怪我をしていないのに、誰よりも青い顔をしていた。

「ごめんなさい……ごめんなさいっ……!」

 何も出来なかった。

 もっと、自分がしっかりしていれば。

 国重も、キキも、シオンも、全員酷い怪我だ。

 とりわけ国重は、このまま放っておけば死んでしまう。

「お願いっ……、治って、治って……!」

 国重の体に手を当て、震える声で繰り返す。そして、頭を振る。

 魔法が消える。

 いつも一緒にあったものなのに。

「なんで、なんでっ……! いつも、治ってきたのに!」

 国重の瞼は開いているのに、視点が定まらなくなっている。

「いいんじゃ、紅子さん……アンタは充分、立派なソーサラーじゃ……」

「違うっ……治せるの! あたしっ……!」

「おじいちゃん! がんばってよ!」

 地面に広がる血の中に、キキが小さな膝を突き、泣きじゃくっている。

 それよりも大きな声で、紅子が泣き声を上げた。

「いつもなら、治せるのにっ! どうしてえっ!」

 血が出てる。血が出てる。いっぱい血が出てる。

 死んじゃった。お父さん、死んじゃった。

 ――……も、死んじゃった。


(……紅子……)


 顔を上げたのは、お兄ちゃんだ。

 意地悪なお兄ちゃん。

 こっこと仲良くしてくれないお兄ちゃん。

 いつも思ってた。

 透哉お兄ちゃんが、ほんとのお兄ちゃんだったら良かったのに。


 遠い記憶の中に広がる血溜り。

 そこで息絶えて行く兄。


(……紅子、お前も、浅羽の魔道士だ)


 お兄ちゃん、死んじゃうの?


(いいかい? それは、迷宮にあるものだ。深い、深いところにある。お前なら、必ず分かるから……)


 ねえ、お兄ちゃん、血がいっぱい出てるよ?

 血が、出てるよ?


 お兄ちゃん、泣いてるの?


(紅子、お兄ちゃんの目を、見てごらん。俺は死んでも、お前の中に居るから。お前は強い子だから、怖いものなんて、無いんだ。だから、迷宮に……)


