第二十七話 調査準備
集会場にある舞台横の所に呼び出された8名と、市長代理の秘書の女性、
そして何故か蝙蝠獣人スミレが居た。
秘書 「ここに集まってもらったのは実力があるので適任だと判断されたからです。」
秘書の女性が話を切り出す。
風鈴 「チュッ？私達が実力者なのは判るよ？そこのお兄さんとお姉さんに蝙蝠獣人の子は？」
リュウの横で、耳着き帽子の耳と、腰の辺りにつけられている尻尾をひょこひょことせわしなく
動かしている少女が、名無しとスイレンとスミレを指差して質問をした。
秘書 「そこの男性は高速射撃の名無しさん、
女性は多重魔導士のスイレンさん、
この人は情報提供者である蝙蝠獣人のスミレさんです。」
秘書は淡々と説明だけをする。
秋春 「けっ、ひ弱そうな野郎じゃねぇか」
真っ赤な頭髪をした、目付きの悪い男がこちらをジロジロと見てくる。
燐 「スイレンちゃんかしら？私の好みだわぁ～」
背中に機関銃を背負ったガンマン風の衣服の女性がスイレンをうっとりと眺めている。
白影 「話が進まん」
忍者の様な格好をした鋭い目つきの男性が話を進めろと遠まわしに発言する。
秘書 「とりあえず、自己紹介は後ほどやってもらいます。
今回の緊急招集の内容について今から説明致します。
質問等御座いましたら遠慮無くお申し付けください。」
そう秘書の女性が切り出し、今回のクエストの説明を始めた。
ここに呼び出した人達は狩人、守者、観測手
の三通りの職種の者を集めた。
ミラーズと風鈴が守者、白影が観測手で、
それ以外が全員が狩人である。
ここに集めた者にやってもらう事は、
蝙蝠獣人の小規模地下都市「ブラッド」の記録調査である。
防衛線を張るに張るにあたって、襲撃を行った魔物の情報を保管した記録が、
ブラットの都市管理用機構に保存されている可能性が高い。
その記録の回収と都市内部の様子の調査が主な任務である。
今回の調査には、都市の内部を詳しく知っており、都市内部へと続く秘密の通路の
ありかを知っているスミレも同行する事になった。
そのため、スミレの守者として、ミラーズと風鈴を、
都市の調査の為に白影を、魔物討伐の為に名無し、スイレン、クルシス、燐、秋春を、
そういった具合で集められたのがここに居るメンバーである。
今回の緊急招集での異存がある者は直ちに申し上げるという事になったが、
名無し、スイレンは今の所手がかりが何も無く、何をしたら良いのかも判らないので断る理由はない。
ミラーズ、クルシスは特に何も言わなかった。
風鈴はニコニコ笑顔でチューチュー言いながらスミレに抱きついていた。
燐はそんな風鈴とスミレの様子を見ながら「異存は無いわよ？」と言い、
白影は「己も異存は無い」と燐に続いて肯定していた。
秋春だけが「めんでぇ」とぐちぐちと言っていたが、
最後は結局参加する事になった。
全員の承諾が取れた事を確認すると、秘書の女性は
「行きの移動は徒歩で行い、帰還は調査先の都市で使えそうな
輸送車や軽戦車もしくは装甲車等を探してそれで帰還してください。
薬品や弾薬、それから武装等で欲しい物があれば、取引所に申し出ておいて下さい。
出立の際にお渡し致します。では、私はこれで失礼します。」
と事務的な言葉を投げかけてから、去っていった。
その後に残された白影とスイレン、クルシスとミラーズは、
今回のクエストに必要な物を話し合い初め、
風鈴はスミレに抱きついてうっとりとした顔で「チューチュー」と鼠の鳴き声の様な声を上げながら
頬ずりを続けていて、燐がそれを恍惚とした目で見ている。
秋春は何故かこちらを物凄い眼力で睨み付けてきていた。
と、秋春がこちらに歩み寄ってきた。
秋春 「雑魚が調子に乗ってんじゃねぇぞ」
そういい残すと、秋春は去っていった。
風鈴 「おにーさん、あの人の言う事は気にしなくて良いチュー」
その様子を頬ずりしながら見ていた風鈴が声をかけてきた。
というかずっと頬擦りをされていて、スミレは鬱陶しくないのだろうか？
表情にまったく変化が無いのでその心中を察する事は難しそうだが…
名無し 「あぁ、大丈夫だが・・・嫌われているのか？」
燐 「違うわよー、妬んでるだけよー」
そこに横から燐が声をかけてきた。
燐 「あの子ねぇ、自分以外にちやほやされてる子を見るのが嫌いなのよね」
名無し 「ちやほや？」
燐 「二つ名を持ってる他の男の子を皆敵視してるのよ」
名無し 「？」
燐 「不思議そうな顔、可愛いわぁ、惚れてしまいそう」
行き成り燐がこちらにぐっと寄ってきたので、つい二、三歩下がってしまった。
燐 「やぁね、冗談よ♪冗談♪それよりも荷物の準備しなくちゃね♪」
そう言うと、燐はさっと身を引いて、怪しい笑みを浮かべていた。
その様子を見ていたスイレンは、燐という女性が名無しに近づいた時に感じた、
チクリとした胸の痛みに疑問を覚えた…
この痛みは何なんだろう？
