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第十九話 蝙蝠獣人《フルークフーデ》

医療施設―と言うか医療施設の集まった医療区画に到着はしたのだが、 道中の記憶が曖昧なのだ。


クルシスとミラーズの後を、スイレンと並んで歩いていて、


二、三言スイレンと言葉を交わしたはずなのだが、


その内容が全く思い出せないし、なんて返答したかも思い出せないのである。


そして、なぜかスイレンは少し俯き気味で、落ち込んでいる。


準備をしていた住居区画から出発した時は、普通だったので、


落ち込んでいる原因は明らかに道中の自分との会話の筈なのだが、


なぜか会話の内容をまったく思い出せないのである。


そんな事をグダグダと考えながらクルシスとミラーズの後を着いて行く。


カウンターで保護した少女が与えられた病室の場所を教えてもらい、そこに向かう。



医療施設と言うだけあって、中は清潔に保たれていて、


真っ白で薬品の匂いが漂っている――そんな場所の一室の扉の前・・・


クルシスがネームプレートの部分を確認して扉の前に立ち、扉をノックする。


???    「はい?」


中から少女の返答――名は確かスミレ――である。


クルシス   「入るぞ」


???    「どうぞ」


中から聞こえてくる少女の声は何故か淡々としている。 扉を開けて中に入る。


何処の病室も作りは同じなので、


名無しがこの都市で目覚めて最初に見た病室とまったく同じ内装であった。


少女は部屋におかれたベッドの上で体を起こしてこちらを見ていた。


???    「貴方は誰?」


淡々とした言葉で、クルシスを指差して聞いてくる。


クルシス   「おう・・・?俺はクルシスだ・・・が?」


戸惑い気味にクルシスが返答する。


???    「貴方は?」


今度はミラーズを指差して質問してきた。


ミラーズ   「私はミラーズよ」


慌ても戸惑いもせずにミラーズが返答する。


???    「貴方は?」


今度はスイレンを指差して質問をしてきた、人を指差すのは癖の様な物なのだろうか?


スイレン   「えとっ・・・スイレンです」


クルシスと同様に戸惑い気味にスイレンが返答をする。


???    「貴方は・・・助けてくれた、恩人、名前は知らない」


最後に名無しを指差して――その時になって気がついた――少女の瞳は機能していない。


名無し    「えと・・・名無しだ、それよりも・・・眼は――


スミレ    「私はスミレ、今は視力が無い」


こちらの言葉を遮って少女が自己紹介をした・・・ スミレの台詞に違和感を感じた・・・


今は視力が無い…と言う事は過去には視力があったのだろう・・・


視力を失ったのは切裂蜘蛛スラッシュスパイダーとの


戦闘時であろう…確か、顔に対しては攻撃を喰らっていない筈であるが・・・


普通の人間なら一番の情報源の視力を失ったら慌てるなりなんなりするはずである。


それなのに慌てていない・・・それに見えていない筈なのにこちらの人数と立ち位置を把握してい

る・・・


ミラーズ   「視力が無いってどういうこと?」


スミレ    「それよりも、シーライは命を落としましたか?」


スミレは質問に答えずに逆に質問をしてきた。


クルシス   「シーライ?」


名無し    「一緒に居た奴か?」


スミレ    「はい、私と一緒に居た男です、十中八九命を落としてますよね?」


あの戦闘の時に守りきれなかった少年の名が出されて、名無しは少し俯いてしまう。


名無し    「すまん・・・」


スミレ    「何故謝罪するのですか?貴方は命の恩人なのですよ?」


スミレは不思議そうにこちらを向いて首を傾げている。


名無し    「いや、守りきれなくて」


スミレ    「別に良いのです、あの人はあの時命を落とさなくてもいずれは命を落としたので」


クルシス   「どういうことだ?」


スミレ    「あの人は私と契約コンタクトを結んでいたのです」


ミラーズ   「契約コンタクト?とりあえず、視力が無いって言うのも含めて説明してくれない?」


スミレ    「良いですよ、少し長くなりますが」


そう言うとスミレは自分の種族と特性に関してと、


あの少年との関係に関してを話し始めた。



第一に少女に関して


蝙蝠獣人フルークフーデであり、年齢は普通の人間に換算すると11歳らしい。


蝙蝠獣人フルークフーデの特徴は背に生えた皮膜の張った蝙蝠のような翼と、


特殊な器官を使用した音波による位置や空間情報の把握である。


視力が無いというのは少女自身の生まれつきの病気で、蝙蝠獣人フルークフーデとは無関係らしい、


病室に入ってきた人の人数を把握できた理由と、大体の位置を把握できた理由はそれらしい。



少女は蝙蝠獣人の中では相当な地位を築いている血筋の物らしい事、


少年は少女の付き人である事、そして契約コンタクトを結んでいた相手らしい。

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