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神様の玩具

 チュンチュンと小鳥の囀る声が聞こえてくる。もう朝が来てしまったらしい。

「朝っ!?」

 その事実を認識した瞬間、シルヴァンは飛び起きた。とっさにベッドに目を向ける。

「あれっ!?」

 ベッドに寝ていたはずの、昨日拾った少女がいない。まさかと思って持ち物をチェックしてみる。大丈夫、何も盗られてはいない。財布も無事だ。

「逃げたのか……?」

 たしかに起きたら知らないところに寝かされていたわけだから、逃げ出すのも無理はないかもしれない。それにしても、倒れていたところを拾ってやったんだから、お礼の一言ぐらいあっても良さそうなのに。

 まあしかたないと諦めようとしていたところ、ドアが勝手にガチャリと開いた。

「おっ!」

 シルヴァンの耳に届いたのは少しハスキーな女性の声。

「やっと起きたのか!」

「え?」

 少しも遠慮する様子なく部屋に入ってきたのは、十六、七と思われる美しい少女だった。そしてその少女の姿を見たシルヴァンは呆然と立ち尽くした。

 白磁の肌も、腰までの銀色の髪も、色香を含んだ翠の瞳も、長いまつげも、筋の通った小さな鼻も、うっすらと紅を帯びた頬も、薔薇色の薄い唇も。

 すべてが計算されて作られた、神様のための人形のような美しさ。

 そんな凄絶ともいえる美しさの少女にシルヴァンが魅入られていると、少女はシルヴァンのすぐそばまで近寄ってきた。

「お主が私を助けてくれたのか?」

「は?助けた?」

「違うのか?気づいたらこの部屋に寝かされていたのだが。今、顔を洗って戻ってきたところだ」

「…………え……えぇ!?」

 まさか昨日拾った少女と、この少女は同一人物なのだろうか。そういわれればたしかに着ているものや髪色が同じだ。――驚いた、顔の汚れを落とすとこんなに違うものなのか。

 シルヴァンの表情から正しく意味を読み取ったらしい少女は「ふむ」と頷いてにっこりと微笑んだ。

「やはりお主か、礼を言うぞ。私はエリアーヌ。お主は?」

「あ、ああ、俺はシルヴァンだ」

「そうか、シルヴァンか。ではシル、いくつか質問なのだが、ここはどこだ?それから、私は何でこんなところに?」

 勝手に愛称呼びとは。エリアーヌは少々偉そうなところのある少女らしい。

 ともあれシルヴァンは質問に答えようと口を開いた。

「ここはブーケって言う街。それでエリアーヌ……さん?は、街道に倒れてたから、俺がこの宿まで運んできた。……分かった?」

「なるほど。しかしブーケとは初めて聞く街だ。あまり有名ではないところか?」

「ああ、そうかもな。小さい街だから……。でも初めて聞くって、知らずにこのあたりをうろついてたのか?ていうかエリアーヌ……さんは、何でこんなところにいるんだ?」

 シルヴァンがそう尋ねると、エリア-ヌはむっと口をへの字にして押し黙った。

「………………なぜだろう」

「……は!?」


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