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今日、僕は彼女に出会った。
彼女は、カウンターの向こうにいた。数冊の本と赤のボールペンを差し出すと、下を向きなにやら作業をしていた彼女は顔を上げ、それを受け取った。
真っ黒なセミロングの髪、通った鼻筋、そしてなによりも、レンズの大きな黒いフレームの眼鏡が印象的だった。一昔前には、よく見かけたものだが、最近はあまり見ない。
教室の隅で静かに本を読んでいる女子生徒。彼女は、まさにそんな感じだった。
「カバーは付けますか?」、「先にお会計をします」。それに対する僕の返事は、「大丈夫です」、「はい」。それだけだ。
彼女は、丁寧にボールペンを小さなビニール袋に入れる。僕は、彼女の頭頂部をじっと見つめる。彼女は何を考えているのだろう。それとも、何も考えていないのだろうか。
やがて、本とボールペンが入ったビニール袋が渡される。彼女の顔に浮かぶのは、自然な笑顔。そこには、なんの意図もない。
「あなたは、本が好きなんですか?」
「ありがとうございました。」
「ありがとうございます。」
実際、僕が口にしたのは、最後の儀礼的な言葉だけだ。僕に質問をする勇気はない。小さく首を曲げ、そのまま立ち去る。本屋の出口付近では、最近話題の漫画が山積みされていた。
本屋を出る。最近、太陽の光もすっかり柔らかくなっていたが、その日は風もない夏日だった。頬を滲み出した汗が伝う。
僕は、彼女についての考察を始める。
彼女は、どんな本が好きなのだろう?あの、落ち着いた感じは、古典や純文学を読んでいそうだ。僕の買った大衆文学の本を見て、どう思っただろうか?
評論はどうだろう?いや、彼女は評論よりも小説だ。彼女から、誰もが納得する論理だけで物事を思考しているような印象は受けなかった。人間の心の動き、計算では到底求めることができない道理にも通じてそうだった。
僕は、彼女のことが気になっていた。彼女と仲良くなってみたい。そう思い始めていた。




