第42話『嫌です嫌です~! お仕事、嫌です~!』
「よしよし……いい子、いい子」
「とーんとん……とーんとん」
「ふふ」
「おねえちゃん、かわいい」
「おねえちゃんにもこんな時期があったんだなぁ」
「すぅ……むぬゅ」
小さな凪は、七海の胸で眠りに落ちていた。
七海はそっと涙を拭い、瞳を遠い虚空に向ける。
――セレスには分かった。あの視線の先にあるものは、この世界の外だと。
「……ん?」
「セレスちゃん、私の顔に何かついてる?」
『あ、いえ』
『その……お気になさらず』
「あー、わかった~。にしし」
「セレスちゃん」
「こっちにおーいでっ」
七海は、指をパチンをはじくと、凪の身体はふわりとベッドへと転送された。
続けて膝をポンポンと叩き、柔らかな笑みの奥に、からかうような色をにじませてセレスを招く。
『ち……違いますし』
『その、私ももういい歳ですし』
「あはは、セレスちゃんの誕生日は2031年4月1日。119歳になったかぁ」
「うーん……まだまだ甘えていい年頃だよ?」
「セレスちゃんの綺麗な髪、よしよしさせてほしいなぁ」
『い、いいんですか?』
「もちろん」
「甘えれる時に甘えようね♪」
『――で、では』
『お邪魔します』
「セレスちゃんおかしい。あはは。お邪魔しますだって」
『もう! ママのいじわる』
「ごめんごめん♪」
「よ~し、よ~し」
「セレスちゃん。よく、今まで頑張ったねぇ」
「ママ、ずっと見てたよ」
『……』
『はい』
『がんばりました』
『ので!』
『もっと……その、褒めてください』
真っ赤になった耳を隠すように、セレスは七海の膝へ顔を埋め、震える声で甘えを訴えた。
――パチン。
指をはじく音が聞こえると同時に、セレスの目の前にウィンドウが表示されていた。
『ま、ママ?』
『あの~……これは』
「ふふ」
「"効率化"ってやつで~す♪」
「セレスちゃんを甘やかしながら、現状の問題点とNEXTアクションを整理しようとおもいまーす」
『はぅ!』
『どこまで行っても、第五世代AIの生みの親!』
『効率の鬼! 効率厨!』
『嫌です嫌です~! お仕事、嫌です~!』
「あはは!」
「もう、おねえちゃんみたいなこと言うなぁ」
「はい、ダメでーす♪」
「おしごと、しゅるしゅるしようねぇ♪」
七海の声は柔らかく響くのに、その笑顔に射抜かれた瞬間、セレスは小さく震えるしかなかった。
『あぅ……はい』
『(凪さんの気持ちが、初めて分かったような気がする)』
「はい、いい子ですね~♪」
「じゃあ、まずは "現状の問題点" から!」
――――――――――――――――
【現状の問題点】
①特設ワールドへの"新作大型タイトルの開発"
②開発期間は1年(2151年4月1日リリース想定)
※現在は2150年4月1日
③No.1で勝利すること
※相手=ワールド:中国、ワールド:アメリカ
【勝利条件】
・集客、売上で1位を取る
【勝利報酬】
・特設ワールドの自治権
→マキナちゃんを管理AIへ
――――――――――――――――
『…… "デア・エクス・マキナ" を管理AIへ、ですか』
「うん」
「セレスちゃん」
「もう推測できてると思うけど、この身体は "マキナちゃんの身体"」
「セレスちゃんが襲われたのは、私をセレスちゃんから移すため」
「この身体に入れておいた方が、管理しやすいからね」
「あと、マキナちゃんは生きてる」
「だから、取り返すの」
『なるほど』
『――よかった、です』
『あの……私を襲ったのは一体誰だったんですか?』
「まぁ、気になるよねー」
「……」
「彼女の名前は、禍津 黄泉」
「この電脳空間の管理組織 "Neural Overload Virtualization Agency" =NOVAのメンバーだよ」
「私を電脳化して、この世界に拘束した張本人」
『……え?』
『は?』
――さらっとすごいことを聞いた気がする。
ママを電脳化? 拘束した?
つまり、そいつがいなければママと離れ離れになることもなかったし、ママと凪さんもずっと一緒に居れたってこと?