 頬を撫でるお兄ちゃんの指が、白くなっていく。玄関に血が広がって行く。こっこの抱っこしてた白いうさちゃんも、真っ赤になった。

 それなのに――。


 お兄ちゃんが笑ったとこ、初めて見た。


「――治らないよぉっ、お兄ちゃん!」

 紅子は頭を抱え、両手でぐしゃぐしゃと髪を掻き毟った。

「どうして、どうして、魔法が使えないのっ!」

 半狂乱になって頭を振る紅子に、シオンは薬で朦朧としかける意識を必死で保ちながら、鈍く痛みの蘇ってきた膝を引きずり、紅子に向かって手を伸ばした。

「あさ、ば……」

「いつも、いつも使ってたのにっ! ちゃんとした詠唱なんかしなくても、簡単に使えたのに!」

 うわあああ、と紅子は絶叫を上げ、綺麗に結っていた髪をぐしゃぐしゃに乱した。国重のつなぎの上に手を当て、詠唱になどなっていない意味の無い言葉を繰り返す。

「治れっ、治れっ、治れぇっ……!」

「紅子、や、やめてよぉ」

 凄まじい形相の紅子が、血を流す国重の体を揺さぶっている。キキは祖父の体を護るように覆いかぶさった。

「そんなことしたら、おじいちゃんが、死んじゃうよぉ!」

「キキちゃん、大丈夫だからっ、いま、治すからっ……」

 涙を流しながら、笑みを向ける紅子に、キキは恐ろしくなってかぶりを振った。

「ど、どうしちゃったの、紅子ぉ……」

「……混乱……してる、だけだ」

 キキの呟きに、シオンは荒い息を吐き出しながら、答えた。

 紅子の傍まで這って行き、その肩をそっと掴む。

「浅羽、落ち着け……揺すっちゃ駄目だ……」

「お、おにいちゃ……?」

「大丈夫だ、浅羽……落ち着け……」

「……お、小野原、く……? おの、はら……くん……」

 しゃくり上げながら、紅子がシオンを見上げる。

「ま、まほうが、つかえない、の」

 子供のように、紅子が丸めた手を目許にあて、ひっくと鼻を啜る。

「いつも、つかえる、のに」

「知ってる……大丈夫、使える。ちょっと、混乱してるだけだ……」

 シオンは紅子の肩を掴んだまま、顔を歪めた。膝が痛む。頭も痛い。だが、すぐに力無い笑みを向けた。そうじゃないと、彼女が怖がる。

 紅子を落ち着かせるつもりで、自分のほうがその肩に縋りついてしまいながら、シオンは彼女の耳許に口を寄せ、なるべく優しい声を出した。

「いま、お前は驚いてるんだ。そうだよな。こんな戦闘、したことないんだ。攻撃しないと、回復しないと、サポートしないと……いっぺんに、頭の中で考えたからだ。魔法が使えなくなったんじゃない」

 シオンは紅子の背中に腕を回し、撫でた。

「こんなこと、誰だってあるんだ。皆、こんなもんなんだよ。こういうことを繰り返してきただけなんだ」

 革鎧越しにも、彼女の体が震えているのが分かる。

「ちょっとしたことで足を引っ張ったり、助けられたり……何もかも経験や計算で起こることじゃない。最初の仕事でいきなり強い敵に遭って、死ぬ奴もいる。でも、そんなの、よくあることなんだ。それは、誰が悪かったってわけじゃない」

 シオンの声は優しい。紅子を責めるような口調は少しも無かった。

 本当は、彼だって国重を助けたいと焦っているはずなのに。

「何が悪いとか、誰が役に立たなかったとか……初心者とか、ベテランとか、子供とか、大人とか、亜人とか、人間とか……そんなの全部、関係無いんだ。ただ、たまたま生きてきた奴が、今日も生きてるだけだ」

 紅子はシオンの胸に顔を埋め、そのぬくもりの中で、泣いた。

「浅羽、深呼吸しろ」

「た、たすけ、たい……みんなを、なおし、たいよ……」

「分かってる。落ち着いて、息してみろよ。ゆっくりでいいから」

 妹尾家でご飯を食べた、あの時間に戻りたい。

 また皆で、笑ってご飯を食べたい。

「オレが、数えるから、合わせて」

「ど、どうする、の? なに、したら、いい?」

「ゆっくり、息を吸って、吐くんだ」

 ひっ、と鼻を啜りながら、紅子は白い頬にだらだらと涙を流した。

「ど、どうやって……?」

 いつもみたいに、教えてほしい。

 一緒に、冒険してるときみたいに、助けてほしい。

「おの、はら、く……お、おしえて……わかん、ないの……」

「オレがゆっくり、数を数えるから。合わせて、息を吸って、吐いて」

「で、でも、ゆっくり、してたら……」

「まず、お前が落ち着くんだ。じゃないと、誰も救えない。国重さんは強い。まだ大丈夫だ」

 言葉通り、ゆっくりと、シオンは彼女の背中を撫でた。

「いーち……にーい……さーん……」

 子供をあやすように、撫でるリズムに合わせ、シオンが数を数えていく。

「……しーい……ごー……」

 優しい声に促され、紅子はたどたどしく、呼吸を合わせていく。

 シオンの髪とそこから覗く耳が、紅子の鼻先をくすぐった。

 彼の体は温かかった。怪我をしていても、苦しげでも、生きる力に溢れている気がした。

 生きてる。小野原くんは、生きてる。

 紅子が一人でもゆっくり呼吸出来るようになると、シオンは自分のスカーフの中に指を潜らせ、首に付けているチョーカーの紐を引き千切った。

「浅羽」

 紅子の手を取り、小さな魔石を握らせる。

 桜が言っていた、心を護ってくれる石。

 彼女の心も落ち着かせてくれるように、シオンは願った。

「オレ、魔力があるとか無いとか、分かんねーけど。オレが怪我したとき、浅羽はいつもすぐに治してくれるよな。そのとき、オレのことを治したいって浅羽が思ってくれてるんだって、何となく分かる。あの、鬼熊の子供のときも、密猟者を治したときも、そうだったな」

