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第二十九話 機械人形《オートマタ》

足音がカツンカツンと響く合金で作られた通路を、周囲を警戒しながら進んでいく。


足音は5人分。


通路を歩いている人数は9人である。


足音が4人分足りない理由はちゃんとある。


白影は隠密行動スニーキングを基本としているので、足音をたてないのは当たり前である。


衣擦れの音や武具の接触音も全くせず、存在感も感じない、まるで影の様についてきている。


ミラーズもどちらかと言えば隠密系の行動を得意とするので足音をたてない歩き方をしている。


そして意外なのだが、燐もまったく足音をたてていなかった、


背中に機関銃を背負っていて、衣擦れや武具の接触するカチャカチャと言う音すら立てていない。


最初の印象がアレなために、この女性は少し特殊だと思ってはいたが、


音を立てずに行動する事が出来る程の実力者だとは思わなかった。


そして、もう一人音を全く立てずに歩いている人物が居る。


履いている靴は金属とゴムの織り交ぜられた靴底のマーチングブーツである。


金属部分が床に接触する時の音がしそうなものだが、それも全くしていない。


そして腰のポーチと背中のバッグ、腰のホルスターの接触音や、衣擦れの音もまったくしていない。


ただ、白影と違い、存在感は完全に消すのではなく、辺りに紛れ込むと言った感じである。


そんな不思議な歩き方をしているのが自分なのである――


そのことに関して戸惑いはすれど、さして驚いてはいない。


戦闘技術に関してアレだけの技術があるのだ、


他にいろいろな技術を持っていたとしてもさして驚くほどの事ではないという判断だ。




通路は非常灯によってぼんやりと照らされてはいるが、


所々の非常灯は破損していたりするので、所々が完全な暗闇に包まれている。


その闇に包まれた空間に何者かが潜んでいる可能性と、


その闇に隠れる能力を持っている魔物のリストが頭の中に浮かんでは消えを繰り返している。


先ほどから無意識に横を歩いているスイレンに話しかけてしまっている。


その度に、何故か自分は顔を背けてしまうし、ぶっきらぼうな感じになってしまう。






薄暗い通路に動く影といえば自分達の影だけで、他には何もない。


まるでお化け屋敷の様だなぁ~と場違いな感想を頭の中で浮かべてから、


横を歩いているはずの名無しの様子をちらりと確認してみる。


横を見れば確かに名無しは自分と並んで歩いている。


だが、ひとたび視線を前に戻すと、横に居るはずの名無しの気配は感じられなくなる。


名無しは忙しなく視線をちらちらと色々な場所に移しつつも、時折私に声をかけてくる。


「大丈夫か?」等の事務的なやり取りで、顔を背けていて、ぶっきらぼうな声だが、声をかけられると、


心がほっとするのである。見ず知らずの男の筈だが、どうしてだろう?


と名無しの横顔を眺めつつも、その横を歩く。




名無し 「誰か居るぞ、え?」


いきなり自分の口から出た言葉に驚いて、ポカーンと口を開けて立ち止まってしまった。


秋春 「おいてめぇ、冗談言ってるとぶち抜くぞ」


先頭を歩いていた秋春が振り向いて、銃の形にした手の人差し指をこちらにむけてきた。


指先から炎がチロチロと蛇の舌の様に出ている。


風鈴 「チュッ?笑えない冗談はやめてほしいチュ」


耳と尻尾をせわしなくピコピコと動かしながら、振り返って名無しを見た。


燐 「ん~冗談じゃないっぽいわねぇ」


燐は背負っていたはずの機関散弾銃を腰溜めで構えている。


白影も月影に矢をつがえ、弦を引いて通路の先の影に狙いを向けている。


クルシス 「短い付き合いだが名無しは冗談言う奴じゃないぞ」


ミラーズ 「確かに・・・」


クルシスとミラーズが名無しをフォローしてくれる。


名無しの横ではスイレンがいつの間にか短剣舞踏ナイフカーニバルを発動させて名無しに寄り添っていた。


名無しと目が合うと、疑問符を浮かべて首をかしげた。


スイレン 「何で私短剣舞踏ナイフカーニバルを?」


名無し 「俺に聞かれても・・・」


ウィーーーンッと機械の駆動音が、白影が狙いを定めた闇の中から聞こえてきた。


スミレ 「防御機構、あの形状は南地区のガードロボット」


淡々と敵の情報をスミレが呟いているが、名無しの頭の中には、


そのロボットの駆動音から導き出された防御機構の形状、武装、性能が表示されていた。




影からゆっくりとその機械人形が出てくる。


顔から徐々に灯りに照らされ、その機械人形の様子が判る様になる。


影から歩み出てきたのは、機械の駆動音を響かせる、執事服を着た青年であった。


??? 「問、貴方方…この……に何…に来た…ですか?」


その声は女性の声に聞こえたが、


壊れたスピーカーを使っているのか、音が所々割れていて聞き取り辛い。


影から全身が現れて、その全容を見て、皆が驚いて息を止めた。




その機械人形は両腕が肘の辺りから引き千切られていた………

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