第三話 断片的
大規模都市・・・元々はそう呼ばれていた所も今ではこう呼ばれる[廃都市]と・・・
医療室にやってきた青年はクルシス、少女はスイレンと言うらしい・・・
クルシス 「状態は?起きてるって事は悪くは無いと思うが・・・」
ミラーズ 「えっと・・・まぁ、アレねスイレンと同じような感じ記憶が飛んでる」
先程メモを取っていた何かの紙を確認しつつ説明を始める。
ミラーズ 「まず身体的外傷は存在しない・・・まぁ、無傷って事ね
聞いた話だと高い所から川に落ちたみたいだけれども・・・
とりあえず、状況はスイレンと同じ感じね」
ミラーズはおでこに手を当てて空・・・まぁ、天井だが・・・を見上げてブツブツと何かを呟き始めた。
スイレン 「こんにちは・・・」
スイレンは見た感じ元気で活発そうなイメージだが、今は表情は暗い・・・
自分と同じ記憶喪失・・・とりあえずおぼろげな記憶の中にスイセンが居た事を話すか・・・
名無し 「あの・・・」
口を開くと真っ先に反応したのはクルシスであった。
クルシス 「どうした?何か思い出したか?」
期待の眼差しでこちらを見てくる・・・
名無し 「いえ・・・そういう訳では・・・」
期待に答えられそうに無いのでとりあえず謝罪しておく。
クルシス 「そうか・・・」
あからさまにがっかりしている・・・とりあえず、完全に期待外れという訳でもないと思う・・・
名無し 「とりあえず・・・えっと・・・スイレンさん・・・でしたっけ?・・・
先程ほんの少し覚えている記憶で確かかどうかわからないのですが・・・
崖・・・からかどうかは知りませんが、一緒に落ちていた少女が居て・・・
その少女がスイセンさんに似てるんです・・・瓜二つで・・・」
スイレン 「・・・っ!!」
ガシィッといきなり少女が両肩を掴んできた・・・
スイレン 「私の事知ってるの!?私は誰!?」
ガックンガックンと揺さ振られて、少しびっくりして途切れ途切れに言葉を紡ぐ・・・
名無し 「おぼろげ、なので、よく、わから・・・」
ミラーズ 「スイレン、落ち着きなさい」
少々強引にミラーズがスイレンを引き剥がす・・・
クルシス 「大丈夫か?・・・とりあえずその話を良く聞かせてくれ」
名無し 「えと・・・その少女と一緒になって落下していて・・・
でも、水面に叩きつけられた時にはその少女は居なくて・・・」
おぼろげな記憶を手繰り寄せて必死になり説明をするが、
どうしてもおぼろげで詳しくは説明できない・・・
名無し 「それで・・・」
ミラーズ 「もう良いわよ・・・とりあえずスイセンと名無しが記憶喪失前に知り合いだった
らしいってのがわかっただけで十分ね・・・名無しとスイセンはこれから一緒に
行動しなさい、もしかしたら記憶が回復するかもしれないからね」
スイレン 「はい・・・わかりました・・・」
名無し 「えと・・・はい・・・」
とりあえずスイセンと言う少女と行動を共にすると言うことになった・・・
ミラーズ 「じゃ、名無しの案内はスイセンとクルシスに任せるわ」
ミラーズはそういうと部屋を出て行った・・・
クルシス 「んぁー・・・あぁ、ここの施設について説明・・・の前にここがどういうところか
わかるか?記憶喪失でそういう事まで忘れてるってのは笑えないからな」
クルシスは名無しとスイレンの二人に話しかけてきているらしい・・・
スイレン 「すいません・・・わからないです・・・」
名無し 「俺も・・・わからないです・・・」
記憶の中を探るが・・・記憶の中に「魔術結社」と「地下都市」と言う単語は出てこなかった・・・
クルシス 「ぁー・・・説明・・・まぁ、ここで座って話すより、実際に設備を回りながら説明
した方が効率がいいな・・・よし、名無しは歩けるな?」
名無し 「はい」
クルシス 「じゃ、しっかり着いてこいよ」
名無しはスイレンと共に「魔術結社」のギルドのある、
小型地下都市――「影潜魔法都市」と言うらしい――を案内してもらう事になった。