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AI少女とゲームクリエイターの世界創造日記 〜AI少女を愛した開発者はアタシです〜  作者: せーぶうわがき
第1部

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27/43

第27話『死んじゃうんです、死んじゃうんです、死んじゃうんです!』

────────────────────

【現在:2150年3月17日 MAU】

8,550,335人


【1,000万人未達成の場合:ワールド消滅】

※期限:2150年3月31日まで(2/14改定)

あと1,449,665人

────────────────────

※MAU=ひと月に1回以上、"ワールド:日本" に訪れるプレイヤー数



「あと150万人か……順調だな」


「……んっ…………ふぅ」



「"せれちゅたん" イベントリリースから7日――MAUの爆発的な増加はこの辺りで終わりかな」


「まぁ、残り14日」

「このままいけば余裕で、1,000万人突破ってとこか」


「……んっ…………すぅー……美味(うまい)い」



 洋風の家に併設された木造のテラス。

 凪は、夜の静けさに髪をなびかせながら、おちょこをゆっくりと口元へ運ぶ。


 透き通るような辛口の一滴を舌で遊びながら、凪の思考はMAUの曲線を静かになぞっていた。



「それにしても、まさかゲーム内で、家を再現できるとはなぁ……」


「"ホシ娘" のハウジングモード――確かここに来たばっかの時、セレスを泣かせたっけな」

「ふふ」


「んっ……ぷは」



 湧き上がる感情を、一口の酒とともに喉へと流し込む。



 ――凪の思考は静かに、未来へと歩を進める。


 無数に枝分(えだわ)かれする可能性の中から、()()()()()()が、静かに輪郭を帯びはじめていた。



「――」

七海(なみ)……おねえちゃんが守ってやるからな」



『うん♪』

『おねえちゃん、だーい好き』


『ちゅっ、ちゅっ♡』



 ふんわりとした綿あめのような声――頬に触れる柔らかな唇。


 ()()()()()()()がそこにあったが、凪は目を閉じたまま、酒をもう一口(あお)った。



「ふふ」

「いらっしゃい、()()()()()()



