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第三十一話 一方的虐殺《ワンサイドゲーム》

メインサーバールームには、大規模型のサーバーが多量に設置されている。


サーバーの放つ熱を、冷房設備が冷やし続けている。


アリス 「では、提示を希望する情報を指定してください。」


サーバールームの中央部分にぽっかりと空いた空間。


そこには何らかの液体に満たされた生命維持装置の様な筒状の装置が設置されていて、


その溶液の中には女性が入っており、その女性が先ほどのアリスと名乗った


都市管理人工知能の本体のデバイスであるらしい。


クルシスが視線を漂わせて頬をかき、秋春も困った様にそっぽを向いている。


白影は特に気にせずに物珍しそうに円筒形の装置を眺めている。


名無し自身は急に目の前が真っ暗になったので少し戸惑ったが、


スイレンが背後から眼を塞いで「見ちゃだめ」と言ったので大人しくしている。


そんな男性陣の様子を女性陣の大半は冷めた目で見ていた。


そんな客人の様子を擬似デバイスの瞳で見ている。


アリス 「再度問います提示を希望する情報を指定してください」


無機質な瞳に皆を映しつつ淡々とした言葉を再度続けた。


ミラーズ「はぁ、男共が役に立たないわねぇ、とりあえず都市が襲われた時の状況は?」


呆れたようにミラーズが男性人を睨み付けた後に、アリスに指示をだした。


アリス 「畏まりました。

    襲撃された時間は18:23、全滅した時間は19:28

    襲撃時の魔物の種類別のおおよその個体数は、

    黒猟犬ブラックハウンド闇黒狼ダークウルフ牙獣ビーストファング等の

    動物の変異種である魔物が3000匹程

    骨格兵スケルトン死体人ゾンビ等の人間の変異種である魔物が200匹程

    一部にLevel2らしい個体を確認。 都市内部の防衛線の映像を御覧になりますか?」


ミラーズ 「重要拠点の防衛戦闘だけを表示して」


アリス  「了解いたしました。」




表示された映像は城の防衛戦闘の様子であった。


多数のガードロボット、執事服を着た青年の姿をした機械人形が、


機関銃マシンガン突撃銃アサルトライフル狙撃銃スナイパーライフル散弾銃ショットガン等で迎撃を開始した。


防御壁にわらわらと寄ってくる魔物に攻撃開始した。


だが、魔物に命中した弾丸は弾かれ、あらぬ方向に飛んでいく。


被覆鋼弾フルメタルジャケットやソフトポイント弾ばかりを使っている防衛機構では、


硬質化した魔物の皮膚を貫く事は出来ず、弾かれてしまうのは当然の事である。


その所為で魔物の大多数に対してまともにダメージを与える事は無く、


防衛戦闘でありながら、まるで一方的虐殺ワンサイドゲームの様に見えてしまう。


……防御壁に寄り付いた魔物が液体を吐きつけた。


液体が防御壁に付着した瞬間に多量の煙が発生して、次の瞬間には壁が溶け始めた。


防衛隊に配属された蝙蝠獣人フルークフーデが慌てて機械人形に命じて弾幕を激しくする。


しかし、それは兆弾による自滅を招く結果になっただけである。


その間にも壁が溶かされ、壁に穴が空いた。


その穴から小型の魔物が進入を開始した。


蝙蝠獣人フルークフーデが慌てて進入した魔物を迎撃するが、


倒しても倒しても魔物は殺到するばかりで数は一向に減らない。


……使っていた銃器の弾薬の補充行動をとろうとした蝙蝠獣人フルークフーデを魔物の一匹が押し倒す。


そこに数匹の魔物が群がる。服や鎧、装甲を切り刻み、肉や内臓を貪る。


その蝙蝠獣人フルークフーデは瞬間で骨だけになる。それを見た他の部隊員は逃げ出そうとする。


背を向けた背後から飛び掛られ、同じ様に肉を貪られ、骨だけにされる。


魔物にかかれば軽装甲鎧等紙切れに等しい…


判ってはいたがここまで酷いとは思っても見なかった…




城の防衛戦闘開始から23分53秒:配置されていた防衛隊員の生命反応の消滅を確認


城の防衛戦闘開始から43分34秒:防御機構の破損率が70%を突破を確認


城の防衛戦闘開始から53分24秒:シェルターの防壁の破壊を確認


城の防衛戦闘開始から60分00秒:都市内部に存在する人間種の生命反応の消滅を確認


都市防衛機構の敗北を確認......重要拠点の半数が使用不可能.....


以上が都市管理人工知能が保管していたデータであった。




部屋の中は静寂に包まれていた。 響くのはサーバーの稼動音と空調管理装置の音のみである。


先ほどの映像が余りにも残酷で、余りにも嘘染みていて、そして自分達の未来の様で…


皆が言葉を失う。


ミラーズ 「襲撃を受けた理由は?」


その静寂をミラーズが思い切ってやぶった。


アリス 「襲撃の理由で御座いますか?

    確実な理由かは不明ですが、スミレお嬢様の捜索の為に

    頻繁に都市外部へと調査隊を送っていたのが一番可能性が高いです」


ミラーズの問いにアリスが答える。


スミレ 「やっぱり……馬鹿な叔父様」


突然背後から聞こえた声に振り返ると、スミレは嘲笑を含んだ笑いを上げていた。


そして、笑いながらも明りを捉える事の出来ぬ瞳からは……涙があふれ出ていた……

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