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第三十五話 接敵《エンカウント》

真っ暗な森の中、車両が通れる様にと整備された道を走る。


上空から見ても判らぬ様に、頭上は木々が生い茂り、夜空を隠していた。


とはいえ、例え夜空が見えたとしても、月明かりという恩恵は受けられないのだが…




都市内部の投影装置によって天井に描かれる夜空は過去の物なのである。


今の夜空は、薄暗く淀んだ暗雲が立ち込め、昼間は薄暗く、夜間は完全な暗闇に世界を閉ざしている。




そんな夜空を思い浮かべながら、辺りの様子を伺っていると、いきなり警告音アラームが鳴り出す。


白影   「何事であるか」


燐    「どうしたの!?」


秋春   「敵かっ!?」


警告音アラームが鳴り出した瞬間に名無しは右手に自動式拳銃を、左手にFog-10を持ち、


ハッチ部分から立ち上がって、車両右側――白影とは反対側――そこを睨み付ける様に見る。


だが、闇に包まれた視界の中には薄っすらと過ぎ去っていく木々しか見えない。


スピーカーからアリスの声が聞こえる。


アリス   「全方位より魔物反応接近、距離1200、魔物個体の識別不可能、注意してください」


その声が聞こえた途端、皆の雰囲気が変わる。


風鈴    「遠距離攻撃ロングレンジ人形ドールズ召喚サモン人形ドールズ展開オープン


風鈴はハッチに座ったまま眼を瞑り、言葉を発する。


すると、風鈴の周りに様々な様式の弓やボウガンを持った人型の影が現れる。


アリス   「接敵までの予測時間おおよそ5分、誤差±3%」


秋春    「暗すぎて敵が確認できねぇーぞ!」


秋春の零した言葉は最もである。2メートル先を闇に包む程の暗さなのだ、


この状態で戦闘が開始された場合、向こうは此方が見え、


こちらは向こうが見えないという最悪の状態だ、秋春が灯炎ライトフレアで辺りを照らし出そうとするが、


それでも10メートル先は闇に包まれている。


アリス 「輸送中の荷物の中にM79擲弾発射器グレネードランチャーと照明弾、多目的高爆弾が御座います」


そのアリスの言葉を聴いて、素早く荷台の部分に秋春が向かい、


荷台のハッチをこじ開け、その中に入って行く。


秋春  「あったぞっ!おいっ!名無し、手伝え!」


直に目的の物を見つけた秋春の声が聞こえたので、風鈴に目配せをした後、


素早く両手の銃をしまって荷台のハッチの中を覗き込む。


秋春  「装填はまだだ、ほらよっと」


内部から秋春がM79擲弾発射器グレネードランチャーを投げてよこしたので、それを掴み取る。


肩紐があったので、それを肩にかけ、今度は照明弾と多目的高爆弾の入ったボックスを受け取る。


ボックスは相当な重量があるが、秋春が強引に押し上げてくれたおかげでなんとかできた、


アリス 「接敵まで後2分を切りました」


そこでアリスの声を聞き、慌てて照明弾を装填し、車両右側の方に向け構え、引き金を引く。


ボシュッっと言う音と、軽い反動を腕で感じつつ、飛んで行く弾を見ていたが、


それが闇に包まれた森の中に消えるのを見守っていると、秋春が反対側に照明弾を撃ち込み始めた、


咄嗟にこちらも新たに照明弾を装填しようとすると、右側で閃光が迸った。


照明弾によって照らされる森は、アリスの予測通りなら魔物が居るはずの地点、


しかしそこには何も居ない、咄嗟に再装填した照明弾を後方に放つ。


秋春   「おいっ、敵がいねぇぞっ!」


反対側から秋春の怒声が聞こえる。 どうやら反対側も敵が確認できないらしい。


後方に照明弾を放ち、眼を凝らす。


アリス 「距離250まで接近、接敵までおよそ1分を切りました」


どことなく焦ったようなアリスの声が聞こえる。


燐   「ちょっとっ!敵の姿が見えないわっ!魔物の反応は本物なんでしょうねっ!」


銃座に座り、ライトアップされる車両の前方を睨み付ける燐がアリスに怒鳴りつける。


白影  「敵は居る、だが姿が見えぬ」


秋春  「くそっ、敵が見えない」


照らし出された後方には敵の姿はない。魔物の反応は確かに接近してきている。


だが、その姿は見えない。考えられるとしたら…


咄嗟に照明弾ではなく、多目的高爆弾を装填し、アリスの予測距離と接敵時間から、


今の相手の距離を割り出し、着弾予測時間を考えてからそこに向かって攻撃を放つ。


照明弾の時よりも少し大きいボシュッっと言う音と反動を受け止め、


己が放った物がどんな結末を迎えるのか、未だに照明弾によって照らされる森の中を、


弧のを描いて飛んでいく高爆弾を見る。


その弾が己が狙った地点に吸い込まれる様に着弾する――



光が発生し、爆炎を巻き上げる様子を見て、一瞬遅れて


ドゴォーンッっと100メートルの距離をとっていてなおこちらに届く衝撃を感じ、


爆煙も消えぬ着弾地点を睨む様に見ると、


小さな点の様な物が着弾地点の周りでもがいている…

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