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少女を拾う

 寒かった冬が明けて、春。

 やっぱりこの季節が一番好きだと思う。基本、寒いのは苦手だから、冬はあんまり移動できないし。その点、春はいい。あったかいし、花は咲いてるし、なんか新しい出会いがありそうだし。

 そんなことを考えながら、馬車に乗って馬を動かしていた青年、シルヴァンは少し休憩を取ろうと馬車を止めた。

 そばにあった小川からバケツに水を汲んで、馬に与える。シルヴァン自身は洗った林檎をシャクリと食べる。瑞々しくていい林檎だ。

 休憩終了、そろそろ出発という時、シルヴァンは見つけてしまった。――地面に倒れこんでいる、少女の姿を。


  ◇


「これって誘拐……じゃないよな」

 先ほどの休憩中シルヴァンが発見した少女は、現在安宿のべッドの上に寝かされていた。あのままあの場所に放っておいたら日が暮れかけているこの時分、この少女は間違いなく狼の餌食になっていただろう。そう考えると見つけてしまった以上、この少女を助ける責任はシルヴァンにあるわけで、やむなく拾ってきた次第だ。誘拐ではない……はず。

「新しい出会いがほしいとは思ってたけど……」

 まさかこんな形での出会いとは。神様はなにを考えているのかと疑問になる。まあ神様の思し召しだというのなら、こんな出会いでも大切にしなくてはならないのだろう。

「しかしこいつ……女の子、だよな?」

 少女は随分汚れた容姿をしていて、服装や身体のラインから女性だということが何とか分かる程度だった。何か事故にでも巻き込まれたのだろうか。面倒なことに巻き込まれるのはごめんだから、少女の意識が戻ったら速やかにお引取り願おう。

 そんなことを考えているうちに、徐々にシルヴァンを眠気が襲ってきていた。しかしベッドは少女に占拠されている。さて、どこで寝たものか。まさか少女と同じベッドで寝るわけにはいかない。

「床で寝ろってか」

 それ以外の選択肢は椅子の上くらいだが、以前それを体験した時、起きた時の身体の痛みが酷いものだったため遠慮しておく。

 ごろりと床に横たわると、埃が鼻をくすぐった。掃除が行き届いていないような安い宿だが、野宿をするよりよっぽどましだ。夏になれば節約のために宿に泊まらないことが多くなる。

「朝になったら……」

 ――少女は目を覚ましているだろうか。と呟くよりも先に、シルヴァンの意識は闇に誘われていった。

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