 そうしたいと思うとき、いつだって彼女は奇跡を起こしてきた。

 それは、強い魔力を持つからじゃない。

 きっと、彼女がただ、そうしたいと素直に思うからだ。

 魔法のことなんて何も分からないシオンが、勝手にそう感じているだけだが。

「いつも、浅羽は浅羽だから。いまも、魔法はちゃんと使えるよ。もう一回、やってみろ」

 片手に魔石を握らせたまま、シオンは紅子のもう片方の手を取って、国重の体に触れさせた。

 紅子は涙を落としながら、怖々と呟いた。

「……じゅもんが、わからないの……」

「いつものでいい」

「さっき、できなかったの……」

 シオンから貰ったチョーカーを握り、紅子はぎゅっと目を閉じた。自信が無くなってしまった。自分の器に満ちる魔力は感じられるのに、いつもはそこから幾らでも力を引き出して使えるのに、今は引き出し方が分からない。いや、分かっているのに、言うことをきいてくれない。また出来なかったら、どうしよう。

「今度は出来る。オレたちを助けてくれた国重さんを、助けてやってくれ」

「おじいさん……」

 そうだ。

 誰より大事なはずのキキよりも先に、自分を助けてくれた。

 そのキキと、目が合った。

「紅子……」

 勝気で生意気な少女は、顔の半分を負傷して血を流しながら、縋るように紅子を見上げた。

「……おじいちゃん……血がいっぱい出てるよ……」


 ――お兄ちゃん……。


 最後に憶えているのは、血がたくさん流れていたこと。

 その中で、お兄ちゃんが笑ったこと。


 お兄ちゃん、助けてよ。

 私、魔法を使いたいの。

 どうやって、使ってた?


