安らぐ場所
他人行儀な、とよく言われるけど、俺の場合、人とは他人行儀な距離を取っている。
だって、親しくなったら嫌われるから。
俺は自分が嫌い。
だから、自分の領域内に人を入れると、距離感がゼロになって、本当の俺を見せてしまう。醜い俺。
「こんな人だなんて、思わなかった」
そう言われたくなくて、他人行儀な距離をとって、笑顔を振りまいて人に接する。いい人を演じる。
「なんで、そんな他人行儀なの?」
また言われた。
他人行儀にしているんだよ。
だって、俺の領域にあなたを入れたら、きっとあなたは俺を嫌う。
「ほら、いこう」
距離を取っているのに、あなたは俺に近づいてく。
だから俺はあなたから離れる。
「ウィルソン、クローディア様に近づくなよな」
俺は距離をとっているのに、勘違いした男子生徒から文句を言われる。
彼は高位の貴族。取り巻きもいて、両隣には他の男子生徒を連れている。
「申し訳ありません。今後は気をつけます」
彼女に伝えなければ。
俺に近づかないでくれって。
「わかればいいんだよ」
反抗することなく、顔を伏せて答えれば、彼は満足したようで背を向けていなくなってくれた。
「ウィルソン。大丈夫だった?」
彼がいなくなったら近づいてきたのは、俺の友達のルイス。
友達だったら、傍で一緒に何か言ってくれるはずなんだけど、彼は違う。
だから友達じゃない。
でもいいんだ。
これくらいの距離で俺は十分。
「ありがとう。大丈夫だ」
俺は笑顔を浮かべる。
友達への他人行儀な笑顔を。
本当は俺の領域に入ってきてほしい。
だけど、きっと本当の自分を知ったら嫌われる。
だから、近づいてきたら、離れるしかない。
「近づかないでくれ」
「どうして?」
離れても離れても、彼女は近づいてくる。
本当の自分が知られて、嫌われるのが怖くなる。
「ほら、大丈夫でしょう」
「え、うん」
いつの間にか彼女は、俺の領域にいて隣に立っていてくれた。
本当の自分を見せても嫌わない。
無理に自分を取り繕わなくても、彼女は俺を受け入れてくれた。
俺はやっと安らぐ場所を手に入れた。