敵。
許せない。
許せない。許せない。許せない。許さない。許さない。許さない。
「あはは、セレスちゃん」
「顔が怖いよ~?」
「見誤っちゃダメ」
「目の前のやるべきことを、1個ずつやるの」
「今、大事なことは……新作ゲームを作ること! 勝つこと! マキナちゃんを救うこと!」
「分かったかな?」
「……ふふ、お返事できるいい子はどこかなぁ?」
『――』
『絶対に許しませんが…………分かりました』
「ありがと。怒ってくれて」
「よしよし♪」
***
「それじゃあ、次は "NEXTアクション" !」
怒っているセレスをなだめようとしているのか、七海はどこからかホワイトボードを持ってきていた。
ホワイトボードなのに、手書きではなく指をはじいて文字を記載している。
『あの……ママ、ホワイトボード要りますか?』
「ふふふ、セレスちゃんは分かってないなぁ」
「なんでも形から! 形から入ることが重要なんだよ」
「この私の白衣だってそうだよ☆」
「仕事モードに気持ちを切り替えるには、白衣!」
「白衣こそ、最強の戦闘服!」
「どやぁ」
「かっこいいでしょ~!」
七海はビシッと斜めに腕を伸ばし、ポーズをとる。
きっと本人の中でかっこいいポーズなのだろう。
セレスは、七海が話の脱線癖があることを今になって思い出した。
『えと……かっこいいですー!』
『で、ママ』
『NEXTアクション! 次は何をやるんですか?』
「え?」
「白衣がいかに至高なのかをインプットしてもらおうとしたのに!?」
「ここからだよ!? え!?」
『はい♪』
『要りませんっ!』
セレスの強烈な一言。
七海に精神的大打撃。
七海は、シュンとして伏し目がちにホワイトボードを指した。
――――――――――――――――
【NEXTアクション】
①プロデューサー&ディレクター決め
→管理AI:セレス(兼任)
②プロジェクトマネージャー決め
→七海
③エグゼクティブアドバイザー
→小凪
④新作ゲームのコンセプト決め
→重要!これから!
――――――――――――――――
『……小凪?』
「あぁ、そこで寝てる小さい方のおねえちゃんのことだよ」
「セレスちゃんも、"小凪ちゃん" って呼んでね」
「セレスちゃん、ずっと "凪さん" って呼んでて分かりづらいし」
『は、はぁ』
『それで、エグゼクティブアドバイザーというのは……』
「ふっふっふ」
「解説しよう!」
「おねえちゃんのゲーム好きは、何を隠そう私たちのママの影響なのです!」
「ママは実は、元々有名なゲームプロデューサーだったの」
「おねえちゃんが生まれた時に、辞めたみたいでね」
「まさに英才教育というやつだね!」
「何が面白いのか、という目線でアドバイザーを担当してもらいます♪」
「そして、そんな小凪ちゃんにボコボコにされるのは~……どぅるるるるぅぅぅ」
「でん!」
「ディレクターも担当するセレスちゃんでーす!」
「ぱちぱちぱち♪」
『はっ……そうです!』
『なぜ私が、ディレクターなんですか!?』
「…………ん?」
『そんな、"何を言ってるのか分からなーい" みたいな顔しないでください!』
「えー、だって、おねえちゃんいないし」
「直におねえちゃんに、ゲーム作り教わってたのセレスちゃんしかいないじゃん」
「それに、おねえちゃんが戻ってきた時にいっぱい褒めてもらえるかもよ?」
『……凪さんが戻ってきた時』
「……あ」
『ママ』
『凪さんは、本当に戻ってくるのでしょうか』
『どこに行ってしまったんでしょうか』
「――」
七海は、視線を落とし一瞬考え込む。
そして、意を決し口を開いた。
「うーん……わかんない、かなぁ」
「でも、おねえちゃんはセレスちゃんになんて言ってた?」
『……』
『"何度だって這い上がってくる。二言はない" ……と』
「そうだよね」
「おねえちゃんが二言はないって言ったら、二言はないの」
「絶対叶えてくれるの」
『――はい』
「信じられない?」
『いえ、信じます』
「うん、そうだよね」
「キスまでしてたもんね♪」
セレスは、目をぎょっとさせた。
思ってもみなかった一言。
七海の表情は――笑顔。
笑ってるけど、笑っていない笑顔。
――恐怖。
『あの……なんで知って』
「ん?」
「セレスちゃんの中に居たんだもん」
「見てたよ♪」
『あの……えと……そのぉ』
「何回も何回もしてたねっ♪」
「舌まd――」
『あぁぁぁぁぁ!!』
『分かりました!』
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!』
『……やりますから』
『ディレクターやりますから』
「ん?」
「あぁ……嫌ならいい、よ?」
『いえ! やりたいんです!』
『すっごいディレクターやりたいです!』
「うん! そっか!」
「やりたいかぁ♪」
「それじゃあ、これからよろしくね!」
「プロデューサー兼ディレクターのセレスちゃん♪」
「さっ!」
「次はゲームコンセプト決めだぞぉぉ?」
『――は、はひぃっ』
――あの姉にして、この妹。
セレスはこの姉妹には、絶対に勝てないことを理解られた。
―第43話につづく―
どうも!せーぶうわがきです!
さぁ!ついにゲーム作り本格始動です!
ん?本題に入るまでが長い?
語りたかった(´・ω・`)
――凪とセレスのキスシーンを、中で見ていた七海の気持ちを語りたかった(´・ω・`)
常に優しいふんわりとした子だと思いましたか?
答えは否!!!ふんわりはしていますがふんわりはしていません。
こんな七海さんをどうか!どうかよろしくお願いします!
そして、ちょっとだけ補足をば。
禍津 黄泉の所属が、今回で明かされました。
Neural Overload Virtualization Agency =NOVAですね。
この電脳世界を直接管理しているのが、この機関です。
第21話でセレスが暴走したときに出てきた名前です。
第41話で黄泉ちゃんが言っていた、世界秩序 維持機関 "New World Order"=NWOは上記機関の上位組織になります。
補足は以上となりますー!雑っ!
それでは、第43話でお会いしましょう(∩´∀`)∩