「……お兄ちゃん、お兄ちゃん……お兄ちゃん……生きて……」

 あのとき、血の海に倒れていた兄の体にも、手を当てた。

 何も考えずに、ただ、兄を助けたいと思った。

 大嫌いだった意地悪なお兄ちゃん。

 でも、初めて笑ってくれて。

 これからは、仲良くなれると思ったの。

「……お兄ちゃん……」

 涙と共に、嗚咽が漏れる。

「……お兄ちゃん……ごめんね……お兄ちゃん……」

 悔恨の言葉が力を持って、紅子の魔力を素直に引き出した。

 詠唱は、内包した魔力を術者の望む形で発動させるのに、術者自身にそのイメージをはっきり持たせるために行うものだ。

 本当は、言葉なんて何でもいい。ただ、その何でもいい、というが、誰にでも出来る芸当では無い。

 これまで様々な魔道士によって生み出された詠唱式を、紅子はまるで無視して、高度な魔法を使ってきた。

 魔法イメージを組み上げる段階で、彼女の術式はすでに完成しているのだ。そのくらい素直に、呼吸をするように彼女は魔法を使えたのだ。あとはそれを、外に開放するだけ。

「……お兄ちゃん……助けられなくて、ごめんね……」

 でも、この人は、助ける。

 紅子の魔力が、国重の体に吸い込まれるように流れていく。彼の魔素と性質の異なる紅子の魔力を馴染ませるには、紅子の集中と国重自身の魂の力が不可欠だ。

 まだ温かい器に、一生懸命しがみついている魂がある。

 それは、国重の生命の力だ。

 この人は、まだ――いっぱい生きたいって思ってる。

 誰かを治すとき、その人のことを考える。知らない人でも、その人が産まれて生きてきたことを考える。

 どんな人も、動物も、魔物も、最初は赤ちゃんで、お母さんが居たんだろうと思う。だから、その人が良い人か悪い人かなんて考えずに、助けられる。

 知ってる人なら、もっと分かる。優しい親分。キキちゃんのおじいさん。私と一緒で、お菓子が大好き。魔法を使えること、褒めてくれた。危ないところを助けてくれた。

 器が激しく損傷していても、生きる意志が強ければ、それだけ治癒ヒールは効きやすい。紅子に治療経験が多いわけでは無いが、今までの誰よりも彼の魂は強く留まっていた。彼は、護るものが多い人なのだ。その魂を、力強さを、紅子はしっかり記憶した。

 誰かを治すたびに、知ってる生命いのちが増える。

「……生きて、生きて……生きて、親分……」

 血が止まり、傷が塞がっていく。削れた肉のぶん、流れ出た血のぶん、紅子が魔力を押し込む。それに応え、国重の体が再生していく。銀色の鱗が輝きを取り戻す。

「お、おじいひゃん……」

 紅子の集中を邪魔しないよう、黙って国重にしがみ付いていたキキが、泣きじゃくりながらその首に抱きつき、怪我をしていないほうの頬を擦り寄せた。温かい。

「……お、じいひゃん……もう、だいじょうぶだよぉ……」

「うん……」

 シオンも紅子の隣でうなだれ、ほっと息をついた。

 キキは未だ血まみれの顔を、小さな獣のように国重の顔に押しつけていた。何度も。何度も。

「キキの、キキの……おじいひゃん……」

 国重の顔も、穏やかなものになっている。

 いつの間にか、ぐうぐうといびきを掻き始めた。

「オヤジィィィーーーーー! お嬢ぉーーーーー!」

 上から、妹尾組のリザードマンたちの声がした。

「すいやせん! 上に獣堕ちが出たんで、片付けてたんで!」

「大丈夫ッスかぁぁぁーーーー!」

 キキはがばっと顔を上げ、国重のつなぎの胸ポケットを探った。無線機がひしゃげて壊れている。

 それをぽいと放り捨て、キキは上に向かって怒鳴った。

「遅せえぞぉ! お前たちぃ!」

「あっ、お嬢っ! 無事ッスかぁ!」

「ぜんぜん、無事じゃねえよ……」

 キキはそう呟くと、いびきを掻く国重の腹に、こてんと頭を預けた。顔や背中が痛む気がするが、まだ興奮しているので麻痺している。それに、紅子に治してもらえると分かったので、我慢出来た。ついでに、鼻もちょっと高くしてもらえるだろうか。

 それと――ちゃんと、ごめんなさいって言えるかな。ほっぺたを叩いたこと。あと、まあ、ブスは言い過ぎた。

 それから……ありがとうも。

 ようやく仲間が駆けつけ安心したキキは、国重にしがみ付いたままとりあえず目を閉じた。

 妹尾組の声を聞いたシオンも、ほっとした途端に崩れ落ちた。その体を、紅子が慌てて抱き留めた。

「ごめん……浅羽」

 掠れた声で詫びるシオンに、紅子はまた涙を零しながら、言葉の代わりに何度も頭を振った。

「うっ……うっ……わ、わたしっ……わたしこそっ……」

 いつも、いつも、助けてもらってる。そう言いたくて、どうしても言葉にならず、代わりにシオンの頭をぎゅっと抱いた。

 頭を上げたシオンの視界に、紅子の泣き顔が映る。

 涙の雫が温かい雨のように、シオンの上にぱらぱらと降ってきた。

「ううっ……あうっ……うっ、うあぁーん!」

 小さな子供みたいに、大泣きする。キキみたいだ。そう思いながら、シオンは彼女を安心させようと、ぎこちなく笑った。

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