第3話『もう、怒ってない……?』
『……えっ』
セレスは胸に手を持っていき、こわごわと凪に視線を向けた。
目に光が宿っていない――。
「ゲーム開発なめてんのって聞いてるんだが?」
『……て……ないです』
「え? なんて?」
消えるような小さな声で話すセレスに、凪はぐいっと耳を持っていく。
近い――。
セレスの吐息が、凪の耳をくすぐる。
『んっ……はぁはぁ……その』
『なめて……ない、です』
『本気……です』
セレスは、やっとの想いで声を絞り出した。
声は小さいが、本気であることは伝わってくる芯のある声だ。
「――――わかった」
『…………』
セレスは処刑宣告される前の囚人のように、下を向いている。
「おっと……悪かった」
「つい仕事モードに入ってしまっただけだ」
「アタシの悪い癖だな――」
「だから、そんな身構えないでくれ」
凪はセレスの顎に手をやり、やさしく顔を引き上げた。
『もう、怒ってない……?』
「(なんだ……この可愛い生き物。いやAIか)」
「怒ってない、よ」
「……ちょっと休憩して、話そうか」
セレスが落ち着くまででもあるが、突然の "可愛い" に凪にも時間が必要だった。
『……それでは、コーヒーを淹れてきます』
セレスはパチンと指を鳴らすと、ドアが出現し、とぼとぼと入っていった。
「(後ろ姿……怒られたネコ、みたいだったなぁ)」
―15分後―
『凪さん、お待たせしました』
無表情のセレスが、コーヒートレイを片手に戻ってきた。
セレスは残った片手でパチンと指を鳴らす。
『コマンド。デバッグモード起動』
『ハウジングモード』
『庭具リストをオープン』
『"洋風なガゼボ" "貴族カフェテーブルセット" を設置』
『どうぞ、お座りください』
セレスに促されるまま、突如出現したオシャレな席に身を沈める。
ふくよかに熟れたコーヒーの香りが、凪の鼻孔をくすぐった。
「すごいな……思わず、お嬢様口調になりそうだ」
『…… "ホシ娘" で特にこだわったコンテンツなので』
セレスの発言に対し "ふむ" と反応した凪は、コーヒーカップに口を付ける。
「――!」
「うまい……まろやかで、苦みの後に甘い余韻が残る」
一瞬複雑な顔をした凪は、目を閉じて余韻を噛みしめている。
「というか、電脳空間でここまで複雑な味覚を感じられるもんなんだな」
『……2150年の電脳世界ですよ?』
『……あと、焙煎後、熟成2日目の豆です』
まださっきのことを引きずっているのだろうか。
セレスは、遠慮がちに口にした。
「(ブレないな……こいつ)」
***
「……ふぅ」
凪の小さなひと息が、 "休憩はここまで" を告げる。
コーヒーカップを置くと、凪の目がキリッと変わった。
「さて。本題に入ろうか」
「まずは、現状の確認から」
「この "ワールド:日本" の人気ゲームは "ホシ娘" でいいんだよな?」
『はい』
『現在、約90%のプレイヤーが "ホシ娘" をプレイしています』
「……90%か」
「じゃあ、 "ホシ娘" からってのは共通認識だな」
「アタシに遊ばせた理由は分かった」
「――次は、"ホシ娘" のゲームコンセプトを言ってみてくれ」
セレスはパチンと指を鳴らすと、ゲーム企画概要書をウィンドウに表示する。
『"ホシ娘" 名前の通り、星を擬人化した女の子を育成するゲームです』
「ふむ。そうだな」
「"ホシ娘" を育成した後、プレイヤーは何をするんだ?」
目を閉じながら、凪は "どうぞ" とジェスチャーする。
『……今は、育成したホシ娘とお茶やお話をして遊びます』
『最近、ハウジングモードもリリースして、プレイヤーは自分の好きな空間を作ることができるようになりました』
「――そこだよ。問題は」
凪は静かに答える。
『え……問題?』
『さっき、凪さんだって "すごいな" って言っていたじゃないですか』
『……ハウジングモード』
『プレイヤーの皆さんもリリースした6ヵ月前は喜んでくれていましたよ』
「あぁ、すごかった」
「庭具のデザインも凝っていて、まさにアニメや漫画の中にいる気分になった」
「そして、こうやって目の前に可愛い女の子もいる」
「びっくりするし、満足だろう」
「――最初はな」
「はっきり言うぞ」
「問題は、ゲームサイクルが終わっているところだよ」
―第4話につづく―
どうも!せーぶうわがきです!
第三話にお越しいただきありがとうございます!
投稿時間ですが、ずっと考えていましたがお仕事が終わった後になりますので
毎日20時~21時を目指して投稿していきたいと思います!
小説家になろうは、まだあまり慣れておらずミスやまごつくところがあるかと思いますが、皆さん引き続きよろしくお願いいたします(●´ω`●)
次回!新キャラ登場です!
物語はこれから加速してまいります。