『なーんじゃ、つまらん』

『せっかく "褒美" をくれてやったと言うのに』


『声質、容姿、全て七海(なみ)と一緒なんじゃがのぉ』



「あはは」

「マキナちゃん向けに分かりやすく言うなら…… "魂の匂い" ってやつかなっ」



『カカッ!』

『さっぱり分らんわい』


『よっこらせー、じゃ』



 "デア・エクス・マキナ" は、凪の膝の上にドカッと座る。

 自身の金色の髪をいじりながら、愉快そうに尋ねた。



『カカカ』

『なんじゃ、"コーヒーの木" まで再現しておるとは』


「あ、そっか!」

「マキナちゃん、七海の記憶データも移植されてるんだったな」



『まぁ、ワシが生まれた時点――15歳までの記憶、じゃがの』

『確か、コーヒーの木は……七海(なみ)母君(ははぎみ)の趣味じゃったな』



「そそ!」

「父さんが研究にこもりっぱなしで、母さんがいじけて始めた趣味だな」


「父さんと母さんが死んでからも、七海なみが一生懸命育ててたっけ」


「夏休みの自由研究で、土の配合を発表し始めた時はクラス中が引いてたが」

「あはは」


「あいつ母さんにベッタリだったから……思い出しながら育ててたんだろうよ」



『カカカ!』

()()()()()()()ことがあるんじゃのぉ』


『どうやらお主は、父君ちちぎみと似ておるようじゃ』



「えっ! 違うの!?」



 凪は、膝の上にいる "デア・エクス・マキナ" をくるっと向い合せた。



『違うのぉ~♪』

七海(なみ)がコーヒーの木を育てていた理由――それは "お主へのメッセージ" じゃな』



「えー! なになに!?」

「ちょ……おしえてよー!」



『カカッ!』

『こればかりは本人から聞くんじゃな♪』


『ヒントは、"花言葉" じゃ♡』



「コーヒーの木の花言葉なんて、分かるわけないじゃん!」

「けちぃー! ぶーぶー!」



 デア・エクス・マキナは、駄々をこねている凪を、笑って受け流す。

 そして、"凪の小指" を強く――ガジリと噛んだ。



『約束…………(たが)えるでないぞ』



「あはは。誰に向かって言ってんだか」


「アタシに二言はないよ」

七海なみは消させない――"ワールド:日本" もセレスも消えない」


「お姉さんに任せとけって言ったろ?」



『カカカ!』

『"叔母(おば)さん" じゃろうて』



「こんの~! 可愛くない(めい)っ子だな!」

「悪い口はこの口か! このこのっ!」



 凪は、"デア・エクス・マキナ" のほっぺを摘み、もにゅもにゅと優しく引っ張った。



『さて!』

『帰るとするかのぉ~』



「不安はぬぐえたかな?」



『カー! まーったく、そういうところばかりさといのも考えもんじゃわい!』



「あはは!」

「そう言わないで、"ワールド消滅" を回避できたら、"七海を元に戻す方法" を一緒に考えような」



 デア・エクス・マキナは、パチンと指をはじき、帰路へのドアを出現させる。

 スタスタと歩いていくと、ドアに手をかけながら口を開く。



『――そう、じゃな』


『マ…………いや、七海を頼んだのじゃ』



 凪は、彼女に違和感を覚えつつも、笑顔で手を振った。



 ***



 ――3月24日。



「ふわぁ~……おはよう、セレス」



『凪さん!』

『早く! これを見てください!』



 セレスは慌てながら、"MAU" が表示されたウィンドウに指をさした。



────────────────────

【現在:2150年3月24日 MAU】

9,240,660人


【1,000万人未達成の場合:ワールド消滅】

※期限:2150年3月31日まで(2/14改定)

あと759,340人

────────────────────



「お、おぅ」

「えっと……あと75万人だな!」



『そうですけど! そうじゃないんです!!』



「ちょっと落ち着けって」

「何があったのか、ゆっくりでいいから言ってみな」


「ほらっ。深呼吸」


 

 凪はセレスを落ち着かせるように、肩をポンと優しく叩いた。



『は、はい……』


『えっと、"MAU" がここ数日、予測よりも乖離かいりがどんどん大きくなっていまして』

『本日で、MAUの伸びが()()()()してしまいました』


『原因も突き止めました……っ……こちら、です』



 SNSが表示されているウィンドウを展開する。

 セレスは、ギリっと奥歯を噛みしめ、怒りを必死に押し殺していた。



『あの子―― "ワールド:中国" の管理AI:ユイシェンが、"ARG型プロモーション" を開催しています』

『しかも、向こうは全ワールド最大規模……反響もかなり大きい……です』


 ※ARG型プロモーション=第25話参照


『何なんですか!』

『なんの恨みがあって、このタイミングでっ!』



「ふむ……()()()()来たか」

「だが、安しn――」



『は?』



 事の重大さとは裏腹に、凪の落ち着き払った態度――セレスの不満を起爆させるには、十分な材料がそこにあった。



『な……なんです、か?』

『分かってたん、ですか?』


『は?』

『ハ? HA? はぁ?』



「――ちょ、ちょっとセレ、ス?」



『触らないでくださいっ!!』

『そんな、見せかけの優しさなんかいらないんですよ!』


『凪さんにとっては所詮、私はただの "AI" なんですよね!?』


『アハ……アハハハハ。そうでしたそうでした、そうでした!』


『私は()()じゃありませんもんね!!』


『いつだって、妹、妹、妹、妹、妹、妹、妹!』

『妹が一番!』



挿絵(By みてみん)



『チーズケーキだって――――私が! 私が考えたんです!』

『…………"私の" なんです!!』


『凪さんは結局、"一番" がいない世界なんかどうでもいいんですよ』


『私が死のうが! ブラン、エンプ、ヌルが死のうが!』


『私は……この、ワールドの……管理AIなんです』

『そういうわけにいかないんです……みんなの命を握ってるんです』


『死んじゃうんです、死んじゃうんです、死んじゃうんです!』



 ぐしゃぐしゃになった顔を隠すように、セレスは凪に背を向けた。


 ――パチン。

 セレスはドアを出現させると、足早に部屋から出て行った。



 呆然と立ち尽くしていた凪が、ようやく事態を飲み込み、動き出す。


 セレスの後を追ってドアを開けた――その瞬間、


 ドンッ!


 突き飛ばされた衝撃で、凪は尻もちをついた。



 凪の前に立っていたのは――()()()だった。



『――セレスを泣かせましたわね?』

『出て行ってくださいまし』



「き、緊急事態なんだ」

「すぐに話し合って対策をしないと――」



『関係ございませんわ』

『このワールドよりも、あなたの事情よりも――セレスが、わたくしには優先されますの』


『セレスの気持ちを踏みにじる人類など、存在に値しませんわ。クズ』

『ですから、どうぞ……お引き取りくださいまし』



 ブランはそう言うと、ドアを静かに締めた。



「…………」

「――存在に値しない、か」


「まったくだ……本当に……何やってんだか」



 凪は不甲斐ない自分を(いまし)めるように、強く――頭が割れるほど強く、床に頭を叩きつけた。



―第28話につづく―

どうも、せーぶうわがきです。


今回の後書きはひっそりと少なめで。

ついにセレスの不満が爆発しました。

チーズケーキの件は第22話から続けて読んでいただけると、彼女の気持ちがより深くわかるかと考えております。

また今までで随所でセレスはアラートを出していたりします。

前回第26話の配信後もそうですね。

是非とも二人の行く末を見守っていただけますと幸いです。


では、第28話でお会いしましょう。

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― 新着の感想 ―
闇墜ちセレス……。 (;∀;) アラート、全く気付いていませんでした。 (^~^;)ゞ
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