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第四十六話 罠《トラップ》

都市の防衛機構に接続されている電源供給装置は複数個所に停止装置が設置されている。

その複数個所の停止装置の電源を全て起動させなくては電源供給を停止できない。

逆にどれか一つでも停止装置を停止させれば電源の供給が再開する。

何故この様に手間のかかる様になっているのかと言えば、

単純に防衛機構が意図的に停止させられるのを防ぐ為である。

しかし、今回の場合それが仇となる。


都市内部に魔物が多量に侵入してきている、襲撃を受けたのだ。

その際に、送電装置が停止いる。

すなわち魔物の襲撃によって送電装置(・・・・)が停止している。

そう判断を下した都市管理機構ミクロは何の非もない。

非常事態に考え得る事の出来る一番可能性の高いものであった……


それが普通に魔物に(・・・)襲撃(・・)されている(・・・・)だけなら









燐   「ミクロ、送電装置に異常は無いわよ?」

通信機 『そんな…ジジッ……なっ!?ザザッ…何で停止装置がジジッ…ザーーーーーーーーッ」

燐   「どうしたの?ミクロ?ミクロっ!」


ミクロの指示通りに通路を移動した所、送電装置に到着した。

しかし、送電装置の計測器は通常通りに起動している事を示している。

燐はミクロに支持を仰ごうとしたのだが通信の途中で通信機は雑音(ノイズ)混じりになり、

次第には雑音(ノイズ)しか聞こえなくなった。


名無し  「どうします?」

燐    「停止装置…停止装置…停止装置っ!そうよっ!停止装置っ!」

スイレン 「停止装置?」

燐    「そうよっ!この都市は電源供給の停止する場合、停止装置を全て起動させてるの

      送電装置を停止させると再起動に時間が掛かるの、だから電源供給を停止する場合は

      停止装置を起動させるのよ」

スイレン 「………?」

名無し  「えっと?それが起動しているから電源が供給されていないと?」

燐    「送電装置が停止していないのに送電が停止している。

      これは停止装置が起動しているからだと思うの」

名無し  「なるほど、だったら停止装置を停止させれば良いのか?」

燐    「その筈よ」

スイレン 「だったら今すぐにでも停止させにいきましょう!」

燐    「位置は……え?」


突然、警告音(サイレン)が鳴り響いた。

ガゴンッ……扉が閉まる。


名無し  「何だっ!?」

燐    「……嘘…侵入者用のトラップが起動してるっ!?」

スイレン 「え?何で?」

燐    「不味いっ!二人ともガスマスクを装備してっ!」


大慌てで燐はポーチから何かを取り出した。


名無し  「ガスマスク?持ってないぞっ!?」

燐    「嘘っ!?暴徒鎮圧用の催眠ガスが……」


プシューと空気の抜ける音。部屋の通気口から何かのガスが噴出してきた。

ほのかな甘い匂いが漂ってくる。


スイレン 「え?何これ……なんか…」


ドサリッ……スイレンが倒れた。


名無し  「スイレンっ!」


咄嗟にスイレンの様子を確認するが、穏やかな寝息を立てている事から、唯単に寝ているだけだ。


燐    「……名無し?」


燐が不思議そうに名無しに声をかけた。


名無し  「何ですか?」

燐    「貴方、この催眠ガスが平気なの?」

名無し  「そういえば……」

燐    「………ガスが効きにくい体質なのかも、とりあえず扉を壊して外に出ないと」


不思議そうに首を傾げながらも燐が散弾銃を扉に向けて引き金を引いた。

バゴンッ……ウィーン…ギギィッ……


扉が半分ほど開いたが、残りの半分ほどは散弾によって変形して引っかかってしまっている。

開いた扉から燐が出て、外の様子を確認する。


燐     「大丈夫みたいよ、スイレンを運んで行くわよ」

名無し   「わかった」


倒れたスイレンを背負い、スイレンの杖を燐に蹴って渡して半分開いた扉から這い出る。


燐     「とりあえず停止装置の場所に向かいましょ、侵入者用トラップが起動した理由も

       気になるけれどまずはそっちが先」

名無し   「スイレンは?」

燐     「あのガスは睡眠効果だけだから命に別状は無いはずよ、

       どこかに避難させておくのはだめね、合流が難しくなるし、

       どちらか一人がそこで待機しておかないと魔物に襲撃されかねないし」


スイレンを安全な場所に安置した方が良いかもしれないが、

燐の言う通りで、この都市内部で安全な場所と言うのは無い。

魔物に嗅ぎ付かれて襲撃を受ければ眠っている人間等ひとたまりも無い。

スイレンを背負っての行動は危険かもしれないが、スイレンを見捨てて行く訳にも行かない。

スイレンが眼を覚ますまで待っていてはギルド本部が危険になる。


名無し   「じゃあ、俺が背負っていく」

燐     「了解、停止装置はさっきの格納庫の所にもあったはず、そこまで戻るわよ」

名無し   「判った、先行は任せる」

燐     「じゃあ、遅れないでね」


眠っている人間を背負っている名無し、装備品等を含めて合計が自分の体重を超えているはずだが、

機関散弾銃を背負った燐と同じぐらいの速度で付いてきている名無しを一瞥し燐は呟いた。


燐     「人間…じゃないわよねぇ…少なくとも…」


先ほどの暴徒鎮圧用の催眠ガスは、ほんの少量で鯨ですら一瞬で眠りに誘うと言う、

かなり強力な物である。副作用は無く、開発には相当な金額が使われていて、

空気中に散布された場合、屋外であったとしても散布地点から半径120メートル前後の人間を

昏睡または睡眠状態に陥らせる事が出来る代物だ。

それを、室内の、しかもトラップとして設置されている物であったはず。

それなのに名無しには効力を発揮しなかった。

精神力とか関係なく肉体を睡眠状態に陥らせるガスが効かない人間等いるはずが無い。

ガスマスクを咄嗟に装着した自分でさえ少しボーっとしていると言うのに…

やはり、名無しには何かがある。それが何なのかは知らないが、

とにかく注意はしておかないといけない。

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