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AI少女とゲームクリエイターの世界創造日記 〜AI少女を愛した開発者はアタシです〜  作者: せーぶうわがき


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9/11

第9話『……はい、マスター♡』

『…………?』



「……(コクリ)」



 メイド服美女エンプと凪の視線?が交わる。

 それは長年戦場を駆け抜けた友のような、完璧なアイコンタクト。


 (へき)が一致した瞬間、()()()()が勝手に結ばれるのも自然の摂理であった。



『……はい、マスター♡』



『ヒッ――』



「じゃ、アタシもテイスティングと洒落(しゃれ)込みますかね」



『ヒィィ――』



 二人の前に、セレスの抵抗はむなしく散っていった。



 ――10分後――



『凪さん、エンプ。わかりますか?』

『お仕事なんですよ』

『遊びを作ってますが、遊びじゃないんですよ』



 ――さすがに怒られた。



『だいたいエンプ!』

『あなたはなんで毎回、私の匂いを嗅ぐんですか!』



『…………?』

『……設定』



『あー、ハイハイ! そうでしたね!』

『目隠ししているから、()()()()()()()してるんでしたね!』

『――って、バカァ!』



 執拗(しつよう)なまでにセレスの首筋を嗅いでいた、デザイナーAI:エンプの秘密――もとい、設定が明かされる。



「ナン……ダト。その手が――」


「セレス。今まで隠していたが……実はアタシもなんだ」



『――おい』



「ア、イエ、ダイジョウブデス」



 ゴミを見る目――流石の凪と言えど、美少女からのその視線には逆らえなかった。



『はぁ……反省しているようなので、今回は特別に許します』

『では、凪さん。話を進めてください』



 正座している凪に、セレスは指をピッとエンプに移動させ、仕事の依頼を促す。



「そうだった……楽しくてつい、本題を忘れてた」


「エンプ。お前には、新イベントボスのデザインをしてほしい」



『企画書……見た』

『どんな……イメージ?』



「えっと、武器は――」



 エンプは()()()()()()()()()、そっと制した。



『……読み取る』



「え、ちょ、ラッキースケ――」



 エンプの顔が、ゆっくりと凪の顔に近づいていく――。

 凪がキュッと目を閉じると、(ひたい)にひんやりとした肌が当たった。



「んっ…………デコかぁ~」

「……えっと、セレス。これ何してんの?」



『…………凪さんの思考にリンクして、イメージ情報をダウンロードしているのでしょう』



 口数の少ないエンプの代わりに、セレスが()()()で解説する。



『…………終わった』



 エンプがパチンと指をはじくと、ウィンドウが表示される。


――――――――――――――――――

[ SYSTEM: IMAGE DOWNLOAD ] .......... DONE


> ACCESS POINT:NAGI_BRAIN_CORE


- 外見:セレス

- 服装:赤と黒が混じったドレス

- 武器:大きなハンマー

- 備考:厨二臭がやや強め、魔王風

――――――――――――――――――


『……描いていい?』



「え、すご……うんうん! 描いて描いて!」



『50パターンで……いい?』



「50……!? う、うん。OK」

「えっと、どんくらいでできるんだ?」



『…………8分?』



「う、嘘だろ……」

「ちょっと待ってるから頼む!」



『……はい、マスター♡』



 2150年の電脳世界の技術に、ダウナー系の凪が珍しく興奮している。


 そんな凪を見てか、口数の少ないエンプの背中からも()()()(かも)し出されていた。



『…………では、私は戻っていますね』



「セレス。ここにいな」



 トボトボと身を引こうとするセレスの腕をつかんで、凪は静かに引き留めた。



「クリエイターの仕事を見るのも、プロジェクトマネージャーの仕事だよ」



『プロジェクトマネージャー……?』



「そう。PMな」

「セレス。お前の仕事は開発費、開発スケジュール、クリエイターの管理」

「ゲーム開発の現場において、重要な役割のひとつだ」


「アタシは、企画、仕様検討、クオリティチェック、プロモーション戦略検討」

「ディレクターの仕事だな」


「ディレクターとプロジェクトマネージャーは、一蓮托生(いちれんたくしょう)


