第七話 記録管理室
大型コンピューターの管理室は関係者以外立ち入り禁止らしい・・・
関係者と言うのはデータの管理を受け持つ支援関係の仕事についているギルド員の中の
資格を持った者だけらしい・・・
その為、データバンクへの接続は直接は出来ず、管理者に頼んでバンクにアクセスしてもらい、
必要なデータを引き出してきて閲覧するだけらしい・・・
そして、その受付カウンターでクルシスと管理者の女性が揉めている・・・
クルシス 「この戦績だぞ!無いなんて事があるわけねぇぞ!」
ドンッとカウンターを両手で叩き、相手に唾を欠きかける勢いで怒鳴りつける。
女性 「無い物は無いです。」
相手の方は全く相手にせずに落ち着いた対応をしている・・・
クルシス 「この実力だぞ?今時個人で生き残るのは不可能だ、だからどこかのギルドに加入してる
はずだ、だからデータバンクのどこかに残ってるはずだ!」
クルシスは引き下がるつもりは無いらしい・・・
女性 「・・・はぁ・・・貴方はいつも強引ですね、そんなんじゃモテませんよ?」
クルシス 「うぐっ・・・」
痛いところを突かれたのかクルシスは黙り込む・・・
スイレン 「すいません、本当に無いですか?本の小さな事でも良いんです、何か合ったら・・・」
スイレンが必死になって頼み込む。と、女性が少し困った顔をした後に溜息をついて口を開いた。
女性 「無い事はないのよね・・・」
クルシス 「あるじゃねぇか!」
クルシスが先程のお返しとばかりに女性を丸め込もうとするが・・・
女性 「人の話は最後まで聞きなさい、だからいつまで経っても訓練所教官止まりなのよ」
クルシス 「うぐっ・・・」
また痛いところを突かれて黙り込んでしまった。
女性 「それでね、その情報っていうのが、本当にくだらないと言うかありえない記録だから・・・ それに、そうとう古い物なのよ」
スイレン 「その情報をください!」
スイレンはそれでも情報を欲した・・・
女性 「だったら、端末を貸してくれる?」
スイレン 「はい」
スイレンは自分のポーチの中から小型の通信端末の様な物を取り出して女性に渡した。
女性 「概要に関しては今説明するわね」
そう言うと女性がその情報――記録に関して説明を始めた。
まず射撃場の名無しの得点と煮たような記録に関して、これは五十三年前のこの都市に
ギルドが開設された直後辺りの記録。
得点は「命中率100%、的中率98.97%、必中率98.23%」であった。
そしてその記録を出したのが・・・リュウと言う名の少年であったらしい。
そのリュウに関しての個人情報の記録は残っていない。
ただ、記録の中の日記の部分にその名が登場していたらしい。
・記録重要度D 記録番号D1-83
日付:失暦 二三一七年 一一月 二八日 記録者:決戦唯一の生き残り
運命を決するはずの戦闘は終った。
俺一人を残して他のメンバーは全滅してしまった・・・
この都市は自律防衛システムによって消滅する事は無いだろう・・・
しかし・・・この世界を蝕む根源を絶つ事は出来なくなってしまった・・・
私の役目は仲間達が今すぐ帰ってきても良い様にこの都市で帰りを待ち続けるだけである。
そして、リュウとルイの帰りを私は待つ必要がある。
リュウは約束をした「俺は必ず帰る」と・・・
だから、私はこの都市で仲間の――そしてリュウとルイの帰りを待つ――
これが記録の全てであるらしい・・・
この都市は五十三年前に大々的に起きた魔王と名乗る者の討伐作戦の重要拠点であった・・・
その作戦は決行された・・・
元々、この都市の近く・・・と言っても相当遠いが、
そこに魔王を名乗る者が住まう場所があった・・・
まるでRPGゲームに登場する魔王城そのまんまの城が構えていた・・・
そこに、ここの都市に集まった精鋭達が突撃していったのである。
人数は合計で200人弱・・・武装は完璧。これで魔王を討伐できれば、
この荒廃の時代が終ると信じて突撃していった・・・
しかし、その部隊は一人を残して全滅・・・
その生き残りの一人が記した日記らしい・・・
その日記に「リュウ」と言う名無しと同じ戦績を出した少年が居たらしい・・・
しかし、五十三年も前の話なので、名無しとは無関係である・・・
しかし、とても気になった・・・そして、情報管理の女性に話を聞くと、
この日記を記した人はまだ生きていると言う・・・
毎日、今は使われていないはずの第一ゲートで、仲間の帰りを待っているらしい・・・
クルシスがその人物の所まで案内してくれるそうだ・・・