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第十五話 重症、死亡

バァンッバァンッとリボルバーの銃声、その銃声のすぐ後に着弾後の火炎弾ファイアバレッド


小規模爆発を起こす音と、蜘蛛の足を刻む短剣の音と、


パァンッパァンッと定期的に聞こえる 援護射撃の音。


敵は確実に頭数を減らしている。


蜘蛛は本能に従っているのか、少女を真っ先に狙おうとするのだが、


それを少年が短剣を使って切り刻んだりして少女を守っている。


少女は少年が討ち漏らした蜘蛛を片っ端から狙撃している。


名無しはそこから少し離れた場所で複数の蜘蛛を相手にして戦っている。


自分の足元に撃ち込む弾丸は空気砲エアーショット、体を吹き飛ばして敵との距離をとる、


とはいえどの方向に距離をとろうにも敵に囲まれている為、必然的に


回避先は空中となる、そこから敵に対して火炎弾ファイアバレッドを連続発射し、


小規模爆破、炎上を繰り返している。


重力に引かれて自らの体が地面に落ち始める。


その瞬間にリボルバーに装填された弾丸を変化させ、火炎弾ファイアバレッドから


空気砲エアーショットにし、着地の準備をす――


名無し  「あれ?」


とそこで不意に違和感を覚える、というより今までの一連の動作に違和感を覚えた。


自分はチームから無断で離れ、少年と少女を助けようとしている、


チームメンバーと一緒に行ったら間に合わなかったかもしれないが、


自分一人で飛び出してきた時は緊張していたはずだ、


それなのに今の自分は的確に戦場の状況を把握して、


少年と少女の戦闘能力を測って的確な指示を出して、


自分自身は敵に臆する事もなく平然と戦っている今の現状に違和感を覚えたのだ。


流石にこれはおかしい・・・と、少しだ――


――少しだけ戦闘に対しての集中が解けた――


パァンッ・・・ブスリッ・・・


少女   「うぐぅっ・・・」


少年   「スミレ!」


と少女の苦しげな声と少年の焦った声が聞こえた・・・


咄嗟に少年と少女の居る場所を確認すると、少女が蜘蛛によって攻撃されていた。


少女の腹の辺り・・・そこに蜘蛛の鋭く尖った鎌の様な前足が突き刺さり貫通していた・・・


突き刺している側の蜘蛛は既に力尽きていたのかゆっくりと音を立てて倒れる、


その時に少女に突き刺さっていた前足がズブリッと音を立てぬけた。


少女は左腕で穴の開いた腹の辺りを押さえ、右手で硝煙の立ち上がる長銃を握っていた。


少女   「ごふっ・・・けはぁっ・・・」


体をくの字に折り曲げ、口から血と胃液と何かの混じったものを吐き、


そのまま地面に倒れた・・・最後まで銃を握り締めていて、その銃で近付こうとしている


蜘蛛に狙いをつけようとしていた・・・


少年が必死になって少女の元に近付こうとするが、他の蜘蛛がそれを妨害している。


名無し  「しまっ!?」


咄嗟にエアーショットの着弾地点を少しずらし、自分の体が真上ではなく、


少年と少女の居る方面に吹き飛ぶように計算して射撃。


予測通り自らの体は少し離れていた少女の付近に吹き飛ばされる。


リボルバーの中の弾丸を変化させ、火炎弾ファイアバレッドにして、


周りから少女を狙い近付こうとしていた蜘蛛を片っ端から焼き払う。


それをしつつ、傍らに倒れている少女の状態を確認する・・・


状態は簡単に言うと間に合わない・・・


専門的な道具や治癒能力に特化した医者などが居れば余裕なレベルだが


生憎と名無しは治癒能力に特化した医者ではないらしい・・・


頭の中に浮かぶのは簡易な応急処置ばかり・・・


それに医者であったとしても今この場で出来る訳がない。あたりにはまだ相当数の敵が居る。


敵を全て撃破する前に、この少女は力尽きるか間に合わない状態になるだろう・・・


辺りの敵を倒しながらそんな事を考える・・・助けるつもりが・・・助けられなくなってしまった・・・


そんな風にまた考え事をしてしまった瞬間に、


ジャァキンッと、背筋を凍らせるような、鳥肌が立つ様な不快音が響く、


音の方向を咄嗟に向く。


そこには少年がこちらに背を向けて立っていた。


少年の前には血塗れの大鎌を振り切った体勢で力尽きている蜘蛛が居た。


大型犬程の大きさの蜘蛛が倒れる。そして、その少年の頭が――


――ズルリッと音を立ててズレていく――


名無し  「っ!?」


ボトリッと少年の頭が地面に落ちて転がり、その目がこちらを見た。


その瞳は何も映していなかった・・・


そして一瞬遅れて少年の残った体から血が一瞬だけ噴水の様に吹き上がった。


だが、その勢いも一瞬で消え、体が倒れる。


その間に、他の蜘蛛はこちらに対して攻撃してこなかった。


死した少年の体を貪ろうとすべての蜘蛛がその骸へと群がっていく・・・

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