「プロジェクトマネージャーが、しっかり管理してくれるから、ディレクターはゲーム開発に集中できるんだ」


「セレス。頼りにしてるよ」

「ずっと、()()()()()()()()



 凪の最後の一言には、なんとも言えない哀愁(あいしゅう)が漂っていた。

 その哀愁の真意を、セレスはまだ知らない――。



『……ずるいです』



 ――8分後――



『……できた』

『イメージ……近いの……ある?』



 50枚のイラストが、宙に浮いて表示されている。



「すっご……ホントに8分で」


「うーん、これと……これと……最後にこれ!」

「この3点がイメージ近いかな」



 凪は30秒もかからず、50枚の中から3枚をピックアップする。



「で、服装はこれ」

「武器がこのデザインでぇ……うーん、あと2倍大きく」


「あ、胸は小さく」

「ぺったんこ」

「見て、本物を」



『は?』



 セレスは聞き捨てならないセリフに、眉をピクつかせながら胸を張る。



『…………?』

『凪……セレス……意外とある』

『……着やせ』



『ちょっと、エンプ!?』



「エンプ……もっと詳しく」



『……はい、マスター♡』



 凪とエンプは、セレスの胸を真剣なまなざしで見つめながら、"おっぱい談義" を始める。



『もう! 二人して私の胸を凝視しないでくださいっ!』

『ぺったん……小さくていいですからっ!』



 セレスは小さなプライドを残しつつ、二人に最大限の譲歩をした。



 ***



『……どう?』


挿絵(By みてみん)


 エンプは10秒もかからずに、調整バージョンを提示してきた。



「うん!」

「うんうん!」

「アタシの頭の中にあった()()()()()()()()()!」


「これで開発項目② "新しいイベントボス" のビジュアル完成だな!」


「名付けて、 "断罪領域(だんざいりょういき)の支配者セレス" ってとこかなぁ」


「技名は――クリムゾンブレイク……ジャッジメントエリア」

「ふむ……支配者セレスのバトル設計は……ぶつぶつ」



 新ボスの出来の良さに、凪は自分の世界にどんどん入っていく。



『……凪さん?』



「んっ……あぁ、ごめん」

「エンプ、このビジュアルを元に3D化して、完成したらヌルちゃんに送ってくれる?」



『……はい、マスター♡』



「エンプ、素敵なデザインをありがと」

「じゃ、またな」



 凪は生き生きとした顔で、エンプに別れを告げ、ドアに向かって歩いていく。



『――――はい、マスター』

『また……きて』

『セレスも……』



『はい! エンプ、また来ますね!』



 エンプの表情は変わらない。

 しかし、どこか寂しそうな雰囲気を漂わせながら、凪とセレスを見送った。



 ***



「よし、セレス」

「今日はこのまま "支配者セレス" のバトル設計を考えるよ」


()()()()()()()()から、ドア出してくれる?」



『――え』



 当然、ドアを出してくれると考えていた凪は、セレスの戸惑いに記憶をさかのぼる。



「(あ……昼間に約束した()()()()かぁ)」


「甘えんぼセレスちゃん。終わったら連絡するから」

「昼間の続きは、その後で、なっ」



『は、はぁ!? 違いますがっ!?』

『もう、早く仕事してください!』


『…………ふん!』



 セレスはパチンと指をはじき、凪の部屋のドアを出現させる。


 凪はニヤけ顔のまま、自分の部屋に入っていった。



 ***



『ふむ……大型アプデ開発は順調なようじゃの』

『流石は、七海なみの姉と言ったところじゃな』




『――――』

『――じゃが、時間はもうさほど残されておらんか』




七海(なみ)……約束は守るからの』



 暗い部屋に一人、()()()()()()()()()()()()()がつぶやく。

 ()()()()()()()()()を見つめながら――。



―第10話につづく―

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