第三十六話 防衛戦闘
名無し 「皆っ!魔物は土の下だっ!」
はるか彼方で起きている光景を遠見の魔法で確認して皆に伝える。
秋春 「なるほど、土の下か…という事は地面毎吹き飛ばすのが良いか」
燐 「この機関砲じゃ意味無いわね、私にも擲弾発射機を」
秋春はM79に照明弾ではなく多目的高爆弾を装填して、攻撃を開始し
凛は二台のハッチの中へと消えていく。
アリス 「輸送中武装にMk19があります、それの設置をお願いします」
白影 「俺に任せろ」
アリスの声を聞いて、白影が二台のハッチの中に消えていった。
風鈴 「武器変更擲弾発射器装着」
風鈴がそう言うと人型の影の持っていた弓やボウガンが消えて、
同じく影で作られたM79擲弾発射器やダネルMGLが現れ、
それを持った影がそれぞれの方向に対して弾を発射し始めた。
ドォーンッドォーンッと連続的に爆発音が響き渡る。
アリス 「敵との距離が50を切りました、敵の個体数確認、おおよそ120です」
秋春 「数が多い…なんてグチってもしゃーねーか」
ガゴンッとハッチが開き、擲弾発射器を背負った燐と、大きな箱を背負った白影が出てきた。
燐 「敵の個体数は減少した?」
アリス 「敵の個体数、おおよそ110まで低下」
白影 「自動擲弾発射器はどこに設置すればいい」
燐はアリスの返事を聞くと同時に眼にも留まらぬ速さでM79に多目的高爆弾を装填し、
白影は背負っていた金属製の箱を下ろして箱を開ける。
箱の中には、銃身の太い重機関銃の様な物が入っており、
箱型弾倉には多目的高爆弾を金属製ベルトリングで固定した物が詰まっていた。
白影は、固定台を取り出し、アリスの指示した場所に設置し、
固定台にある何かのコードを、床の接続部分に接続して、その固定台に自動擲弾発射器を固定する。
固定が完了すると白影が触っても居ないのにMk19は動き出し、
その銃口を前方に向け、ボシュッボシュッボシュッと連続で弾を発射し始めた。
次の弾に手を伸ばした所でガゴンッと車体が揺れた。
アリス 「敵と接触しました!車体の損傷を確認しています」
焦ったような声、咄嗟にM79をMk19の入っていた箱に投げ込んで、
右手にFog-10、左手に自動式拳銃を握って、手摺りから身を乗り出して
魔物の突撃を喰らってなお走行を続ける輸送車の側面を確認する。
すると、側面部分に数匹の魔物が張り付きよじ登ろうとしていた。
名無し 「不味い!登ってきてる!」
風鈴 「チュッ!任せるチュ!」
風鈴が素早く反応し、何か詠唱を始める。
風鈴 「武器変更長柄武器、装着」
風鈴の操る機構人形10人?の内4人が擲弾発射器が消え、手に鉾槍を持ち、
よじ登ってくる魔物を突き落としていく。
燐は制御室(運転席)のハッチを空け、その中に入っていき
機関散弾銃を背負って出てきた。
燐 「私のダーリンが活躍するわよ♪」
秋春 「糞っ、俺の魔法じゃ威力が高すぎて無理じゃねーか」
そう毒づいてからM79を使って、まだ車体に取り付いていない魔物を攻撃する。
白影は先ほどから、無言で愛用している弓、月影で魔力矢を
眼にも留まらぬ速度で打ち出し車体に取り付いた魔物を打ち抜いていた。
名無しも負けじとFog-10に装填しておいた火炎弾で
車体に張り付いた魔物を焼き落として行く。
勿論、威力は抑えて車体に損傷を与えない様に注意している。
どれくらい時間が立っただろうか?都市まで後少しと言う所。
車両の上の櫓状になっている所には、擲弾発射器の薬莢が多量に転がっており、
側面には、多少の凹みや穴がある位で、それ程深刻な破損はしていない。
アリスの「付近の魔物反応は消滅しました、引き続き警戒をしてください」と言う言葉を聞き、
辺りを警戒するのを完全に説いた訳ではないが、一息ついた。
今回、自動機関砲は、相手が土に潜って接近して、射角外から車体に飛び付いて来ると言う、
砂狼が敵だったため、使う機会がなく
仕方無しに輸送中の物資である擲弾発射器と照明弾八発に多目的高爆弾三百発、
自動擲弾発射器1機、ベルトリングに固定された多目的高爆弾100発を消費してしまった。
名無しは魔力を結構消費した筈だが、魔力枯渇の感じはなく精神的にのみ疲れただけであった。
秋春と燐は魔力をまったく使用していないらしく疲れていなかった。
不思議な事に魔力を多量に使用する筈の人形を使っていた風鈴と
魔力矢を眼にも留まらぬ速さで発射していた白影もまったく疲れている気配を見せなかった。
都市に到着した時に丁度太陽が姿を現した所であったが、
空は暗雲に包まれていて薄らと明るくなった毎ぐらいしか判らなかった。