第六話 正確無比
バァンッバァンッバァンッ・・・
連続での発砲音・・・画面に映る名無しは戦場慣れした動きをしている・・・
まるで獲物を狙う猛禽類の様に見られただけで切断させそうな目をしている・・・
クルシス 「すげぇ・・・記録更新しそうだぞ・・・」
現在の訓練レベルは最高レベルの20である・・・
訓練レベル15あれば十分な実力と言われる。自分は訓練レベル18が限界であった・・・
大剣使いと銃師では感覚が違うかもしれないが・・・
それでもこのレベルに到達して殆どの的を必中させるのは凄い・・・
ここは射撃場の制御室である。入り口以外の方向に機械がびっしりと並んでいて、
複数のディスプレイに射撃場内部での訓練の様子がリアルタイムで表示されている。
スイレンは後ろでディスプレイの一つをジッと見つめている・・・
クルシス 「そろそろ訓練終了だな・・・そろそろ魔力切れになるかもだからな」
パネルを操作して訓練終了の合図を送ろうとする・・・
アナウンス 「訓練は終了です。訓練は終了です。元のフィールドに戻します。
射撃戦績はランクEXです。命中率100%、的中率97.38%、必中率90.27%、
平均反応速度2.8秒、最速1.11秒です。」
アナウンスが終了し、訓練が終った・・・
クルシス 「ふぅ・・・すげぇな、ここのギルドの誰よりも強いじゃねぇか・・・」
ここのギルドでの銃師の最高記録は命中率100%、的中率34.73%、必中率13.02%である。
それを圧倒的に上回る戦績である・・・
クルシス 「この戦績なら・・・」
今の戦績と立ち回りを見れば相当な実力の持ち主なのはわかった・・・
そして、これだけの実力なら、データバンクに記録が残っているかもしれない・・・
名無しは射撃場の中心部分に立ちすくしている・・・
クルシス 「あぁー・・・しゃーねぇ、行くか」
名無しを迎えに行く為に射撃場に向かう・・・
スイレン 「えと・・・はい」
その後をスイレンが追ってくる。
射撃場の中心で魔銃を握り締めて呆然と立ち竦む・・・
自分がこんなに強かったなんて・・・
それ以前にどの敵に対しても瞬間的な対処法が思いつき、それを実行していた・・・
一瞬何かの悪い夢か何かでは無いかと疑うが・・・
それは紛れも無く現実であり・・・右手に握った銃の重みが現実だと知らしめてきた・・・
クルシス 「おーい、大丈夫かー?」
肩を叩かれ、ビクッとした後に、ようやくすぐ近くまで
クルシスとスイレンがやってきていた事に気がついた。
クルシス 「何か思い出したか?」
こちらを気遣う様に声をかけてくる・・・
名無し 「いえ・・・スイマセン」
思い出した事は何も無い・・・わかった事ならある・・・
多分・・・自分は戦闘を経験した事がある・・・
意識としては怯んでいても、体としては怯む所か何だが慣れ親しんだ場所に居る様であった・・・
自分が誰なのか・・・そこがとても気になる・・・
クルシス 「何故謝る?まぁ、良いけどな、それよりお前凄いな
あの戦績だ、相当な実力者だぜ?データバンクに問い合わせれば
お前が何処の誰だかわかるかもしれねぇ」
名無し 「本当ですか!」
自分の事が判るかもしれない・・・それを聞いて沈んでいた気持ちが浮き上がる・・・
クルシス 「スイレンと名無しが知り合いだったなら、名無しに関して何かわかれば
スイレンに関しても何かわかるかもしれねぇぞ。」
気を利かしてスイレンにも声をかけるが肝心のスイレンは上の空である・・・
スイレン 「・・・・・・」
クルシス 「スイレン?スイレン、どうした?」
スイレン 「え?あぁ、何にも無いです」
一瞬だけ名無しの顔を見た後にすぐに何事も無かったかの様に振舞う・・・
クルシス 「そうか・・・無理はするなよ、じゃデータバンクを調べに行こうぜ」
名無し 「はい」
スイレン 「わかったわ」
握り締めていたFog-10をガンベルトにしまおうとする・・・
手が硬直しており、引き剥がすのに少しだけ苦労した。
そして記録を管理する為の 大型コンピューターの管理室に向かう。