第二十三話 二つ名
[魔術結社]ギルドでは、基本的に地下都市の主要出入り口付近に現れる魔物の討伐や
都市内部で不足している物資の調達が基本的なクエストである。
難易度は基本的に討伐の方が高いが、物資の調達も時には最高難易度クエストになる時がある。
クエストは種類に応じて「討伐」、「調達」、「護衛」、「輸送」、「調査」の五種類にわけられる。
主に「討伐」のクエストを行う生業の者達を「狩人」と呼び、
主に「護衛」のクエストを行う生業の者達を「守者」と呼ぶ。
この様にそれぞれのクエストを主に行う者達には簡単な二つ名の様な物がつけられる。
「輸送」は「運屋」、「調査」は「観測手」、「調達」が「盗賊」である。
そして、職業に関しての二つ名以外にももう一つ別の呼び名がつけられる時がある。
クルシスの場合、その大剣で敵を叩ききる様子から「叩斬者」のクルシスと呼ばれる。
ミラーズの二つ名は「月下鋼刃」である。
名無しは相当高い実力を持っているので、二つ名があっても可笑しくないんじゃないか?
と言うことで、過去のリュウと言う名無しと同じ訓練成績を持っていた者と同じ二つ名がつけられた。
その為、現在は「高速射撃」の名無しと呼ばれている。
スイレンは「多重魔導士」のスイレンといわれているらしい。
[魔術結社]ギルドには他にも色々な二つ名を持つ人たちが居る。
ちなみに、ここのギルドで最強と言われているのが、
コールと言う名の男で、二つ名は「殲滅嵐」である。
基本的につけられた二つ名は、身体的特徴もしくは戦闘時の特徴を現したものであるのが多い。
名無しは「狩人」の「高速射撃」の名無しと言う長ったらしい名前で
ギルドのギルド員リストに登録されている。
名無しに二つ名で「狩人」とついている時点かもしれないが、
名無しは「討伐」クエストを基本的に生業としてギルドの中では既に有名人である。
練習の時点で相当な実力を発揮していて、実戦でも相当な戦績を残しているのである。
当たり前と言ういえば当たり前なのだが・・・
これだけ有名になれば名無しに関して何か知っている人が現れてもおかしくはない、
しかし、これまで全然情報が入ってこない・・・
理由は不明――ではない。
大体予測はついているのだが・・・
・予測
名無し=リュウ
スイレン=ルイ
老人が言っていたリュウとルイは名無しとスイレンの事で、
テレポートの事故によって現在に飛ばされ、
事故によって記憶を失った。
だが、この予測だと結局の所、名無しが何者なのかわからないのである。
再度老人の話を聞いてみたところ、
名無しはフラりと都市に現れ、ギルドに登録する事無く、
ギルドの手伝いをしていて、魔王討伐戦に加わったとの事であった。
すると、都市に現れる前、名無しとスイレンは何をしていたのか?と言う疑問が残る。
疑問は増えるばかりである。
今日もクエストカウンターでクエストを受けて、討伐をしている最中である。
討伐対象は「大鼠」と言う、その名の通り唯の大きな鼠の討伐である。
名無しは「Fog-10」はホルスターの中にしまいっぱなしで
通常弾丸と魔弾の高速切り替え可能な銃剣付き「Faithful-02」を右手に持って、
接近戦時の斬撃と射撃を行い、通常弾丸のみ使用する自動式拳銃の「FN ブローウィン・ハイパワー]
で眼や口を狙って射撃する。
通常弾丸の場合、 相手の皮膚を貫く事が出来ない場合があるので比較的軟い目や口を狙うのである。
後方からスイレンが「短剣舞踏」と言う
魔力の短剣を作り出し、自らの周りに浮遊させ、ガードしたり攻撃したりする魔法である。
それで自らの体を守りつつ、短剣を飛ばして攻撃したりして援護している。
普段の戦闘もこのような感じで進めている。
と言うより、二人で戦うといつの間にかこういう陣形で戦っているのである。
記憶を忘れても、行動では覚えていると言う感じだろうか?
この戦い方は安定していて戦いやすい。
名無しは背後からの攻撃は気にしなくて良い、スイレンが援護してくれるのが判るから、
スイレンは接近してくる敵は気にしなくて良い、名無しが射撃してくれるのが判るから。
互いが互いを無意識のうちに庇いあって、それで居て全然危なっかしくないのである。
過去にこの戦闘方法で長期間戦闘を繰り返していたのはわかる。
その為、記憶探しは基本的にスイレンと共に行う様にしてる。